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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第六章 次こそ君を
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お月見イベント・その1

「今晩、我が家で月を一緒に見ないか。」


学園の昼休み。いつもの川のほとりに二人。

お姉さまが緊張した面もちで私を誘う。


「いいですよ。」

「その、もちろん手は出さないし、泊まるのがイヤなら送って行くし、うちから見る月は本気に綺麗なんだ。」

「だから、いいですよって。」

「…本当にいいのか?」

「逆に何でダメだと思ったんですか?何なら夜外出させるのもイヤなんで、泊まっていこうかなあと。」

「その、良くこういうお誘いはすっぱり断られてる気がしてな…。」


そういうことか。普段どんどんグイグイ来るし、茶化すような雰囲気があるから一刀両断で断ってるだけで、ちゃんと真剣にお誘いいただければ断りませんけどね。

何のための恋人だと思ってるのやら。


「お姉さまはやっぱりお姉さまですね。」

「どういうことだ?」

「教えませーん。」


自分で気づけるようになってください。


「秋のこの時期の月はとても綺麗ですものね。」

「そうなんだ。リシアと共に見たいと思ってな。」


原作でも、実はこの時期にお月見イベントが存在する。

この世界では秋の半ばに二人で一緒に月を見て、愛の告白をすると必ず結ばれて、長く二人の関係が続くという言い伝えがある。

そもそも、そんな言い伝えがある中夜に二人で月を見ている時点で成功するに決まってるでしょ、とは昔の私の言。

夏の溺れる私を救出した攻略キャラの家で月を見ることになり、そこで告白され二人は恋人となるというイベントだ。

今回、エドワードの動向が不明なのでイベントは起こらないものと思っていたが、まさか既に恋人のお姉さまからお誘いいただけるとは。

実は今結構嬉しく思っている。


「…リシアは秋の月の言い伝えを知っているか?」

「いや、存じ上げませんね。どういった言い伝えですか?」


少し、意地悪をしてみる。本当は知ってるんだけど。


「…それは月を見ながら話そうか。」

「ええ。」


どういうお話をしてくれるのか興味がありますね。


「そういえば、夏にも共に星を見ましたね。あれは楽しかったなあ。」

「…本当はあまり星を見る余裕がなかったんだ。あのときは。」

「ふふ、でしょうね。」


お姉さまは私の告白へのお返事で一生懸命だったはずですから。


「お月見でしたら、お団子でも作りましょうか。お月さまみたいな、真っ白でまん丸の。」

「それは良いな。きな粉を掛けて食べたい。」

「お姉さまの場合ハチミツじゃないんですか?」

「ゴリラの次は熊か何かと勘違いしているのか?」

「熊!良いですねえ。」


その発想はなかった。でもゴリラより熊さんのが良いかもしれないな。ハチミツ好きで、力強いし。魚を手で持ってかぶりつく姿も似ている。


「何だか墓穴を掘った気がする…。」

「気のせいですよ~!」


早速部屋を熊さんグッズで飾り付けようか。


「お姉さまのおうちの厨房ってお借りできますか?一緒にお団子作りません?」

「ああ、構わない。私も玉子焼きを作るときに使ったしな。」

「私、あの玉子焼きがまた食べたいです。」

「そんな良いものでもないと思うが…。その時に作るか?」

「本当ですか!?楽しみだなあ。」


あのときは悔しい気持ちで食べた玉子焼き。

次は二人で幸せに食べれるの、とても嬉しい。


「後は…泊まっていくんだよな?」


お姉さまは私をちらりと見る。

普段よく甘い言葉を囁いてべたべたしてるくせに、変なところで臆病になる。それも愛嬌なのだけど。


「一緒に寝るくらいなら構いませんよ。」

「いいのか?」 

「面と向かってそう聞かれるとイヤになった気がしますね。」

「うっ…。」

「冗談ですよ。」


お姉さまが我慢ならず抱き寄せてくる前に、立ち上がり膝の間に座る。


「私だって、お姉さまの恋人ですから。」


午後の授業に遅れそうになるくらいには、離してもらえなかった。





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