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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第六章 次こそ君を
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お茶

お姉さまのお弁当に変化をつけたいと思い立った私は、お父様にお願いして料理の本を何冊か取り寄せてもらった。

以前料理の本を読んだとき、前世の知識だけでなく、今世独特の料理などもあって、一度深く読み込んでみたいと思っていたのだ。


「なるほど。この食材にはこんな使い道が…。勉強になるなあ。次の本は…うん?」


私が手に取ったのは、野草図鑑だった。

野蒜などを食べた時は、調理器具などの持ち合わせもなく、余裕がなかったのでそのまま食べたため酷い味だったが、調理法通りやれば美味しいはずなのだ。

何かそう言った参考になる情報はないか。私は野草図鑑を読み込んでいく。

そうしているうちにふととあるページで手が止まる。


「ドクダミ…。」


前世でもよく話題になった薬草だ。

確かデトックス効果があるとか聞いたが…。

臭いがキツくて、そのままじゃお茶にしてもあんまり飲めないんだっけ。


「なるほど。お茶にしようと思うとヨモギを混ぜるのがいいのね。ヨモギの効能は…冷え性と貧血の改善?お姉さまにぴったりかも。」


さっそく私は試してみようと図鑑のコラムのドクダミ茶のレシピをメモするのだった。


◆ ◇ ◆ ◇


「お姉さまの体質改善の為にお茶を作ってみたのですけど…」

「ほう?何のお茶だ?」

「ドクダミです。お姉さまならご存知かと。」

「あの臭いのきつい野草か…大丈夫なのか?」

「とりあえずまず淹れますね。」


容器にお茶を淹れる。透明で綺麗な茶色だ。


「んむ?独特のいやな臭いがあまりないな?」

「ヨモギを混ぜるとお互いに臭いを打ち消しあうそうです。」

「なるほど。これなら飲めそうだ。」


お姉さまにとっても臭いは苦だったのだろう。少し安心したみたいだ。

お姉さまがお茶に手をつけ、飲み始める。

お姉さまののどがお茶を嚥下する様子がとってもセクシーだ。って、お姉さまみたいな変態的発想になってるなあ。いつもか。


「少し甘いか?草の味はするが全体的に飲みやすく出来てるな?」

「そうなんですよ。甘草っていうのを少量混ぜて、甘くしてます。他にも緑茶などなどが入ってます。」

「そうしてリシアの努力で生まれたのがこのお茶か。大切に飲まないとな。」

「いや、そんな大したことは…。そうそう、ドクダミとヨモギはデトックスに良く効くらしく、毒物を体外に排出してくれるそうなんです。」

「それでこの茶か。」

「ですね。冷え性や貧血の改善にも繋がるそうですよ?」

「ほう。私にはぴったりだ。」

「ええ。もう作り方は覚えましたから、定期的にお作りしますね?」


そう言うとお姉さまは徐々に私の方へ寄ってくる。

嫌な予感。


「リシアはいつも私のことを考えてくれるな?」

「いつもではないですよ?」


お姉さまの手が私の腰に回る。


「このお茶も作るのにどれだけの時間をかけてくれた?」 

「片手間にしたことなので、さほどのことは。」


本当は結構大変だったけど。言うと調子に乗るから。


「私も気持ちに応えて、しっかり体を復調させる必要があるな。」

「ええ。お姉さまが元気になるのが一番です。」


お姉さまの頭が私の肩に乗る。重い。


「当主になるためじゃなく私が元気になるためか?」

「どちらも大事ですけど、一番はそうでしょう。」


吐息が顔にかかる。あ、お茶のにおい。


「ああもう、全てが愛おしいな。リシアは。」

「そう思うならくっついてないでしっかりお茶を飲んでくださいませ。」


お姉さまの為に作ったんだから、甘えてないでさっさと飲んでもらえます?


「それもそうだ。ただ、私の手はリシアを抱くので忙しい。飲ませてくれないか?」

「酔ってます?頭叩いたら直ります?」

「ほら、飲ませて?」


結局押し切られて私はお姉さまの口にカップを差し出す。

なんだかんだ甘やかしちゃうの、よくないな?

私の差し出したカップからお茶を飲む様子が鳥のヒナのようで可愛らしく、負けた気分。


「とっても甘くなったな。リシアのおかげかもしれない。」

「何言ってんですか…。」

「私は甘いのが好きだから、後の残りは全部飲ませて貰おうかな?」 

「嫌ですよ?」


それでも最終的には全部飲ませることとなった。

なんだかんだ、お姉さまには叶わないのだ。




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