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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第四章 「2人」の記憶
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記念SS 赤髪の快男児と銀髪の魔女

10000PV感謝ssです。

感謝の気持ちを込めて、定期更新で二話更新しようと思い立ち挿話として書き下ろしたカイトとシンシアのお話です。

実は前話から一週間以上経って書いたもののため、後ろに10話ちょっとのストックが現時点であり、注意して書きましたが少し時系列が怪しい可能性があります。


カイト視点です。

レベッカの屋敷を出て、馬車を置いてきた位置へ戻る。

リシアを捜索する追っ手はもう付近には居ないようだ。

エドワードは友人として一発窘めてやる必要がありそうだな。


最近のレベッカのリシアへの溺愛っぷりは目を見張るものがある。

だが、エドワードの婚約者として下手ながらも交流しようとしているのを、エドワードが頑なに突っぱねていたのを友人として見ていた頃からするとずっと良くなったと思う。

彼女は強いが、強すぎる故に弱さを見せれず、自分を許せず愛せない。

そんなレベッカがリシアに手を引かれ、可愛らしい格好に身を包み、少し気恥ずかしそうに立っているのを見たとき、この少女以外にレベッカの横に立つものは居ないだろうという確信があった。


恐らくではあるが、レベッカの家族はもう居ない。理由は解らないが、家族ぐるみでの付き合いがハタと途絶え、療養とだけ告知があったときそう想像できた。

リシア嬢が、妹という家族として、恋人というパートナーとして彼女を支えてくれることを祈る。


◆ ◇ ◆ ◇


そろそろ馬車を置いてきた位置に戻る。

盗賊の根城から近いとは言え、ハミルトン家の紋章の入った馬車に手を出す馬鹿は居ないと思われるが…。


「お、シンシア嬢じゃねえか?何故ここに?」

「馬車がうち捨ててあったので。そのままにしておくわけにはいかないでしょう。」


シンシアがわざわざ馬車を見守ってくれていたようだ。

その律儀さと親切心には頭が下がる思いはあるが、これはいただけない。


「こんなところで見張っていても危ないだけだろうが。盗賊の根城はすぐそこだぞ?」

「供もつれておりますし、特に盗られて困るものもございませんから。」

「そういう問題じゃねえんだがなぁ…」


こいつはこいつでかなり問題ありだ。

どうして俺の周りには問題のある人間しかいないのか。

一番は一人で王都まで走ろうとした奴だが。


「それより。馬車を打ち捨ててまでどこかへ向かっていたということは、見つかったのですね?」

「ああ。リシア嬢なら無事レベッカ嬢の元へ送り届けたよ。」

「二人ともひさびさの再会です。大変だったのでは?」

「ああ。口から砂糖を吐きそうだった…」


あの甘ったるい雰囲気だけでもうお腹いっぱいだったのに、説明やら何やらでつき合わされちまったせいで胸焼け気味だ。

思わず口から砂糖を吐くような仕草をすると目の前の少女がくすりと笑う。


「それは大変でしたね。とりあえず茶を淹れさせますので口の中を洗い流されればよろしいかと。」

「ご厚意に甘えるとするかな。胸焼けに効くのを頼む。」


シンシア嬢の横にどっかりと座り込み、彼女の供が用意してくれる茶がでるのを待つ。


「そう言えば、ローエンリンデ公爵家の服を着られているのですね?」

「そうなんだよ。俺の服はリシア嬢が着ている。」

「…そういう事態に?」

「ああ、危ないところだった。どうにか間に合わせてやれたがな。」


シンシアの表情が曇る。冷たいように見えるが、こう見えて人一倍心優しく暖かい人間だ。

きっとリシア嬢の心情を慮っているのだろう。


「リシア嬢は世間知らずで一直線なところがあるし、レベッカ嬢は不器用で引っ込み思案だ。これからも支えてやんなきゃいけねえときは来るだろうな。」

「そうですね。今回のようにカイト様がお支えになられれば安泰かと。」

「何を他人事のように言ってやがる。シンシア嬢だって大概あいつらの為に動いてたじゃねえか。」


シンシアがリシアにどうにか面会できないか、せめてレベッカの手紙でも渡せないかと様々な試みをしていたこと、今回の件も察知したと共にレベッカに手紙を送っていたことは良く知っている。

こいつだって二人のために動いてたんだ。


「これからもあいつらは俺たち二人で支えてやんなきゃならねえ。そうだろ?」

「…そうですね。それも吝かではありません。」

「良い返事だ。」


シンシアは傍観者じゃない。仲間だ。

それを解ってもらえたのは良いことだ。


「さて、茶飲んだら帰るか!危ねえから送って帰ってやるよ。」

「お気遣いなく。」

「遠慮すんなよ。それじゃじゃんけんで決めるか?」

「カイト様、グーしか出さないでしょう。…それならお願いしましょうか。」

「任せろ。リシア嬢みたいに二人で馬で駆けるか?」

「それだけは断固お断りします。」


丁寧に見えて遠慮のない発言に心地よさを感じる。

王都まで楽しい帰途になりそうだ。

シンシアの手配したお茶をいただきながらそう思った。




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