今、会いに来ました
誰も居ない教室。
いつもの席にお姉さまが座る。
お姉さまはどこか虚ろで、ブレて2人重なっているように見える。
私にリシアと私がいるように、お姉さまにもレベッカとお姉さま、2人がいるのかもしれないな。
「お姉さま!」
私は隣に座って、元気良く呼びかける。
その瞬間、お姉さまは一つとなって、こちらを振り向く。
ごめんなさい。もうすぐ会いに行きますからね。
◆ ◇ ◆ ◇
「そろそろ起きろリシア嬢。」
私は馬車の中で目覚める。
妙にリアルな夢を見た。
起き上がって、馬車をでる。
「お待たせしました。」
「よし、ならば向かうか。」
カイトはあの後、私を連れて王都に向かってくれると提案してくれた。
さすがに夜移動するわけにはいかないので、この場で一泊することになると、カイトの乗ってきた馬車を貸してくれるという。
さすがに持ち主を追い出すのは忍びないというと
「ならじゃんけんだな!じゃんけんぽん!」
わかりきった配慮に甘えて、私はパーを出した。
◆ ◇ ◆ ◇
「三時間もありゃ着く!しっかり掴まっていろ!」
「はい!」
カイトは一刻も早くお姉さまの元へ着きたい、という私の要望に答え、馬車をここに置いて馬で王都に向かってくれるという。
本当にカイトは良くしてくれる。私は幸せ者だな。
カイトの前に乗り、胸のあたりにしがみつく。
風景がみるみるうちに変わっていく。
お姉さまのものとも違う、厚い胸板を感じる。
“カイトに鞍替えしちゃう?”
“うるさい!私はお姉さま一筋です!”
もし、何かが違えばそういう道もあったのかもしれないけど。
◆ ◇ ◆ ◇
王都にたどり着く。カイトは、門番にハミルトン家の紋章の入ったハンカチを投げつけ、そのまま門に突入していく。
人通りの多いメインストリートをスピードを落とさずするすると抜けていく。この人も大抵化け物だな。ゴリラ二号?
「どうやら、レベッカの家の近くにも捜索は回ってるみたいだが、造作ねえよ!」
そう言うとカイトは馬に不規則なステップを踏ませ、何かを回避していく。
速すぎてもう何かよく見えないのだ。
「ところでお姉さまのおうちってどこですか!?」
「ああん、リシア嬢、行ったことねえのか?」
「実はそうなんです!」
「そうか!今から行けば問題ないな!初めての恋人の家だ!」
「ですね!」
カイトはとある豪邸の門を飛び越えると、そこで馬を止めた。
「ついたぞ。お待ちかねのレベッカの家だ。」
私は馬からおりて駆け出した。
毎回なんですが、カイトを動かすのがすごい楽しくて、私のお気に入りのキャラだったりします。
そのうち、カイトのスピンオフとか書きたいですね。