葉っぱ一枚
「もう大丈夫だ、リシア嬢。」
「ありがとうございます。危ないところを助けてもらって…」
「何、淑女を守るのも男の務めだ。大したことじゃねえよ。」
「あの、いくつか聞きたいことが。」
「なんだ?何でも聞いてくれよ。」
聞きたいことはたくさんあるが、まずはこれだ。
「どうして上半身裸なんですか?」
イケメンの上半身裸は目に悪い。
「そりゃお前、俺の上着はリシア嬢が着てるからな。」
「あっ、その、すいません。」
「なに、男は葉っぱ一枚ありゃいいんだよ。」
それは一部の方々だけだと思います。
「それから、どうしてここに?」
「エドワードから消えたリシア嬢を探せって捜索命令が出てるんだよ。俺はその手伝いだ。」
「やっぱり、そうですよね…。」
カイトがこの場に表れたのは偶然でない気はしていた。
そうでもなければこんなところでは出会わないからだ。
となると、私を探してだろうなとは思っていた。
「あそこの街で、ボロボロになった女性が街の外を歩いているという目撃証言があったんだよ。リシア嬢かもしれないし、そうでなくても助けに行かなきゃこうなるだろうな、とは思ってな。」
「あの!…助けてもらってこんなお願いをするのはどうかと思うんですが…見逃してもらえませんか?」
「リシア嬢はどうしてここまでして王家の別荘から逃げ出したんだ?」
「それは、お姉さまに会いたかったから。きっと、あそこに居れば会わせてもらえないと思ったから…。」
「なるほど。それはエドワードが悪い。リシア嬢の意志に反して閉じ込めてたんだからな。」
「えっと…?」
いまいち話が読めない。カイトはエドワードの味方じゃないのか?
「元々とっつかまえて何とかしようと言うつもりはねえよ。ただ、リシア嬢にも理由はあるはずだから、それが正当な理由なら手助けしてやりかった。」
「えっと…その…ありがとうございます。」
ここに来て触れる人の優しさに涙が出てくる。
なんて暖かいのだろうか。
「リシア嬢はもう少し周りを頼った方が良いな。レベッカ一筋なのは良いが、何でも一人で解決しすぎる。シンシアもすごく心配していたんだぜ?」
「はい。ごめんなさい…。」
ごめんなさい。本当にごめんなさい。
カイトやシンシアに申し訳なさが募る。
「解ればいいんだよ。ところで、怪我は大丈夫か?見たところ、大きな怪我はなさそうだが…?」
「えっ。」
おかしい。先ほど間違いなく頭から血がでていたし、肋骨も何本か折れたはずだ。
私は血が出ていたところをぺたぺたさわる。確かに傷はなさそうに感じる。
「確か、頭から血と、肋骨が折れていたはずなんですけど…」
「血が出た痕はあるが、傷はねえな。少し横腹を見ても構わないか?」
「ええ…。」
私は横腹を捲り上げてカイトに見せる。
「少し触るぞ。痛いか?」
「痛いのは痛いですね。」
「聞かなければ痛いと言わない時点で折れてるかは怪しいな。一旦体を寝かせて、そこから起きあがれるか?」
私は寝そべり、体を起こす。
痛みはあるが問題なく起きることができた。
「折れてはないだろうな。強い打ち身といったところだ。」
「折れる音が確かに聞こえた気がするんですが…?」
「頭の傷の件も考えると、治った、という可能性があるかもな。」
治った?こんな短時間で?
「考えてみろ、リシア嬢の肩書きはなんだ?」
「神託の聖女、ですね…。」
自分で聖女と名乗るのも小恥ずかしい。
「歴代の神託の聖女はすべて癒しの力を持つ。自分の体にも作用していると考えてもおかしくはないんじゃないか。」
「なるほど…。」
そう言えば腕の件もそうだった。
「実は別荘から逃げるとき、三階から飛び降りて腕を打ち付けて折ったと思っていたのですが…。」
「三階から飛び降りるとかエグいことしやがるなリシア嬢は。腕も見せてみろ。」
「ここなんですけど…。」
袖口をまくってみると、腫れていた箇所がもうない。すっかり元通りになっている。
「折れたとは思えない見た目だな。やはり仮説であってるんじゃねえか?」
「そうかもしれませんね。」
ここに来て、私の体についての新たな事実が発覚したのだった。
YATTA!YATTA!
書きながらカイトが葉っぱ一枚で踊っている姿が脳内をぐるぐるしてました。
※9/18追記
作品の累計pvが10000 ユニークアクセスが2000を越えました!
また、その後から日間pvが500前後で推移していたのが、800前後になり始め驚いております。
感想もいただくことが出来て、全てが作品へのモチベーションとなっており、読者の皆々様には感謝しております。
最近はリシアとレベッカに対し、我が子のような思いで書いている側面もあり、日々この子たちと作品を産み出せたということが本当にうれしいです。
今後も、リシアとレベッカの二人を共に愛し見守っていただければと思います。
重ね重ねではありますが、拙作をお読みいただきありがとうございます!