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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第四章 「2人」の記憶
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走れリシア

お腹が空いた。

さすがに数日走ることを考えると食事は摂らなければいけない。

そう言えば、山に登った時、お姉さまは食べられるものについても話してくれていたな。

その記憶を辿り、野草や木の実を集めていく。


野蒜のびるは食べられる。ネギやニラによく似た見た目で、匂いも同じだ。

それからスグリの実。お姉さまはあまり美味しいものではないと言って居たが、見た目が綺麗で良く覚えている。


この二つを重点的に探し、集める。

調理器具などはない。川で洗って、食べるだけだ。


野蒜を口に入れる。匂いがすごい。ニラとラッキョウを足したような、そんな匂いが口に充満する。

味もなにもわかったものではないが、食べ物には変えられないので食べていく。

スグリの実は赤いもの、緑のものをたくさん集めてみた。美味しそうに見えるんだけどな。

酸っぱい。すさまじく酸っぱい。赤いものはまだましだが、緑のものはたまらないくらい酸っぱい。

川で口をゆすぎながら、私は食事を摂っていった。


◆ ◇ ◆ ◇


そして夜がやってくる。

さすがに夜に山中をうろうろするのは危険だ。

私は野宿をする算段を始める。

ここらへんは人里にも近く、そこまで危険な野生動物はいない。

むしろ人間の方が危険な可能性は高い。

山でも獣道をはずれたところの木を背に、草を敷いて座って寝よう。


そうして木にもたれ眠った。それでも王家の別荘よりは良く眠れたような気がする。


◆ ◇ ◆ ◇


朝がやってくる。

もうボロボロになってしまったパジャマの裾を破って走りやすくした。


私は走り始める。

これを後数回繰り返せば、お姉さまに会えるのだ。

そう思うと体に活力がみなぎってくる。

頑張らないとな。


◆ ◇ ◆ ◇


夕方、1日走り詰めた私は、疲労がピークに達し方向を見失った。

街道に出たのは幸いだが、追っ手のことを考えて、また山中に入って行かなければならない。


そう考えて戻ろうとした最中、あるものが目に入った。


「蛙石…。」 


それは、行き道、馬車の外を眺めていた時に見つけた石だ。

ただの平べったい石なのだが、ふとカエルを想起した私はカエルみたいです、とお姉さまに声を掛けた。

そうしたら、お姉さまも楽しそうにカエルみたいだな、と返してくれた。

だからこれは、蛙石なんだ。

なんの変哲もない石だって、お姉さまが居れば特別なものになる。私にとってお姉さまとはそういう人だ。


「会いたいな…。」


お姉さまとの記憶にまた一つ出会った私は、会いたい気持ちを強く深めたのだった。



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