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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第四章 「2人」の記憶
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2人、混ざり合って

エメラルドグリーンの海。白い砂浜。青い空。

今日も私は溺れていた。

例の女性は土下座をして男性を砂浜へと送り出した後、意識を失った。

かなり重篤な様子に見える。


「お姉さま!」


私は駆け寄ってお姉さまの体を抱き寄せる。

すると、少し楽そうな顔になり、落ち着きを取り戻す。

良かった、私の為にありがとう。私の愛するお姉さま。


◆ ◇ ◆ ◇


私は王家の別荘で目を覚ます。

相変わらず寝付きは良くない。もっと安心して眠れる場所がある気がする。


誰かが部屋に入ってくる音がする。


「エドワード様?」


エドワードかと思い声をかけるが、どうやら違うようだ。


「確かあなたは、クラスメイトの…」

「エレノア・アボットです。レベッカ様よりお手紙をお預かりしています。」

「レベッカ様?それは…?」

「海の件、本当に申し訳ありませんでした。エドワード様より噂をお聞きして、良かれと思いレベッカ様にお伝えしたのですが…。ただただ申し訳ありません。」

「何のことですか?」

「あまり時間がありませんので、今はお手紙を。」


そう急かされ、私は手紙を開く。

まだ使っていない線香花火が二本転がりでる。

何故こんなものが?そう思いながらも便せんを手に取る。


「愛するリシアへ。

元気だろうか。どこか、怪我や病気はしていないか?

あの後からずっと会えずにいて、不安は募るばかりだ。

もし、元気なら是非とも返事を寄越して欲しい。待っている。

本当なら、リシアに付き添って居たかったのだが、どうしても都合がつかず先に王都に帰ることになった。すまない。

王都に帰るときは連絡するように。最速で迎えを送るからな。



線香花火の罰ゲーム、先払いしておく。

リシアが居ない日常はとても寂しい。少しでも近く、そばにいたい。今も離れがたい気持ちだ。

会いたいよ。リシア。


お姉さまより」


その瞬間、全てを思い出す。

この世界に来ることになった始まりから全てをだ。


◆ ◇ ◆ ◇


私は、乙女ゲームの主人公だった。

毎回毎回、攻略するキャラを変え、様々な男性と恋愛をする。

そんな日常に飽き飽きもしていた。


ある日、とあるキャラが大好きなプレイヤーがいることに気づいた。

それは悪役令嬢で、けして攻略キャラではない。

でもそのキャラに送る愛は本物で、いつもまっすぐだった。


素敵だな、と思った。

私はあんなまっすぐに、一人を愛することは出来ないから。

その思いは、とてもキラキラしていて、いくらでも眺めていられた。


どうしてレベッカは攻略出来ないのか。

その悲痛な呟きを聞いたとき、私は心を決めた。

この人を私に招待しよう。私はすぐそばで見ているから、あなたはそのキラキラした思いを思う存分発揮して欲しい。


そう言って私は私を私の中に連れてきたのだ。


◆ ◇ ◆ ◇


お姉さまの勧めてくれた場所は、原作でリシアが悪役令嬢に騙されて行く場所だ。

そこの海は潮の流れがおかしく、溺れやすい。

そこで攻略キャラに助けられることによって、そのキャラのルートが確定する。

お姉さまに悪意が無いことは、理解していたし、最初はお姉さまもその海の流れで溺れてしまうことを危惧していた。


が、あれは物語の強制力的なものなんだろうなあ。お姉さまではなく、私が半ば無理矢理海に引きずり込まれてしまうことになる。

その後エドワードに助けられたことで、物語的にはエドワードルートが確定してしまった。

それによって「レベッカが好きな外からやってきた私」が一時的に休眠させられ「エドワードが好きな元人格のリシア」が主人格に戻ってしまうことになったのだ。


何故、その物語の強制力に逆らい、私が戻ってこれたのか。

それは、いくつもの話を共有し、見ていく中で、いつしか2人、混ざり合って行ったのだと思う。

私は、いつしかリシアに。リシアはいつしか私になっていったのだと、なんとなく解る。


“あなたは私を忘れていたけどね。”

“ごめんなさい。これからは一緒だから。”




リシア視点です。

ようやっとこの言葉を書けた…。


序盤リシアと今のリシアで性格が少し変わっているのは、私のの方向性のなさもかなりあるのですが、2人が混ざり合って行く過程を描いていました。


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