私の癒し
レベッカ視点です。
結局、リシアと会うことは出来ず避暑地を去る。
リシアはどこへ行ってしまったのか。
エドワードが言うには、お姉さまとの思い出が多い避暑地は居てて辛い、とのリシアの要望で近くの王家の別荘に移したのだとか。
どこまで真実かはわからないが。
「シンシア、すまない…。」
「レベッカ様は病気のご両親に換わって、当主代理の仕事も御座います。仕方ありませんよ。」
シンシアは出来る限り避暑地に残って様子を探ると提案してくれた。
本当にありがたいことで、感謝の念に堪えない。
「何かわかりましたら、王都の邸宅にご連絡差し上げますので。」
「ああ。よろしく頼む。」
◆ ◇ ◆ ◇
馬車での避暑地からの帰り道。行きはリシアと共に来た道だ。
王都までは約一日半。道中の街で一泊することになる。
こんなに長い道のりだったか。
行き道はリシアとたくさん話した。
「ああ、あれは蛙石。」
リシアが、まるでカエルさんみたいです!と石を指差して言うものだから、蛙石と勝手に名付けたのだ。
蛙石をじっと見つめるが、ただの平べったい石だ。
「ただの石だな、こう見ると。」
でも、あの時は間違いなく蛙石はカエルだったのだ。
それはきっと、2人で見たからで。
「ああ、リシアに会いたいな。」
何度目かになるその言葉をつぶやいたのだった。
◆ ◇ ◆ ◇
道中の街についた。
ここで一泊することになる。
妙に体が重い。リシアと会う以前のちょっとしたことで貧血を起こしたり休みがちになる感じに戻っている気がする。
「癒しの力は発揮出来ないと言っていたが、私は少しずつ彼女に癒され生きていたのかもしれないな。」
きっとこれは、会えないことで弱った精神が引き起こす不調なのだろう。
でもリシアという存在が確かに私の体を快方に導いてくれていたような気がする。
宿は二部屋とっているが、一部屋に変更して良いか、という使用人からの質問がくる。
使用人に罪はない。ないが妙に腹立たしい。
今すぐにでも、その角を曲がると、「お姉さま!」と太陽の様な笑顔で私に笑いかけてくれるような気がするのだ。
「部屋は二部屋のままにしておいてくれ。」
来るはずのない隣の部屋主を待ちわびて、眠れぬ夜を過ごした。