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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第三章 あなたのためなら
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レベッカ視点です。

「お姉さまの分からず屋っ!どうして信じてくれないんですか!」

「リシアこそ、何故わからない!事情があれば聞くと言ってるだろう!」


その日、私たちは初めての喧嘩をした。


◆ ◇ ◆ ◇


この避暑地にきて、一週間とちょっとが過ぎた。

リシアと過ごす日々は毎日が幸せで、光のような早さで過ぎていく。

当初の予定よりも多く滞在し、エドワードの婚約者として、エドワードの提案に乗るという面目も立った。

名残惜しい気持ちもあるが、様々な事情もあり、いつまでもここに居るわけにも行かない。

後数日でここを去る段取りとなったのだ。


思えば毎日、リシアは私の要望に合わせてくれていたように思う。

行く前は海で泳ぐことを楽しみにして、水着も共に買ったリシアだった。

だが、泳ぐときの体の負担を考えると一抹の不安があり、あまり泳ぐ気のなかった私にずっと合わせて過ごしていた。


日々私に合わせるだけで、やりたいことも出来ない生活は楽しいだろうか。

本当は私に合わせず、好きなことをした方が楽しいんじゃないか。

常に不安はよぎる。

もし、リシアが「私はこれがしたいです」、と言えばきっと快く付き合ったと思う。

でも、リシアが言うことは、だいたいいつもそばに居たいということだけで、それ以外は何も言わない。

私もリシアが喜ぶようなこと、やりたいことをしてあげたかった。


ただ、海で泳ぐとなったときに、不安なのは私の体調だけではない。

リシアの水着姿を他人に見せたくなかった。

リシアの水着姿は大変可愛らしく、肌の露出もある。

最悪、私の肌はまだ良い。でもリシアの肌を誰かに晒したくない。そう言う気持ちはずっと心の底にあった。


リシアに海で泳いでほしいという気持ちと、誰にも水着姿を見せたくないという気持ちで葛藤していたとき、昔シンシアと私と共に関わりのあった友人、エレノア・アボットから良い話を聞いたのだ。

避暑地から少し離れたところに、人気の少ない落ち着いた砂浜があるという。

学園の生徒は避暑地の目の前にある砂浜を使うため、滅多に寄りつかない穴場だそうだ。

私はリシアと2人、静かに海に入れればと期待した。


「お姉さま、その砂浜は危険なんです。」

「何故だ、私の体を気遣ってなら大丈夫だ。」

「そうではありません。でも本当に危険なんですって。」


リシアは実際に見るまでもなくその砂浜の案を否定した。

危ないのだと。

そこに行ったことがあるわけでもなく、知られているわけでもない場所を一顧の余地なく否定するリシアに違和感があった。


ここ最近、リシアは私の体のことを知ってから無用な心配をくれることが多くなった。

私自身、それをリシアの負担としたくなかったし、今までの遠慮のない2人の関係性を気に入っていた。

だから、あまり気にしてほしくなかったし、気にされるのが好きではなかった。

今回もそうなのだと思った。

私の体を心配して、自分のやりたいことを控えるのは、とても寂しかった。


リシアは、私の体が理由ではないと言う。

もし、そうなら、ちゃんと他の理由を説明して欲しかった。

でも、そうなると途端に口を紡ぐリシアを見て、私を悔しい気持ちが襲った。

私に説明できない隠し事か、またはやはり私の体の問題か。

そう思うと、どうしても冷静になれなかった。


「もういい、今日は別れて頭を冷やそう。また明日会おう。」

「…わかりました。」


また私はズルい言い方をした。

本当は、リシアに止めて欲しかったのだ。

そばに居たいと言って欲しかった。

でも、今日はリシアは素直に飲み込んで、去ってしまった。

ただ私の心には寂寥感だけが残った。




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