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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第三章 あなたのためなら
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星空の下

一拍。

その後お姉さまは発言の意図を飲み込んだようで、顔がみるみる赤くなっていく。

私の顔を見れないみたいで、目をそらしてしまう。

ああ、可愛いなあ。どうしてこう可愛いのだろう。

このまま助け船を出さずに見つめるのも素敵だけど、助けてあげましょう。


「さて、片付けを終えたら星を見に行きましょうか。」



◆ ◇ ◆ ◇


一言も発さず、いつもより大きい距離感を保ちながら私たちは屋上へ向かう。

屋上のドアを開けるとそこには満天の星空が--


「わぁ、すごいです!」


現実の日本の空が如何に星が少ないかがよくわかる。

一等星だけでなく、様々な星が瞬いている。

星空は私が居た地球と同じでも、見ているものは全く違う。


「お姉さまお姉さま!どれが北極星ですか!?」

「ああ、あれがそうだな。その横に対称的にあるのが北斗七星とカシオペアだ。」

「あれと、あれですか!綺麗ですねえ。」


北極星を囲み守るように北斗七星とカシオペア座が鎮座している。

どちらもはっきりと形がわかり美しい。


「夏の大三角形はどれですか?」

「あそこの三つだな。上からデネブ、ベガ、アルタイル。」

「ということは、あれが織姫様であれが彦星様ですか。」

「その名前は一体なんだ?」

「…私の居た地域では、あの天の川に隔たれて年に一度しか会えなくなった恋人たちと星を見立てて、織姫と彦星と呼ぶ風習がありました。」

「そうなのか…。年に一度か、それは悲しいな…。」

「私は嫌ですね。耐えられないかも。」


二人の間にまた沈黙が訪れる。

私は気にしていない風を装って空を眺める。

お姉さまの肺が、何度も言葉を吐こうとしてやめて、息を吸い込むのがわかる。

それを心地よく聞きながら、時を待つ。


「リシア。」

「はい。」

「私はこれでも女だ。」

「はい。」


あなたは誰より素敵な女性と言うことは、私が一番知っています。


「私はエドワードの婚約者だ。」

「はい。」


そうたるべきために日々努力していることは、私が一番知っています。


「私がダメなら、次はきっとリシアがそうなる。」

「はい。」


ゲームで何度も見てきたから、私が一番知っています。


「この体も、治るのか、治らないのか。いつどうなるかもわからない。」

「はい。」


知ってからはずっと心配で仕方ないから、私が一番知っています。


「私とリシアが問題なく結ばれるような状況は、万が一にもないかもしれない。」

「はい。」


それでも気持ちを伝えたいと思ったから、私が一番知っています。


「私は、女性らしくないし、悪いところもたくさんある。臆病だし、ズルい。今もだ。」

「はい。」


とても近くで見てきたから、私が一番知っています。


「私はきっと今日みたいにたくさんたくさんヤキモチを妬くぞ?趣味も男っぽいし、いつもリシアになにかしてもらってばかりだ。」

「はい。」


嫉妬もあなたに何かするのも心地よいことは、私が一番知っています。


「家族もいなくて、リシアが居なくなったら耐えられないかもしれない。手放せと言われても無理だろう。」

「はい。」


私があなたの家族でもありたいことは、私が一番知っています。


「それでも、それでも、だ。私のことを好きと、言ってくれるのか?」

「はい。」


私があなたを好きなことは、私が一番知っています。


「本当に、私で良いのか?」

「お姉さまのことは、私が一番よく知っています。」

「そうか。そうだな…。」

「ええ。」


そう言って私がお姉さまの横に手を置くと、お姉さまはその上から手を被せる。


「実は、ずっと前から私もそう思っていた。好きだ、リシア。」

「やっと待ちわびた言葉が聞けました。長いですよ、お姉さま。」

「何だか、信じがたい気持ちでな。リシアはずっと親愛の気持ちで慕ってくれていると思っていたから。」

「私は少し前から解ってましたよ?」

「自分では律して出していなかったつもりなんだが…。」

「お風呂とか、わかりやすかったなあって。」

「あれは…卑怯だ。」


顔を赤くしてそっぽ向くお姉さま。私の好きな人はどうしてこう可愛いのだろうか。


「先ほども言ったとおり、リシアと私が結ばれることは相当難しいと思うのだが…」

「エドワードが情けなかったらぶちのめして、王様も王妃様も全員ぶちのめして、お姉さまは私の物だ!って奪って帰ります!」


そう言って虚空でシャドーボクシングをしてみせるとお姉さまが不器用な笑顔で笑う。


「はっはっは、それはいいな!最高だ!」

「でしょう!?お姉さまから武術も教わらないといけませんね!」

「ああ、リシアなら私より強くなるかもな?」

「あっ、馬鹿にしてませんか!?」

「いいや、そんなことはないぞ!」


いや、絶対馬鹿にしてる、私にはわかるそ。


「…先はどうなるかわかりません。なら一緒に理想の未来を目指して頑張りませんか。」

「ああ。」

「もし上手く行かなくても、王妃のお付きとか、女官とか。そんな形でそばに居れるよう私も努めます。」

「ああ。」

「秋からの学園も、いっぱい遊びましょう。」

「ああ。」

「冬の休暇は、領地に連れて行ってください。」

「ああ。」

「ご両親のお墓にも、挨拶させてください。」

「ああ。」

「今日も共に寝ましょうね?」

「それは…というかリシア、お前自覚していてやってたな!?」

「はて、何のことでしょう?」


鈍い人だ。そういうところも好きなんだけど。


「ずっと共に居ましょうね?」

「ああ。そばに居てくれ。」


満天の星空の下、2つの影は寄り添いあい1つとなった。






2人の気持ちがいつ恋愛へと切り替わったのか。

実は私も明確なタイミングを決めていません。

読者の皆様のそれぞれ思うタイミングがそうなのだろうと、私は思います。

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