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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部五章 愛してる
320/321

一人で新年会へ その1

麗香視点です。

「それでは行ってきますね。」

「ああ。」

「晩ご飯は冷蔵庫に入ってますから、レンジで温めてもらって…それから…」

「リシア、首元にキスマークつけていい?」


私はあれこれ指示するリシアを玄関ドアに押しつけてそう問う。

やはりあれだけでは不安だ。


「いや、ダメですけど…。」

「どうして!?」

「浮気防止のためならたくさんお腹にマーク書いたでしょうにお姉さま…。」

「あれじゃ足りない。やはり見えるところに…。」

「見えるから問題なんですよ。」

「そこを何とか…。」


私は目を潤ませてリシアを見る。

この目がリシアは苦手だ。

使いすぎると慣れてしまうので、使いどころを選ぶが、こういう何か通したい物があるときにはテキメンである。


「はぁ…。あまり目立たないところにして下さいよ。」

「ああ、任せろ。」


私はリシアの顎下、頸動脈付近に唇を落とし吸う。


「いやお姉さま!そこ絶対目立つじゃないですか!やめてくださいってば!!」


リシアが私の頭を引き離そうと力を入れるが、私はテコでも離れまいと粘る。

うん、そろそろ綺麗に着いただろう。

私は唇を離し、そこについたピンクの痕に満足する。


「お姉さま…?やめて下さいって聞こえましたよね!?」

「いやよいやよも好きの…へぶっ」


リシアの人差し指が私の頬に突き刺さる。

一見可愛らしく聞こえるかもしれないが、向こうは全力なのでふつうに痛い。

でも避けると不満が解消できないので、甘んじて受け止める。


「はぁ、綺麗についちゃってる…どうするんですか、これ。」


リシアはスマホのインカメで自分の首元を見ながらそうぼやく。

そりゃもう。


「そのまま行けばいいだろう?」

「叩きますよ?」

「叩かれてもそのまま行ってほしいが?」

「ヤキモチ妬きもここまでくれば、ですね…。」


リシアはため息をついてかぶりを振る。

だって見えないところだけじゃ警告にならないだろう。


「もー…何か聞かれたら嫉妬深い恋人がしたってはっきり言いますからね…。」

「むしろ望むところだ。」

「自信満々にそういわれてもなぁ…。反省してほしいんですけど…。」


私は私の行動に一片の悔いも反省もない。

あるのは愛だけだ。

とはいえはっきりそう言うとまた叩かれること受け合いなのでとりあえず黙っておく。


「じゃあ、行ってきますから。良い子にしててくださいね?」

「もちろん。」

「何故か信用ならないんですけど…行ってきます。」

「いってらっしゃい。」


私は手を振りリシアを見送った。


◆ ◇ ◆ ◇


冷蔵庫を開ける。その中ど真ん中には大きな皿に盛られたオムライスがずどん。

お皿の大きさはリシアの愛の大きさ。

お皿の深さはリシアの愛の深さ。

リシアがどんな気持ちでこの皿にオムライスを盛ったのか想像して、つい笑顔になる。

私はそれをレンジに入れ温めて食べる。

うん、美味しい。

美味しいけど、それを伝える人が居ない。

私を食べる様を笑顔で見守る人が居ない。

…何というか、寂しい。


私は食事を終えて洗い物を済ませると、気持ちを振り払うようにトレーニングを始める。

リシアが居ないときの私の定番だ。

今日は何をしようか…うーん。

…そうだ、今日は普段あまりしないランメニューにしよう。

私はウェアを着て外を走る準備をする。

走ると温かくなるとはいえあまり薄着だとリシアに寒がりのくせにと怒られる。少し厚着をする。

もっとも、そのリシアは今は居ないのだが。


ランニングシューズとウェアを着て外にでる。

さすがに一月の寒さだ、白い息が出る。

どこまで走ろうか。

…リシアの大学近くまで走ろう。良い距離だ。

良い距離なだけだ、それ以上でも以下でもない。

別に迎えに行くとか、そう言うわけでもなんでもない。

ただたまたまリシアの新年会の会場近くは通るかも知れないが、たまたまだ。

そうだろう?

私はそう心に言い聞かせながら走り始めた。



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