新春初売り その1
「この後、ショッピングモールに初売りでも見に行かない?」
「私は良いですよ?お姉さまたちは…」
「もがもがもが…良いんじゃないか?私も見たいものあるし。」
「結局ほとんど麗香に鯛食われちまった…。」
お姉さまが口から鯛の尻尾を生やしながらそう答える。
食べてから話せ。
「決まりねえ、楽しみね?□□ちゃん。」
「なんか、紫杏さんの目、怖くないですか…?」
獲物を見定めるような目に思わずたじろいでしまう。
私の肩にぽんと二人の手が置かれる。
後ろを見ると、同情するような目で龍斗さんとお姉さまが私を見ていた。
◆ ◇ ◆ ◇
「やぁねぇ、麗ちゃん。□□ちゃんは可愛いんだからやっぱりそこを活かしてこんな風に…あ、□□ちゃんこれ着てくれる?」
「はい。」
私は紫杏さんから渡されたゆるふわコーデ風のオーバーサイズのニットと、ジーンズを手に試着室に入り、着替える。
私にはちょっと可愛すぎないかな?
「やーん、可愛い!どう麗ちゃん!?」
「可愛い。可愛いが、□□の可愛さを十分に出し切れていない。私の解釈はこうだ、着てくれるか?」
「…はい。」
私はお姉さまから渡されたブルーのパンツに白のシャツを着て、ベージュのコートを羽織ると頭にベレー帽を被る。
なんだかアーティストさんみたいだ。
「うむ。可愛い、可愛いぞリシア。私が買うからこのまま持ち帰らないか?」
「ちょっと待ちなさい、麗ちゃん。確かに可愛い、可愛いけど、そういう解釈なら…」
私は助けてくださいと少し遠くでいすに座って所在なげにしている龍斗さんに視線を送る。
目線が合うと、軽く苦笑いした後口パクで何か答える。
あ・き・ら・め・ろ?
…はい。
「…だからこそこうなのよ!?わかる?麗ちゃん。あ、□□ちゃんこれ着てくれる?」
「それが終わったらこれもだ。」
「…もう、わかりました!好きなだけ持ってきてください!」
◆ ◇ ◆ ◇
「ひどい目に遭いました…。」
「はは、俺はこうなるってハナから見えてたけどな。」
「解ってたなら言ってくださいよ!」
「言っても無駄だからなあ…。」
私はたくさん着たご褒美に、と紫杏さんから買って貰ったアイスクリームを食べる。
二人はまだ私の服談義で盛り上がりながらこちらのテーブルに向かってくる。
このままだと余勢を駆って更に違うお店で服を着せられそうだ。
私はお姉さまが席に着くと同時に話を振る。
「お、お姉さまが見たいものってなんなんですか!?」
「ん、んー。まぁでもショッピングモールで買えるものでもないんだよな。」
「良いじゃないですか!?どこ行きます!?」
これ以上ショッピングモールにいるのは危険だ。
可愛い服を見る度に引き込まれかねない。
むしろ好都合。
「でもなぁ、とりあえずもう少し…」
「龍斗さん、紫杏さん、良いですよね!?」
「後このお店に…「良いと思うが。」
紫杏さんが何か言いきる前に龍斗さんが軽く被せるように了承する。
良い働きです!
「じゃ、そうしましょう!ね、お姉さま?」
「あ、ああ…。」
やっと解放されるー!
私は、心の中でガッツポーズをキメたのだった。
 




