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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部五章 愛してる
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お節作り その1

「はい、お姉さま。あーん。」

「んっ、甘くて美味しい。好きな味だ。」


私は買ってきた伊達巻きをカットして、切れ端をお姉さまの口に入れると幸せそうに咀嚼する。

美味しいよね、伊達巻き。

私も好きだ。


「伊達巻きはどういう願いが籠もっているでしょう!」

「うーむ。くるくる巻いている…伸ばすと一本になるし、細く長く生きれるように?」

「ぶぶー、でも目の付け所は悪くないですよ。形から昔の書物である巻物に見立てて、学問が出来るように、ですね。」

「そんなもの分かるはずもない…。」


本日は昨日買い出したものでお節料理を作っている。

お姉さまはお節料理を食べるのは初めてだそう。

お節に色々な意味が籠められている、くらいは知っていたのだが詳細までは知らなかったのでのんびりお節を作りつつクイズ大会をしている。


「これ、もしかして知らないんじゃないですか?」

「何だこれ、ゲームに出てくる敵か?」 


私が丸い球体に長いとんがり角が生えた物体をお姉さまに見せると、お姉さまも目を丸くする。

ゲームに出てくる敵とはよく言ったものだ。そういう風貌をしている。


「これはくわいって言うんですよ。うちの地方ではお節に入るんですが、こっちじゃ全然売ってないですね。たまたま見かけたので買っちゃいました。」 

「くわい…桑の芽ってことか?」

「いや、全然違うらしいですよ。普通の芋系の食べ物です。」

「紛らわしい名をしおって…」


丸い部分はサトイモとジャガイモの中間に近い味わいだ。

逆にとんがり角の部分は芽でサクサクした食感。

茹でるとふかし芋の様な味わいのまま、二つの食感を楽しめてなかなか良い。

塩をかけると絶品だ。


「では、これは何という願いでしょう?」

「これはわかるぞ!」

「ほほう?」

「芽が出るように、だな!」

「正解~ぱちぱち~」


手を軽く叩いてから煮たった湯にくわいを投げ込んでゆく。

ついでに切った蓮根も手に取る。


「蓮根は?」

「蓮根?………泥の中でもたくましく生きれるように?」

「不正解。」


私は蓮根の穴からお姉さまをのぞき込む。


「先を見通せるように、ですよ?」

「くわいと同じで見た目からの由来だったか…。」


お姉さまは心底悔しそうに歯噛みする。

そんな真剣なクイズ大会ではないんですがね。

面白いのでそのままにしておいて、これも湯にぶち込む。


「次、ごぼう。」


軽くピーラーで外の部分を剥いたものをとる。


「ごぼう…ごぼう…木の枝の様に力強く…?」

「そもそもごぼうは木の枝じゃないですからね?」


昔、日本で捕虜になった外国人がごぼうを見て木の枝と勘違いしたそうだが。

そう言った風体なのは間違いない。


「これはどっしり根付くように、らしいですよ。」

「今度は性質からか…統一してくれ。」


悔しそうなお姉さまを横目にごぼうも湯に投げ込む。

次に買ってきた紅白かまぼこをお姉さまに見せる。


「言うまでもないですよね?」

「紅白柄でめでたい。」

「はい半分くらい不正解!」


見事にミスリードに引っかかった。

確かにそうなのだが、それだけではないのだ。


「はいお姉さま、こうやってかまぼこ見てみてください?」


私はお姉さまの視点に板を下にしてかまぼこの正面から見せる。


「こうやって見たら、初日の出…ぽくないですか?」 

「言われればそうだが…」

「なので初日の出モチーフです。」

「解るか…。」


お姉さまはそう言いながらも苦々しそうだ。

ちょっと考えたら解りそうな感じがするのがまた、ね。


「じゃあ次海老ですね。」


私はエビから足と背わたをとってゆく。

お姉さまも横で同じように作業する。


「これはわかるぞ、有名だ。」

「ほほう。」

「腰が曲がるほど長生きできますように、だ。」

「大正解。」


私は処理したエビを焼き網にかけた。


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