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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部五章 愛してる
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歩みなおし

冬休み前最後のリハビリ。

あの日の事故から3ヶ月とちょっと。

お姉さまは本当にこの短期間でリハビリを終えてしまった。

それもこれも、必死にトレーニングとリハビリを続けてきたお姉さまの努力の賜物だ。


「リシア、見てたか?」


もうリハビリも朝飯前と、汗もほとんどかかず笑顔でこちらを見やる。


「さすがですね。お姉さま。」


私がそう褒めそやし親指を立てると、自慢気そうな顔をする。

可愛らしいものだ。


「毎回リシアが私に付き添ってくれるから、私も頑張れたんだ。」

「そんな、お姉さま自身のおかげですよ。」

「リシアが居なければずっと歩けすらしなかったような予感が私にはある。全部リシアのおかげだ!」


お姉さまは幼児を高い高いするように私を抱え持ち上げると、くるっと一回りする。

さすがにこっぱずかしいのでやめてほしいと私は手足をぱたぱたさせて抵抗するが、しっかりホールドされて逃げられない。


「全部全部、全部!リシアのおかげだ!」

「わかりましたから!離して!」

「感謝の気持ちをスピードに乗せよう!」

「要りませんから!ぎゃああああああ!」


お姉さまに持ち上げられたまま高速でぐるぐる回られて、怖いやら気持ち悪いやら。

少ししてやっと正気を取り戻した私はお姉さまを三回ひっぱたいた。


◆ ◇ ◆ ◇


リハビリの後はカツサンド。

毎回これが恒例となりつつある。

外食とかも考えたのだが、お姉さまに頑張った分何を食べたいですか?と聞くと必ずカツサンドと答えるのでそうなった。


「幸せだ…。」

「本当に美味しそうに食べられますねえ。」


大きな口でカツサンドを頬張るお姉さまを見て、ほっこりした気分になる。

多少面倒くさい揚げ物も、この顔を見ると苦ではない。


「リハビリも終わり。このカツサンドとも出会えないのか…。」

「いや、普通に作ってほしいって言えば作りますからね??」


下を向いて悲しそうな雰囲気を醸し出すお姉さまにそうツッコミを入れる。

なんでリハビリしないとカツサンド食べれない前提なんだ。


「本当?」

「え?じゃあ嘘で。」


お姉さまがうるうると目を潤ませてこちらに問うので却下しておく。


「そこはもちろんって答えてくれるところだろう!?」

「そういう思惑が透けたから嫌なんですよ。」


そういうことされたら逆に断りたくなる。

私だけかもしれないが。


「そんなこと言わないで私の為にまたカツサンド作ってほしい…」

「ハナからそういってください。」


私はぴしゃりとお姉さまにそう怒り、カツサンドを頬張る。


「そういえば、リハビリが終わればいつでも復帰を待つと会社が言ってたよ。」

「そうなんですか?良かったです。」


お姉さまの所属する雑誌社は、会社都合の移動中での事故と言うことでしっかり労災対応いただいたそうだ。


「幸い、人目につくところに目立つ傷が残らなかったからな。」

「そうですねえ。良かったです。」


もちろん見た目が商売道具なので、怪我の具合によっては復帰は難しかっただろう。


「…まぁ、生きてるだけで十分よかったですけど。」

「そうやってすぐ私が嬉しくなるようなことを言う。」


カツサンドがなければ今頃お姉さまに抱き留められてべたべたされてたかもしれない。

危なかった。


「年明けくらいから、ゆっくり復帰させて貰うことにしたよ。」

「良いんじゃないですか?」


そうかからないうちに大学にも復帰だ。

この同居ももうすぐ解消だなぁ。

なんだか、しんみりするな。


「…もちろん最優先はリシア、だからな?」

「ふふ、わかってますよ。」


お姉さまの熱視線に苦笑しながら、また一つカツサンドに口を付けた。


来週は不定期更新になります。

申し訳ないです。

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