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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部五章 愛してる
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生活を作り直す過程

ぱちり。ぱちり。

今日はお姉さまが私の足の爪を切ってケアをしてくれる日だ。

他人に爪を切って貰うというのはなんだかこう、不思議な背徳感がある。

ましてやお姉さまがその端正な顔立ちで真剣に私の足を取って爪を切っているのが、こう、大変ぞくぞくするのだ。

爪を切るのが終わると、次は軽くやすりをかけてそのまま保護のためのペディキュアを塗ってくれる。

これもまた非常に丁寧で、お姉さまが誠心誠意向き合っているのがどこかこそばゆい。

そうして私の体がすっかりとろけてしまったころ、お姉さまは踵に保湿クリームを優しく塗ってくれ、最後に足の甲にキスをする。

私はその余韻に浸りながら静かに横になっている。


「なぁ、リシア?」

「…なんです…?」


そこにお姉さまがおずおずと顔を寄せ声をかける。

もう少し余韻に浸っていたいのだが。


「明日、買い物に行かないか…?」

「どちらへ…」


筋トレグッズを買わされないようにしないと。もう置くとこないんだし。

奴は私が頭が回っていない今を狙っている。


「家具屋さんなんだが。」


家具屋さん…?

家具屋さんと筋トレグッズ…ダメだ、頭が回らない。

たぶん大丈夫だろう。


「まぁ、構いませんけど…」

「ふふ、やった。」


お姉さまは嬉しそうだ。

本当に大丈夫か、これ?


◆ ◇ ◆ ◇


「これとこれはどう違うんだろうか…」

「高さと掛ける場所じゃないですか?」

「だったらこっちがいいのかな?」

「えー、お姉さまには低すぎません?」

「リシアにはちょっと高いかなと思ったんだが。」


結論から言うと大丈夫でした。

今のところふつうに家具を買いに来ているだけのようだ。

お姉さまと私、二人分の洗濯物を干すようになってからスペースが微妙に狭い。

なので今は洗濯物を干すラックを見ている。


「私はかがめば良いだけだし、リシアに合わせるべきでは?」

「私だって台に乗れば良いだけなんですけど?」


私たちは顔を見合わせて、どちらからともなくぷはっと笑う。

お互いがお互いのために折れて我慢しようとしている様はなかなか面白い。


「もうちょっといろいろ考えましょうか。」

「そうだな。」


私たちは手を握りなおして再度売場をうろうろし始める。

結局いっぱい話して、二段階の高さに干せるラックにすることにした。


◆ ◇ ◆ ◇


そのままうろうろしていると、お姉さまが立ち止まりジッと眺め始める。

目線の先を追ってみたところ、どうやらベッドみたいだ。


「ベッド、今のじゃやっぱり狭いですかね…?」

「ん?いや、むしろ快いサイズな気はしてるんだがな…。」


少し胸をなで下ろす。

私は今のシングルベッドに二人寄り合って寝るのが地味に気に入っている。

広げるならともかく、別に寝るとか言われたら嫌だなって。


「ただ、ほら。一緒に寝る分には問題ないけど、寝る以外のことには、な。ちょっと手狭だろ?」

「何て事考えてんですかね…。」

「まぁでも、今後大事なことではあるから。」

「そう、ですけど。」


そんな先のことを少し想像すると、一気に顔が赤くなるのがわかる。

やめておこう。


「やっぱりダブルくらいあった方が良いんだろうか。デカすぎても入らないだろうしな。」

「ううん、私はなるべく小さい方が良いですね。」

「どうして?」

「一人の日は寂しいじゃないですか。」

「リシア、やっぱり今からでも一緒に暮らそうか。」


お姉さまは割とガチなトーンで腰を引き寄せそう私に告げる。

それはもう少し先って決めただろうに。


「まぁ、完全に一緒に住むようになったらまた考えたら良いんじゃないですか。」

「それもそうだな。今アレで困ってるわけではないし。」


ベッドを見ていると、その上での私とお姉さままで想像してしまいそうになる。

危ういと思った私は早々に切り上げてお姉さまを引っ張ってゆく。


◆ ◇ ◆ ◇


「これ!これは絶対欲しいと思ってた!」

「…米びつ?あるじゃないですか。」


お姉さまが抱きしめるようにして絶対買うとアピールしているもの。

それはどうやら米びつのようだが、我が家にはもうある。


「あれはただ保存しておくためのものじゃないか!」

「…いや、米びつって米を保存しておくためのものでは?」

「あれに計量カップをつっこんでトントンと均して一合とか二合とか計るの、めっっっっっちゃ面倒くさいんだ!これなら一合ずつ出てくるの!」


米を計量カップで計るのを面倒くさいなどと思ったことがなかった。

元々実家では代々伝わる古い米びつに保存して升で計ってたくらいだし。


「そういうもんですか…?」

「そういうもんだ。」


お姉さまの目が何が何でも買うと訴えかけてくる。

まぁ、別に構わないけども。


「じゃあまぁ、買いましょうか…。」

「ふふ、使って見ろ、元の生活には戻れなくなるぞ?」

「そんな大げさな…。」


1ヶ月後、もう元の生活に戻れなくなったなとしみじみ思う私が居たのはまだ先の話。






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