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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部五章 愛してる
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事故後初の遠出 その3

「はー…酷い目にあった…。」

「□□ちゃん、ごめんなさいね。私がアヒルちゃんを見に行こうと言ったばっかりに…。」

「そんな。紫杏さんは悪くないですよ。悪いのはあのアヒルたちですから。…次会ったら焼き鳥にしてやるからな…。」

「…そういうところじゃないかしら、多分…。」


私はアヒルとの戦いでボロボロになりながらも何とか奴らを振りきり、元いた場所まで戻ってきた。

アヒルってどうやって食べるのが美味しいのかしら。

オッケースマホ。奴らをおいしく食べる方法。え?ない?あるでしょ?早く出しなさいよほら。


「あら、思ったより時間を食った割にはまだあの子たち帰ってきてないわね。」

「本当ですね。もうお昼ご飯の時間なのに。」


どうやらまだあの二人は帰ってきていないようで、広げて場所取りしておいたシートの上は誰もいない。


「たぶん、結構釣れてるのね。持ってきたポータブルバーベキューコンロの出番ありそうで良かったわぁ。」

「お姉さまが『絶対使うから!!』って無理矢理持って来ましたからね。」


おそらく最初から釣りスポットに行って魚を焼くつもりだったのだろう。


「まぁ、でも□□ちゃん。覚悟しておいた方がいいわよ?」

「何がですか?」

「麗ちゃん、たぶん滅茶苦茶機嫌が悪いから。」

「どうしてです?」

「帰ってきたらわかるわよ。」


紫杏さんは含むように笑う。

どういうことだろう?

不思議に思いつつも、先ほどのボードゲームの続きを挑まれた私は考えるのをやめた。


◆ ◇ ◆ ◇


それからしばらくしてのこと。

ほくほく顔の龍斗さんと、本当に機嫌の悪そうなお姉さまが帰ってきた。


「あ、お二人とも、お帰りなさい!」

「おかえり。結構釣れたみたいね、龍ちゃん。」

「ああ、弁当もあるからたくさんは要らねえだろうと多少放して来たが、ほれ。」


龍斗さんがバケツを見せると、大小六匹の魚が泳いでいる。

この短い時間で見事なものだ。

お姉さまはー…あれはうーん。


「…お姉さま?」

「…なんだ?」

「釣れましたか?」

「…ほら。」


お姉さまのバケツには魚がぽつんと一匹。

でもほら、釣れてるし。


「すごいですね、ちゃんと釣れてるじゃないですか?」

「あー□□。それはな…」


龍斗さんが言いにくそうに口を開く。


「ちっとも釣れねえことにしびれを切らした麗香が、川に入ってって手づかみで取ってきた奴なんだよ…。」

「麗ちゃん昔からそうよね。釣り好きなのに一切釣れなくて毎回力業で取ってくるの。埠頭で釣りしたときは飛び込もうとする麗ちゃんを抑え込むのに苦労したなぁ…。」


なるほど。

お姉さま、微妙に気が短いところがあるものな。

しかしまぁ、釣りが好きなのに一切釣れないお姉さま、可愛いけども。

とりあえず機嫌を取ってあげましょうか。


「すごいじゃないですか、お姉さま。これ、手づかみで取ったんですか?」

「…ああ。そうだよ。」

「反射神経とか要るんでしょうねぇ。難しいんだろうなぁ。」

「…そんなことはないと思うが…。」


ちょっと褒められて嬉しそうにしている。

良いな、もう一押し。


「あの、これ私がいただいて良いですか?お姉さまが取ってきてくれたお魚、食べたいです。」

「うん、構わないよ。」

「やった。お姉さま、ありがとうございます!大事に食べますね!」

「ふふ、□□が欲しいというならいくらでも取ってくるが…?」

「今はこれで大丈夫ですよ。でも、また絶対!取って食べさせてくださいね?」

「ああ、もちろん。可愛いな、□□は。」


お姉さまは鼻歌を唄いそうな勢いで、私の髪をさらりと撫でる。

ちょろい。


「流石だな…。」

「流石ね…。」


後ろからそんな声が聞こえてくる。

お姉さまの扱いには自信がありますよ。

お姉さまの機嫌も直ったところで私たちは食事の支度を始めた。


◆ ◇ ◆ ◇


「麗ちゃん、これどうやって組めばいいの?」

「ああ、それはな…」


お姉さまと紫杏さんが小さいバーベキューコンロに火を点けている間、私と龍斗さんは釣ってきた魚の下処理を始める。

あまり魚の下処理について詳しくないので、詳しい龍斗さんから教わる形だ。


「こいつはここから包丁を入れて…」

「なるほど…これは何を…?」

「ワタ取りだな。取らないとだめなのはな…」


龍斗さんの説明ははっきり分かりやすく、為になる。

今後魚を捌くときに便利そうだ。


「□□。包丁を入れる時の角度はこうだ。」

「わっ、お姉さま?」


教わっている最中、間からお姉さまが生えてきてびっくりする。

何だ急に。


「麗ちゃん!もう途中でどっか行かないでよ!」

「ああすまない、紫杏!今行く!」


お姉さまはどうやら準備をほっぽりだして生えてきたようだ。

何しに来たんだ。ほんと。


「あー…気を取り直してだな。麗香の言うとおり…」

「ふんふん。この後は…」

「持ち手用にここから串を…」

「こう、ですかね…」


龍斗さんの手元をしっかりと観察し、真似てゆく。

なんか見れる程度の魚が完成した。


「龍斗。」

「わっ、お姉さま!?もう、さっきからなんですか?」

「お前、近くないか…?」


お姉さまはまた私達の合間に生えてくると、私を龍斗さんから遠ざけるようにする。

龍斗さんは面倒くさそうな顔でため息を吐く。

解りますよ、こいつこの程度で嫉妬かって顔ですね。

面倒くさいですよね、うちのお姉さまがすいません。


「はぁ。おい、紫杏!俺も解るからそっち行くよ!」

「そうして~!」

「よし。それだけわかれば十分だろうよ。麗香、□□に間違いがないが見てやってくれ。」


龍斗さんは手を洗いそそくさとこの場を去り、私とお姉さまが残される。


「ええと、お姉さま。これであってます…?」

「ふふ、リシアのすることに間違いはないさ。」


いや、間違ってたら困るんではっきり言って欲しいんですが。

というか、近いし。調理しづらいです。

後、二人きりなので呼び方がリシアになってます。


「あ、これお姉さまの取ってきたお魚ですね。解りやすいように串を逆向きから刺しときますかね。」

「そうしよう。一匹で足りるか?なんなら何匹か今からでも…」

「大丈夫です。お姉さまに見てて貰いたいので。」


こう言わないとなんかそのまま魚捕りに走っていきそうだし。


「ふふ、リシアは寂しがりさんだな。いいよ、そばにいような。」

「お姉さま、それは身動き出来ないです…。」


べっとべとにくっつくお姉さまを引っ剥がしながら私は魚の下処理を続けた。



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