挿話・三人の真実
持病の頭痛が今年一番くらいに酷く、最新話を作れるほど頭が回りませんでした。
以前の話の裏設定を挿話として軽く書いたので流れを断ち切りますが今日はこれでお願いします。
明日以後は今までの続きで進めていく予定ですのでよろしくお願いします。
これはまだお姉さまが入院してた頃。
ある日の病室。
「紫杏さん、一度聞いてみたいことがあったんですけど。」
お姉さまが検査で病室を空けていて暇な私は、紫杏さんに話を振る。
「なぁに?」
「お姉さまが龍斗さんをボコって二人の勘違いを糾し、くっつけたって話、本当なんですか?」
少し前から気になっていたのだ。
私の見ている二人は言葉をよく尽くしていて、すれ違うような感じではない。
「あー、麗ちゃんの中ではそうなってるのよね…。□□ちゃんにはあまり聞いてて楽しくない話もあると思うけど、聞きたい?」
「ええ、聞きたいです。」
何となくその口振りで想像はできている。
「ほら、麗ちゃん。あの子恋愛にかけてはこう…ね?アレじゃない?」
「バカですね。」
「だから、全く気づいてないと思うんだけど。龍ちゃんが麗ちゃんを好きだった、というのは勘違いじゃなく事実なのよ。」
「…ああ、やっぱり。」
そんな気はしていた。
龍斗さんがハナから紫杏さんが好きならそんな揉め事にはならなかったと思っていた。
「龍ちゃん、私が龍ちゃんのこと好きなのもよく知っていたから。それでもずっと麗ちゃんのこと諦めきれずにいたの。悔しかったなあ。」
「それで口をついて出たのが麗ちゃんなんて大嫌い、と。」
「そうねえ。もちろん、本気ではなかったけど。それでもね。」
まぁ、そうなりますよね。と言った感じだ。
「それでも、龍ちゃんも私のことはちゃんと想ってくれてて。麗ちゃんに勝ったら告白してすっぱりフられようと思ってたんだけど。そんなときに麗ちゃんが龍ちゃんをとことんボッコボコにしたのよね。」
「ああ、言ってました。」
「それで逆にこれは無理だって吹っ切れちゃったみたいで。だから、『格好悪い所見せてごめん』って。本当は勝ってフられてから私と向き合ってくれるつもりだったのに負けて諦めちゃったもんだからね。」
「そう言うことでしたか…」
「んで、『麗香より弱くて格好悪い俺で良いのか?』なんて言うもんだから、腹立っちゃって!思いっきりビンタして、『私は龍ちゃんに守られたいなんて一度も思ったこと無い!!…ただ、一緒に歩いて欲しいだけ。』…そう、思いを伝えて。」
「なるほど。紫杏さんもやりますね。」
怪我人にビンタするのはどうかとはと思うが。
「でも、□□ちゃんも自分の立場に立って麗ちゃんにそういわれたら腹立たない?」
「…五発くらい入れる自信ありますね。」
「私は三発だったから□□ちゃんのが上ね。」
紫杏さんはケラケラと笑う。
「まぁ、龍ちゃんは麗ちゃんに未練がないのはよく知ってるから。心配しないで?今更本当のことを言うつもりもないし。」
「ええ、よく解ってます。」
今の紫杏さんと龍斗さんは端から見ても互いを良く尊重し支え合って生きている。
今更、他の人と何てことがないのはよく解る。
「ふふ。でもね。麗ちゃんの真っ直ぐで、強くて、格好良くて、バカなところが私たちの道しるべなんだ。私たちの家族であり、一番星のヒーローさん。それは本当なのよ?」
「なんかすいません。私みたいなのが…いたっ」
紫杏さんはぴんと軽く私にデコピンを食らわせ微笑む。
「私たちのヒーローは□□ちゃんにしか任せられない。特にあのバカのバカな行いを経験して、それでもそばにいてくれたあなたにしか。だから、自信持って良いのよ?」
「…はい、ありがとうございます。」
「さて、麗ちゃんが検査から帰ってきたら目の前でオヤツ食べない?検査後数時間は絶食って言ってたから。悔しそうな顔するぞ~。」
「良いですね。思いっきり目の前で食べましょう!」
まぁ、でも。
ちょっとくらい残してあげていいんですよ、お姉さま。




