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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部三章 恋とは
232/321

七夕記念ss・七夕の先に

前に一話更新しています。

こちらは七夕記念ssとなります。

視点は一部のリシアとシンシア視点です。


22時更新といいながら予約システムの設定ミスで21時更新(即時)になっていました。このまま公開します。

「お姉さま。今年も領主館の笹の設営が終わったそうです。」

「そうか。ご苦労だった。」

「こちら、お姉さまの分の短冊になります。」

「ありがとう。」

「今年のお願いはどうされるおつもりですか?」

「ん?いつもと変わらずだな。」

「リシアが来年も公爵夫人としてそばに居てくれますように、ですか。相変わらず律儀ですね。」

「そういうリシアは今年は何を?」

「さぁ、何だと思いますか?」


そう問うと、お姉さまは腕を組んで悩み始める。

寄った眉間の皺をとんとんとつついて遊びながら返答を待つ。


「ううむ。私と今年も一緒に居れますように、か?」

「ぶぶー。残念。」

「答えは?」

「当てられなかった人に正解は言えませんね。」

「そう言わずに、教えてくれよ?なぁ。」

「甘ったるい声でお願いしてもダメです。また来年、当ててくださいね。」


私を膝に乗せて何とか聞き出そうとするお姉さまをいなしつつ、私はお姉さまの短冊を持って設置された笹まで持ってゆく。

私も行こうか?と問われたが、公務をさせる方が先だ。そのまま執務室に縛り付けて置いてきた。

私はお姉さまの短冊を自分でかけた後、アランさんを見つけて捕まえる。


「ごめんなさい。これを一番高いところにかけて欲しいのですけど…」

「今年もですね。わかりました。お嬢様に見られないところに。」

「ふふ、ありがとうございます。」


私は短冊の行方を見守った後、七夕はそうめんだったなと夕食にそうめんを作ってもらえるようお願いしに行ったのだった。



『初めて二人で星を見た日の気持ちでずっと居れますように。』




◆ ◇ ◆ ◇


「シンシア、今年は何を書くつもりなんだ?」

「毎年教えてもらえないのに良く懲りずに聞かれますね。あなたは。」


私は目の前の夫の質問に思わず嘆息する。

教えてもらえると思っているのだろうか。


「俺の分教えるから、教えてくれよ。俺は--」

「シンシアとずっと仲良く生きてゆけますように、でしょう。それも毎年のことではないですか。」


少し恥ずかしい文言を口から吐く。

この人は毎年これなのだ。恥というものはないのだろうか。


「あぁ、でも教えたには違いねえだろ?だからさ、ほら…」

「お断りします。勝手に決めたことでしょう。」


私はぷいとカイト様から視線を外し、笹まで歩み寄る。

こうしてこの日に短冊に願いごとを書いて笹に吊す風習を教わったのもリシア様からだ。

それからは毎年、こうしてハミルトン侯爵家ではこの行事をやっている。


「教えてくれねえのか?どうしても?」

「…そんなに気になるなら、吊したものを見られてはどうですか。」

「それは話がちげえだろ。俺はシンシアから聞きたいんであって、のぞき見てえ訳ではないからな。」

「はぁ、あなたという人は。」


だが、この願いごとは見られる訳には行かないのだ。

見られたら恥ずかしさで死んでしまうかもしれない。

なので今年も言えずじまいだ。


「では、行事も終えたところで公務に戻りましょうか、カイト様。」

「待ってくれ、俺はもう少しお前と居たい。」

「公務をサボる理由に使わないでいただけませんか。」

「そうじゃねえよ。俺はただシンシアともっと一緒に居る時間を増やしたいだけだ。」


カイト様の目がまっすぐ私を捉える。

いくつになっても、本当相変わらず。


「…さっさと執務室にお戻りください。」

「…あぁ、そうすっか。」

「後ほど、書類を持って執務室にお伺いするのでスペースを空けておくようお願いします。それでは。」

「えっ、お、おい!?シンシア!?…ありがとう!愛してる!」


踵を返した私の背にカイト様の声がかかる。

顔から火が出そうなのを堪えながら振り返らず歩く。

本当に相変わらずだ。




『カイト様とずっと仲良く生きていけますように。』

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