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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第二章 知る
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花言葉「約束」

「お姉さまお姉さま!あそこにうさぎが居ますよ!ほら!」

「本当だな。捕まえてアレも食材にするか?」

「その発言は女子としてどうかと思いますよ…」


昼食の時、これでもかというほど泣きはらした後私たちは気分を変えるために近場をお散歩することにした。

あの時、お姉さまの方がもっと悲しい思いをしただろうに、「お前が私の代わりにたくさん泣いてくれたから」とただ不器用に笑って私を撫でるだけだった。


「あ、シロツメクサが咲いてますね。可愛らしくて綺麗!」

「シロツメクサか。花冠でも作るか?」

「お姉さま花冠作れるんですか?」


シロツメクサの花冠って、よくテレビとかに出てくるし、結構な人数が存在は知っているけど、作ったことのある人となると極少数なのではないだろうか。

実際、私も現実でもここでも作ったことはないし、作り方も特に知らない。


「ああ、良く家族で狩りに出たとき、まだ狩りに参加できない小さな私と母様で一緒に作ったものだ。良いか、こうやってまず一本の花の下の茎にもう一本を巻き付けて、余った茎を同じように下に流すんだ。」

「こうですかね…?」


そういって私はシロツメクサを二本持ち、片方にもう一本を巻きつける。


「ああ、巻き付けた後は巻き付けられてる方と同じように並べて…そうだ。」

「この後は…」

「次は巻き付いているところのすぐ下にもう一本を全部に巻き付ける。」

「なるほど、これを繰り返すとどんどん太く長くなっていくと。」

「そういうことだな。長くなったら曲げて上下をシロツメクサで巻き付ければ出来上がりだ。」


指示通りにやってみているが、これは中々楽しい。上からどんどん巻き付ける度に長くなっていくので、過程も目に見えてわかりやすい。

二人静かにシロツメクサを編み込んでいく。


「今日は困らせて悪かったな。格好のつかないところを見せてしまった。」

「いえ、そんなことはありませんよ。…エドワード様っていつもお姉さまにはあんな感じなんですか?」

「昔はもう少しマシだったがな。エドワードとは付き合いも長いが、私は小言を言ったり衝突を繰り返してきた。どう、関係を深めていいかわからなくてな。」

「それでエドワード様もだんだん頑なになって拗れていくと。」

「要領が良いからそれなりに人前では取り繕ってはいるがな。不仲と噂されているというか、実際に不仲なんだ。」

「私も今まで二人は上手く行っているものと…」


しかし、兆候はあった。

お姉さまが私の課題を捨てるように指示した疑惑があがったときもそうだった。

エドワードは真っ先に婚約者のお姉さまを疑い、追及した。

本来であれば庇うべき立場なのにも関わらずだ。


「まぁ、私もエドワードのことを好きかというと、そうではない。玉子焼きを作ったときも、食べて欲しいと真っ先に思い浮かんだのはエドワードではなく、リシアだったよ。」

「お姉さま…」

「だからほとんどをリシアが食べてくれて私も良かったよ。あんな解らん奴より、リシアが食べてくれた方が全部解ってくれるし、私の欲しい言葉をくれる。」

「私もただ思ったことや感じたことを口にしてるだけでそんな大したことは…」

「知ってるよ。だからこそ嘘偽りがないし、もらって嬉しい。そうだろう?」


お姉さまの手がまた私に伸びてきて頭を撫でる。

座高でも負けているから私からは届かないのにズルいよなあ。


「それでも私は結婚しなければならない。家の為にもな。でも、たまに不安になるんだ。こうしてエドワード仲良くも出来ないただの私が…弱い私が。王妃という立場になれるのかということを。」


そうやって内心を吐露するお姉さまは、なんだかひどく弱って、小さく見える。

きっと、この世界に来る前の昔の私なら、キャラのぶれと言って怒っていたと思う。

レベッカは強くてなにものにも負けないのだと。

凛と佇み、全てを一刀両断する強い女なのだと。

でも今なら解る。お姉さまだって当然、一人の人間なのだ。

弱りもすれば、悩みもする。臆病にもなるし、誰かに相談したくなるときもある。

そんな人の全てが愛おしく、大切なのだと。

そうして私はつとめて明るい声で話す。


「でも、お姉さまはそれでも手探りで進み努力しつづけている。玉子焼きだって、仲を深めるきっかけになればという想いはあったはずです。努力はたまに裏切りますが--努力しない人間よりはずっと良い方向へ進みますよ!」

「そうだと良いが。」


まだ不安そうなお姉さまに私は立ち上がって出来上がったシロツメクサの花冠を被せる。


「少なくとも、王妃様の冠はすごく似合うと思いますよ?だって、花冠もこんなに似合ってるんですから!」


私のお姉さまは花冠が良く似合う。こんなにも可愛い人なのだから。


「…本当に、リシアは私の欲しいものを全部くれる。どうやって返して良いか解らないほどには…」

「そこは出世払いでお願いします!それまでに欲しいものいっぱい考えときますから!」

「ふふ、もし出世しなかったらどうするんだ?」

「そのときはお姉さまが欲しいですね!」

「なっ…」

「ダメですか?」

「…ダメではないが…」

「もし、万が一お姉さまが頑張って、頑張って、…それでもダメなら。私が守ります。だから、あまり不安がらないでください。」

「嬉しいよ。何だかお姫様になった気分だ。」

「お姉さまは私の可愛いお姫様ですから。」


シロツメクサの香る野原に、二本の花が寄り添って咲いていた。





二章のメインシナリオはこれにてラストです。

少し前にも書いたのですが、二章のテーマは「知る」でした。

二人は様々なイベントを通して何を知ったのか。

読者の皆様にも色々解釈してもらえれば、と思います。


エピローグを経て三章に入ります。

テーマはまだこのあとがきを書いてる時点では未定ですが、ここまで語られてこなかったことについて色々と解明されていく章となります。

今後も二人の進む先を共に見守っていただければ幸いです。

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