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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部三章 恋とは
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初めての遊園地 その3

最近予約のミスが多く投稿出来てませんでした。

見直しをしっかりしないといけませんね。

「なぁ、リシア。」

「はい、お姉さま。」

「あの90度の壁は何だろうな?」

「今から乗るコースターのコースだと思いますよ。」


コースターの待ち列でのこと。

下からコースターのレールを見ていたお姉さまは遠い目をして私に問う。


「ほら、ちょうど来たみたいですよ。」


コースターが90度の壁を登り、ほとんど真っ逆様に落ちてゆく。


「どうして、あんな危険な動きをする必要が…?」

「その方が楽しいからでは?」


危険そうに見えない絶叫マシンって意味あるんですかね。

まぁ、本当にダメそうなら止めるというのもアリなのだが。


「あの、お姉さま。ダメそうなら遠慮なく言ってくださいね…?」

「えっ…!?いや、こ、怖くないぞ…?ちょっと気になっただけだ。」


お姉さまは尚も平静を装う。

まだ怖がってないと思われてると考えてるんだろうか?

先ほどのコースターでの叫び声は他人のものだと誤魔化せてるつもりなのだろうか?

どうしよう、格好良く振る舞えていないにも関わらず私の前でそうあろうとするお姉さまが、可愛い。


「お姉さま、暑いですね?水分補給は大丈夫ですか?」


私はお姉さまに水筒を差し出す。


「ありがとう。貰おうか。」

「汗をお拭きするので、屈んでいただいても?」


私はバッグからタオルを出してお姉さまに見せる。


「あ、ああ。ありがとう。」

「ふふ、失礼しますね。」


お姉さまの額に浮かぶ汗をとんとんと拭いてゆく。

これははてさて、汗か冷や汗か。


「今日はなんだか、いつもより優しいな…?」

「気のせいですよ。」


せめて待っている間は優しくしてあげよう。

私はそう決意したのだった。


◆ ◇ ◆ ◇


「お姉さま、てっぺんですね!」

「落ちっ…落ちっ…落ちない…?ひゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「お姉さま、次はアレに乗りましょう!?」

「いや、なんであれは50mくらいの高さでくるくる回ってるんだ!?おかしいだろ!?」


「お姉さま、常にバイクの急カーブみたいで楽しいですね!?」

「降ろして!?止めてぇ!?降ろしてえええええ」


「お姉さま。」

「あ、ああ。」

「次はあれに…。」

「はは、円盤が回りながら振り子みたいに振り回されてるな…。」


「振り子の一番上で停められるの、想像以上に怖いですね!?」

「神よ…私をどうかお救い下さい…。」


「お姉さま、次は…」

「次は…なんだ…?」


あ、これダメな奴だ。

お姉さまが悟りを開いて菩薩の様な顔になっている。


「少し休んで、どこかでお昼にしましょうか。」

「ああ…リシアの為…だからな…。」


これはかなり重症だ。

単純にアトラクションが楽しくてお姉さまで少し遊び過ぎた。

もうすでに魂が抜けている。

私はお姉さまの手を引き、ベンチへと連れて行く。


「はい、お姉さま。お座りになって?」

「ああ…そうしようか…。」


抜け殻のお姉さまをベンチへ座らせ、私はほどよく間を空け横に座る。

 

「はーい、お姉さま。横になってー?」


お姉さまならたぶんこれで喜ぶだろ。たぶん。

私はお姉さまを引っ張り寄せると膝を枕にして寝かせる。


「なっ!?リシア?」

「あ、戻ってきましたね。満足するまで横になってください?」


ほら戻ってきた。単純な人だ。


「痒いところはないですかー。なんちゃって。」

「う、うむ。ないぞ。」


お姉さまの頭をなでりなでりとしてみる。

幸せそうだ。そんなに良いものでもなかろうに。

まぁ、頑張ったのだ。少しはいいだろう。


「お茶、飲まれますか?」

「いや、いい…今はこの感触を愉しみたい…。」


はっきり愉しむ言うな。

今日だけなんですからね。


◆ ◇ ◆ ◇


そうして二人穏やかな時間を過ごしていると、先ほどから視線を感じていた男性二人グループがこちらに向かってやってくる。

なんだか、嫌な感じだ。

お姉さまも動きを察したのか、起きあがろうとするのを手で制す。


「休んで貰ってるのですから、お姉さまが出て貰わなくて良いですよ。私一人で対応できますから。」


そう告げてお姉さまを膝に乗せたまま私は相対する。


「どうされましたか?」

「遊園地まで来て膝枕させる彼氏より俺たちと遊ばない?」


出た。三下台詞。

それで着いてくる女性が居るんだろうか?


「お断りします。人を呼びますよ?」

「そんなこと言わずにさあ。」

「お姉さまより格好良くなってから言ってもらえます?」


こんな奴らよりお姉さまの方が何倍も格好良い。

自分の顔見てから出直せ。


「お姉さま?よく見たらこいつ女じゃねえか!」


そうだ、うちのお姉さまは格好良いから忘れがちだが女の子だ!


「二人の俺たちとちょうど良いじゃん、遊ぼうぜ!」

「ですから、お断りします。」

「女同士ってことはつきあってる訳じゃないんだろ?ならちょっとくらいさ。」

「おつき合い、してますよ?」


静かに黙っていたお姉さまが咳き込む。

そこは演技して貰っていいですか?


「うちのお姉さまはさいっこうに格好良くて、強くて、優しくて、素敵なんですから。ねっ、お姉さま?」

「それを私に振るか…?」

「なので邪魔しないでもらっても?」


私は二人をにらみつける。

本当に邪魔なんです。あなたたち。


「はぁ…もう良いからさ、ちょっと一緒に来てよ。」

「だから人を呼びますよ!?」

「リシアが休んでおけと言うから黙って見ていれば…。」


お姉さまは面倒くさそうに起きあがると二人を睨みつける。

圧されている。私とは圧が違う。


「じゃあこうしよう。私と100秒手を繋げたら着いていこう?どうだ?」

「はっ、チョロいじゃん。」


男の一人は手を出すとお姉さまはその手を握る。

あーあ。


「じゃあ行くぞ。1、2…」

「いだっ、いだだだだだ!」

「3、4…」

「痛い痛い!離せ!おい!」

「5、6…」

「すいませんでした!離して…いっでっででで!」


お姉さまはニコッと笑って手を離す。

その後、もう一人に向き直る。


「君もやるかね?」

「い、いえ…」

「では失せろ。良いな?」

「はっ、はい。」


お姉さまが手でしっしとやると蜘蛛の子を散らすように二人組は逃げてゆく。


「ふふ、リシアくらい可愛いくなってから出直して来い。」

「お姉さま、ごめんなさい。私…」

「本当だ。何故矢面に立った?私に任せておけば良いものを。」


お姉さまは少し怒ったようにこちらを見る。


「その、お姉さまに休んで欲しくて。」


そんな言葉しか出てこない。

確かに、どうして?


「もういい。リシア、震えるくらい怖かったのなら、無理しなくて良いんだ。」


お姉さまは私の手を握る。

どうやら、震えていたらしい。


「お姉さま、あの、私。」

「リシア。私みたいにならなくて良いんだ。並ばなくて良い。君は君で居てくれ?」


お姉さまは私の顔に手を当ててそう笑いかける。


「リシアは私の癒しであって欲しいんだ。もう一度膝枕、良いかな?」

「あっ、はい!」


お姉さまはもう一度ベンチに座ると私の膝を枕にして横になる。


「幸せだ。リシアはリシアで居てくれるから、私は幸せだ。なぁ?」

「そう…なんですね。」


まだ、いまいち良くわからない。

でも、きっとお姉さまは本当にそう思って居るのだろう。

お姉さまの頭を撫でながらそんなことを思った。






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