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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第二章 知る
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狩猟大会その2

「ただいま~。いや良い感じで狩れてるよ今日は。」

「おかえり。これで汗を拭くと良い。」

「今日は暑いですからね。冷たいお茶をどうぞ。」

「ん、ありがとう。ふぅー生き返るなぁ。」


帰ってきたエドワードを二人で出迎える。

こうやって見ると白の狩猟服って機能的によろしくないな。野山を駆け回った後だと緑やら茶色だらけになっている。


「さて、すっかりお腹が空いたよ。昼食をいただこうかな。」

「ああ用意できているぞ。存分に食べると良い。」


同じテーブルについて食事を始めるがお姉さまは玉子焼きについて何も言わない。

私が言うのも違うと思うからとりあえずは様子を見る。


「昼までに何が穫れたんだ?」

「んー、鹿を一匹と狐がそこそこ。鳥も落としたかなあ。」


基本的に攻略キャラはおしなべてスペックが高い。

エドワードも例外なく狩りの腕前も充分のようだ。


「先ほどお姉さまとお話してたんですが、穫った鹿のお肉って分けてもらうことはできますか?」

「ん?いいよいいよ、好きなだけもっていって。どうせ持ち帰っても腐らす前に城のみんなでちょっとずつ分けてもらうだけなんだ。」

「ありがとうございます!ローストにする予定なのでよろしければ少しお分けいたしますね。」

「ああ、そいつは楽しみだね。レベッカとのお弁当に入れるのかい?」

「そうなんですよ。美味しいと伺ったので。」

「ふふん、お弁当は私のだからな?」

「何故作ってない奴が自慢げなんだ…」


ここです。お姉さま、私も料理を作ったって言って玉子焼を勧めてください!と視線を送るがいまいち反応がない。

この人、意外と婚約者に対して臆病だ。


「はぁー。ごちそうさま。せっかくだから午後からは鹿を多めに狙おうかな?」


そして言い出せないうちに食事が終わってしまった。エドワード、玉子焼きに手つけてないし。

さすがに少し手を貸すべきだろうか。


「お待ちください、エドワード様。お姉さまが言いたいことがあるみたいですよ?」

「…なんだい?」

「あー、えっとだな。その、リシアに習って私も手料理を作ってみたのだが…」

「この玉子焼きだそうですよ!食べてみてください!」


そう言って私はエドワードの口に玉子焼をねじ込む。どうだ、これがお姉さまの玉子焼だ!


「んん、んー。良いんじゃない?」

「良いんじゃないって…ほかには?」

「いや、普通の玉子焼きだしなぁ…」

「他に言うことが…」


それ以上言う必要はないといった風にお姉さまは私の手を掴んでかぶりをふる。

だって、一生懸命作ったのに。そんなのってないじゃない。私は、私はあなたがどれほど頑張ったか解るから。


「…手を煩わせて悪かった。午後からも頑張ってきてくれ。」

「ああ行ってくるよ。鹿は従者に血抜きしたあと解体するようお願いしておくから。欲しいだけ持って行って。じゃあ。」


今すぐ走り出して後ろ頭をぶん殴ってやりたかった。

でもそれで何かが解決するわけではないから。

今はお姉さまの側に居よう。


「エドワードは私に対して少し頑ななところがあるからな。仕方あるまい?」


そう明るく振る舞うお姉さまにどう声をかけたらいいのか。

解らないけど、ただ今私が思うことを口に出す。


「ひっっっっどいやつですね!あいつ!」


王子様だかなんだか知らないが、そんなものは関係ない。あんな奴あいつ呼ばわりで良い。


「さすがにあいつ呼ばわりは良くないぞ…っておいリシア!?」


私はその場で残りの玉子焼きを勢い良く食べ始める。


「もうひふぉふたりふぉもあげまひぇん!おねえひゃまのたまごやきはぜんふわたひのものですからね!!(もう一つたりともあげません!お姉さまの玉子焼きは全部私のものですからね!!)」


一つ。また一つ。玉子焼きを噛みしめる。

その全てに、ただただ不器用な愛を感じる。

こんなに貴重なもの、他にあるものか。

こんなに素敵なもの、他にあるものか!


「おいひいでふ。おねえさま…」


途端に悔しくて、涙が堪えきれなくなる。

さっき食べながら泣いたら向こうがびっくりするって、反省したばかりなのに、涙が止まらない。


「全く、私の手料理を食べる度に泣くとは大袈裟な奴だな…。」


そう言ってお姉さまは静かに私の頭を撫でてくれたのだった。




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