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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部三章 恋とは
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二人きりのトレーラーハウス その3

「リシア、着終わったぞ?」

「あっ、えっと、はい。今行きますね。」


左にあるものを右に、右にあるものを左にといった自分でもよくわからない作業に精を出して気を紛らわせていると、お姉さまから声がかかる。

緊張が少しほぐれた私は、立ち上がりアクセサリーや装飾の調整に向かう。

振り返ってお姉さまの方を見ると、思考が止まる。


「やっぱり、似合わないだろうか…。」


ピンクのゴシック系の夏ドレス。

ふんわりとした可愛いロングスカート。

原作のレベッカには似合わなかったその衣装。だが。


「お姉さま、めっっっちゃくちゃ可愛いですね!」

「そ、そんなことありえるか…?」

「有り得ます、有り得ます!」


私はお姉さまの周りを一回りしてその様をつぶさに観察する。

確かにお姉さまはレベッカと良く似ているのだ。

レベッカが似合わないと言われていたもがお姉さまに似合うはずはふつうないのだが。


「お姉さまってレベッカと違って雰囲気がふにゃっと柔らかいんですよね。」

「柔らかい?私が?」


お姉さまはきょとんと不思議そうな顔をする。

あまり自覚がないようだ。


「あ、もちろん褒めてますよ?ほら、原作のレベッカって何かに追われてるのかってくらい雰囲気張り詰めてるじゃないですか。絶対笑わなさそうだし。」

「ああ、確かにそうだな。」


『剣戟の先に』を知るお姉さまは首を縦に振る。


「お姉さまも、モデルの写真だと強くてかっこいいクールビューティーって雰囲気が多いんですよね。まぁ顔の系統がそっちだからだと思うんですけど。」

「確かにそうなんだ。だから雰囲気が柔らかいってリシアの発言が意外なんだよ。」

「だってお姉さま、いつもニコニコ穏やかな笑顔で楽しそうにしてるじゃないですか。」


そう。私の記憶の中のお姉さまは特別なことが無い限り楽しそうに笑っているのだ。

お姉さまと言えば笑顔のイメージすらある。


「私、そんなに普段情けない顔になってるかな…?」

「いやいや、情けなくはないですって。まぁ、お姉さまはレベッカと違って雰囲気が柔らかいので、可愛い系もとっても似合うんですよ。」


私は気になったところを少し調整しながら話す。


「そ、そうかな?」

「ええ、お姉さま可愛いですよ、自信持って。」


お姉さまは少し気恥ずかしそうにしながらも、うんと頷く。

私はそんなとこまで可愛いな畜生と小さくぼやいたのだった。


◆ ◇ ◆ ◇


「お姉さま、また可愛い顔になってる!今はレベッカ!レベッカなんで!かっこいい顔して!」

「あ、ああ。難しいな…。」

「可愛い顔も素敵ですけど、今はもっと引き締まった顔してくださいって!」

「リシアのせいだろ!?」

「どうして私のせいなんですか!?」


二人でぎゃいぎゃい言いながらもなんとか撮影は進む。

ただ撮影している私でも暑いのだ。

素人の通気性無視の衣装を着て炎天下に立つ麗香さんの辛さなど想像に難くない。

幸いトレーラーハウスの前がすでに海なので、前で撮影しながら定期的に休憩を挟む。

水分も取りやすく空調の効いた部屋が近くに無かったらと思うとゾッとする。

そうしてお昼前くらいには大方撮りたい写真は全て撮れた。


「お疲れ様でした。後は夜にちょこっと撮るくらいですかね。」

「わかった。お疲れ様。しっかし、暑いな…。」

「その衣装、職人が作っても結構暑いと思うんですよね。何で夏服にこんな衣装を選んだんだか、不思議ですね。」

「あー、気候の差じゃないか?」

「気候?」

「『剣戟の先に』は舞台が西洋だろ?なら、あの世界の夏は日本ほど暑くないんじゃないかな。」

「なるほど。それは目からウロコですね。さすがお姉さま。」

「カンニングしてる気分だ…。」

「どういうことです?」

「いや、気にするな。」


麗香さんはかぶりを振る。

たまにある奴だ。


「おひるー、は、着いてたんでしたっけ?」

「いや、着いてなかったはずだ。」

「じゃあ来る途中にあったスーパーで食材買って作りません?」

「良いぞ。そうしようか。」

「でも、今はちょっとだけ…」

「休憩だな。」


私たちは空調に当たりながら少し横になった。






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