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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部三章 恋とは
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夏祭り その2

「麗香さん、スーパーボール掬いやっていっても良いですか?」

「良いな。私もやろう。」


色とりどりのボールが水面に浮かぶ。

大きいのも小さいのも、様々が何をか思って流されて動いてゆく。

その動きはまるで川に流される笹舟のようで--いや、水に浮かぶボールなのだが--捉えきれない。

とどのつまり、私は苦手だったりする。


「でえい!…またポイが破れてしまった。」

「お姉さま、三枚目ですよね?一個も取れてないんじゃないですか?」


私のお椀を見ると確かに一つとして入っていない。取れてないのだからそりゃそうだ。

リシアのお椀にはすでに溢れてこぼれてしまうくらいにはスーパーボールが積まれている。


「…難しいな?」

「子供もする遊びなんですから難しいことないですよ。」

「ぬぅ…」

「お姉さまは力入れすぎなんですよ。ほら、貸してあげますから持って。」


リシアは私に自分のポイを持たせると、立ち上がって私の少し後ろにやってくる。

そしてそのまま、そっと私の手に手を重ねる。


「良いですか、こうやって…」

「ああ…」


普段、たまに手を繋いでいるはずなのにドキドキする。

手を繋いだことなど一度や二度じゃないはずなのに。


「あーもう、お姉さま!どれだけ不器用なんですか!」

「えっ!?あっ…」


見るとポイは見るも無惨な姿になっている。

リシアはかぶりをふる。


「す、すまない…代わりのポイを…」

「要りませんよ。そもそもこれもお返しするつもりですし。」


そういうとお椀のボールを一つずつ水に返していく。


「もったいないな。」

「あっても困るだけですし。んー、これ、かな。」


リシアは一つをより分けると後を全部ざばっと水に戻す。

手元に残ったのは茶色のスーパーボールだ。


「どうしてそれを?もっと綺麗なのはあったろ?」


リシアは私の目元にそのスーパーボールをかざす。


「お姉さまの目の色だからですよ。」

「そ、そうか。」


リシアは小さな手提げにそれをしまうと、立ち上がる。

私は気恥ずかしくてなかなか立ち上がれなかった。


◆ ◇ ◆ ◇


「いっぱい買ったものだな。」

「ちょっと買いすぎちゃいましたね。」


一通り縁日を楽しんだ後は、いろんな料理を買って楽しむことにした。

リシアがあれも食べたい、これも食べたいと言って買っては私に持たせて、手一杯に料理が積み上げられている。

けっして私が大食らいと言うわけではない。


「あそこ、座りながら料理広げられそうなベンチがありますよ!」

「そこで食べようか。」


リシアは私の手から一つずつ料理を取っては置き、並べた後横に座る。

私は逆側に座り、二人料理を楽しむ。

何から食べようか、唐揚げ、フライドポテト、焼きそば、大阪焼き…


「大阪焼き、私見たことなかったんですよね。ローカルな食べ物ですか?」

「ローカルだったとて、ここが地元の私に聞くか?」

「お姉さまならなんでも知ってるかなって。」

「好きだな、それ。」


リシアはたこ焼きを一つつまようじで摘まむと少しかじる。


「んー!わかってますね。外も中もとろっとろです。」 

「たこ焼きは外はぱりっと中はふわっとでは?」

「私、そう言う人とは分かり合えません。たこ焼きはべちょべちょが一番ですもん。ほら、お姉さま食べてみてくださいよ、美味しいですから。」


リシアは私の口元にたこ焼きを持ってくる。

私はその圧に思わず口を開ける。


「あっつ!熱い!」

「ふふふふふ、そりゃそうですよね。はい、お姉さま?」


リシアは先ほど私に飲めと買ったビールを差し出す。

そのオレンジと白の縦縞の紙コップを受け取ろうとするが、手を離さない。


「私手づから飲ませますから、ほらお口を開けて?」


どうしてそうなる、とは思ったものの熱くてそれどころではなかった私は差し出されたコップの先を咥えると、リシアが徐々に冷たいビールを流し込む。


「ふふふ、子供みたいで可愛らしいですね?」

「んっ…私で遊んでいるな?」


リシアを軽く睨むと、また愉快そうにケラケラと笑うのだった。




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