表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部三章 恋とは
201/321

ネットカフェ初挑戦 その2

前話の展開が微妙に違和感があったので後に修正します。

だって、スーパー銭湯で漫画読んでますもんね、この子等。

「なぁ、リシア、機嫌直してくれよ。」

「私は別に怒ってなどいませんよ?」

「この私のソフトクリームをやるから。ほら、すごく綺麗に巻けてるだろ?」

「食べたければ自分で取ってきますよ、たちばなさん。」

「せ、せめて名前で呼んでくれないか?リシアにそう呼ばれるのはなんだか、悲しい。」

「はぁ、なら最初から怒らせないでくださいよ、お姉さま。」


橘さんと呼んだ時の麗香さんがあまりに悲しい顔をするので、さすがの私も矛を収める。

実は、今の今まで麗香さんの名字を知らなかったのだ。

モデルでは麗香で活動しているし、私自身その縁からの仲なのでずっと麗香さんと呼んでいた。

これといって聞くような機会も無かったこともあり、今日免許証を出しているのを見て初めて知った。


「別に己の名字は嫌いではないし、むしろ私を育ててくれた施設の名前なんだ。誇りに思っているくらいだけど、それでもリシアにはやはり名前かあだ名で呼んでもらえる方が嬉しい。」

「はぁ。で、ソフトクリーム速く離してもらえませんか?」

「結局取るのか!?」

「当たり前でしょう。許したんだから。」


麗香さんが手放しがたいといった顔でこちらを見る。

私はそれを無視して腕から奪い取る。

あら、案外美味しい。


「これ、結構美味しいですよ、お姉さま。」

「本当か?一口くれ。」

「いや、自分で新しく作り直して来たらいいじゃないですか…。」


麗香さんは肩を落とすとトボトボとソフトクリームを作りに向かった。

何故これにこだわるのか。麗香さんの思考はたまにわからない。


◆ ◇ ◆ ◇


カップルシートはその名の通り、二人が並んで座る分には充分な広さだ。

フラットシートという分類を選んだので、横にもなれる。

もっとも、横の誰かさんは身体が大きいので横になると随分狭そうなのだが。


「これ、結構面白いな?映画のシーンは何巻くらいになるんだ?」

「20巻前後じゃなかったかと。」

「かなりあるなあ。買ってしまおうか。いでっ」


五巻くらいを読んだところで疲れたのか、伸びをした麗香さんはそのまま頭をゴツンと後ろの壁にぶつけてしまう。


「身体が大きいとそういう時損ですね。」

「リシアは何なら横になっても綺麗に収まるものな。」


完全に腹ばいになって別のマンガを読んでいた私を見てそう答える。

へへん、小さいのも良いだろう。


「疲れた。ちょっと休憩。」


そう言って麗香さんも横になる。が、ちょっと足を曲げて窮屈そうだ。


「足曲げてこっちに寄せてくれて良いですよ。狭いでしょう?」

「助かる。ありがとう。」


麗香さんはこれ幸いとばかりに足を寄せてくる。

寄せてくる、というかもはやガッツリ足を絡めてくる。

そこまでしていいとは誰も言っては居ないのだが、どうせ屁理屈をこねるのはわかりきっており、面倒くさいのでそのままにしておく。

だが、さすがに先ほどから私の横顔に注がれる視線は看過出来ない。


「…あの、なにしてるんですか?」

「休憩だが?」

「さすがに鬱陶しいんですが。」

「横向きに寝たらそうなるだろう。」

「なら壁側を向かれたら良いかと。」 

「それはさすがに寂しいじゃないか。」

「お姉さまだって、こうやってやられたら居心地悪いでしょう?」


私は麗香さんの方に向き直り、目をじっと見つめる。

だが、麗香さんは一切たじろぐことなく、むしろとても穏やかな目でこちらを見つめ返す。

私も負けじとジッと見つめ返すが、さすがに照れくさすぎて耐えれない。


「もう良いです。私が壁を向きます。」


私は壁の方を向いて漫画を読み続ける。

麗香さんがクスりと笑うが、相手にしない。

私は漫画を読むんだ。集中、集中。

が、そのあたりで隣の部屋から声が漏れ聞こえてくることに気がつく。

…お互いの声を、呼んでる?

だんだんと声は大きくなり、少しずつ揺れが伝わってくる。

そのあたりで私もさすがになにが起こってるのか察する。

なんというか…もはや、怖い。

混乱と恐怖で己の身が堅くなるのが解る。

早く、早く終わってくれ。

その場で小さくなって待っていると、後ろから突如手が身体に触れる。

びっくりして思いっきり身体がはねる。

嫌だ。怖い。

私ははねつけようとするが、身体が動かない。

が、そのまま頭を一撫でするのがわかり、少し緊張が緩む。

そうだ、麗香さんだ。


「今から店員さんに言って対処して貰うから。それまで耳、塞げる?」


私がそのままこくりとうなずくと、もう一度麗香さんは頭を優しく撫でた後、出て行く音がした。


◆ ◇ ◆ ◇


「いや、リシアが居るから面倒ごとは避けようと無視していたのだが…怖い思いをさせたみたいだ。すまない。」

「いえ、私が少し過敏だったんだと思います。」


麗香さんはあの後すぐに店員さんを呼んで来ると、隣の二人はそのまま出禁になったみたいだ。


「店員さんが食事無料のクーポンをお詫びにくれたから、一緒に食べよう!このトルコライスとか美味しそうじゃないか?」

「さすがに今は重たいですね…ほかにないかな。」


私はPCでメニューを見る麗香さんの肩に寄りかかる。

麗香さんは何も言わない。

ただ、この人の肩が今は一番安心できた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ