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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部三章 恋とは
198/321

妄想

「はぁ~…疲れたぁ…。」


テスト最終日。

私は最後の科目を終えて疲労感と開放感に包まれる。


『テスト、終わりましたよ』


と一つ麗香さんにメッセージを入れておく。

恐らく今日は忙しいと思う。昨日の晩そんなことを言っていたので本当に報告程度だ。

とりあえず私はテスト明けを堪能しよう。


◆ ◇ ◆ ◇


某所・オタク街。


やはり休息には自分の好きな作品に触れるのが一番だ。

色んな作品のグッズを見ながら癒されていく。

端から端まで全部買い切ってしまいたいくらいだ。

もちろん、そんなお金はないのだけど。


「買い物こそ生きがいだなぁ。」


親元で住んでいたときは物欲なんてなかった。

言えばある程度買ってもらえただろうが、特に言うこともなかったのは親へのささやかな反抗だろうか。

とはいえ、誰かと遊びに行くというわけでもなく、日がな一日勉強か読書といった生活だった。

何かを欲しいと思う方が難しいくらいだろう。


うちの家は京都でも代の浅い、いわゆる「ええとこ」だった。

まだ代が浅い分、よそ者として見られることもある両親は常に体面を気にしていた。

だからこそ私も常に「ええとこのお嬢さん」であることを求められたし、華道や茶道、礼儀作法や料理と言った基本的なことはそこそこ躾られた。

もっとも、毛ほどの興味もなかった私はほとんど身につかず、最後の方は両親はお淑やかにしていれば何も言わないといった感じだったのだが。


そんな私だが、今では密かな楽しみだったアニメと漫画趣味を全面に出しグッズを買いあさって居るのだから人は変わるものだ。


「あれは!?」


店内をうろうろ闊歩していると見過ごせない物体を目の端に捉え思わず駆け寄る。

素晴らしい素晴らしい素晴らしい。私は慌ててそれを手に取る。


「ふぁぁ…」


私が見つけたのは一冊の同人小説。

ゲーム「剣戟の先に」のレベッカを扱ったものだ。

そこに目をつけるとは素晴らしい、天才の所業だ。

私は早速ページを開き読み進めてゆく。

なるほど、内容はレベッカがエドワードルートの最後の決闘に負けるも生き残り平民として暮らすというものらしい。

シーンは今まで貴族として暮らしてきたせいで平民の暮らし方がわからないレベッカが知識不足から揉め事を引き起こし、そこを平民の男性から助けられるところから始まる。


『心配してもらわずとも、あの程度私ならなんとでもなった。…だが、助けてもらったことは礼を言おう。』


違う。麗香さんはそんなことを言わない。

麗香さんなら…


『ふふ、リシアはさすがだな。ありがとう。お礼に撫でても良いかな?』


こうだ。


…どうして私はレベッカのストーリーを麗香さんで考えているんだ。

私は考えるのをやめさらに読み進めていく。

今度は平民男性が近くに来ているサーカスに誘うシーンだ。


『サーカス?そんなものに興味はない。』


いや、麗香さんはそうじゃないんだって。

麗香さんでしょ?


『見ろ!リシア!サーカスらしいぞ!?一緒に見に行こう!』


…こうだな。

すぐに私はまた麗香さんを基準に考えてることに気がつく。

あの人の面がレベッカに似ているのが悪い。

性格は全く似ていないくせに。

私は麗香さんを頭の中で呪いながら、さらに進める。

レベッカと並んで話していた平民男性は、レベッカとの会話に気を取られて馬車に気がつかない。レベッカは身の危険も顧みず彼を助ける。


『危ないっ!…怪我をしたらどうする!?』


…麗香さんだな。

まさしく麗香さんだ。

私が車に引かれそうになったら彼女はきっと。

どうしてもっと自分を大切にしないのか。

後で文句言ってやる。

さらにシーンは進んでレベッカが己の気持ちに気がつくシーン。


『…私は、お前を…』


頭の中で麗香さんが顔を赤らめながらそう呟くシーンが再生される。

野郎、許さない。

麗香さんは私の一番の友人だ。横取りなどさせない。


『リシアのことに決まっているだろ?私はリシアのことが大好きだ。…抱きしめても良いか?』


ダメです。叩きますよ?

しかし、本当に麗香さんは私のことが好きですね。

そうして小説は佳境。

ついに二人は結ばれることに。


『あまり女に恥をかかせるものじゃないぞ?…ほら。』


麗 香 さ ん!

ちょっと正座しましょうか!あなた!

何考えてんですか!許しませんよ!!


『そうだな。私にはやはりリシアしかいない。…愛してるよリシア。』


ちょっと、麗香さん私は友達で…友達で。

この気持ちは、友情と呼んでいいのだろうか。


「あの、長時間の立ち読みはご遠慮いただけますか。」

「は、ははい!?すいません!!」


私は後ろから店員に話しかけられ飛び上がる。

慌てて本を閉じる。

やはり、こんなの麗香さんじゃない。いや、レベッカじゃない。

私はそう思い本を置く。

……いや、さすがにこれだけ立ち読みして買わず帰りますはダメだよね!これは買って帰るのがマナーだよね!

私は本を取ってレジへ向かった。




◆ ◇ ◆ ◇


深夜。恒例となった通話。


『リシア、怒ってるのか?』

『怒ってませんが。』

『怒ってるじゃないか。』

『怒ってないですってば!お姉さま、正座!!紳士淑女の立ち居振る舞いを教えて差し上げます!!』

『えぇ…』




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