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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第二章 知る
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おうちデートその3

「さて、お米を火にかけます!この時水が沸騰したら弱火に落とすので気を付けましょう!」 「沸騰してるか解らなくないか?」

「確かにこのお鍋だと解りづらいですね…赤子泣いても蓋取るな、とは言いますがこう言うときは素直に開けて確認したらいいんですよ、あちっ」


鍋蓋を濡れ布巾で掴んで開けたものの、蒸気が吹き出し想像以上に熱かった。

咄嗟に手を自分の耳たぶへやる。


「…?」


横を見やると、お姉さまも不思議そうに自分の耳たぶをぷにぷにしている。何あれ可愛い。


「あーその、耳たぶは冷たいところですから、熱いものを触ったときに冷やすために触るもので、料理には関係ないんですよ。」

「なるほど、そういうことか。確かに耳たぶはかなり冷たいな。」

「とは言ってもそこまでかと…お姉さまの耳たぶ冷たっ」


お姉さまが屈んで触らせてくれた耳たぶはびっくりするくらい冷たい。

冷たくてぷにぷにした感覚が気持ち良くてついぷにぷにぷにぷにぷに…


「そこまで熱心に触られると…むずがゆいような…ああっ…」


普段のお姉さまからは想像できないような嬌声が響く。

慌てて離したものの遅く、お姉さまは耳まで真っ赤になっている。

いや耳たぶが赤いのは触りすぎか?


「ご、ごほん。えっと、どうやら沸騰してるみたいなので、ここから15分掛けて炊いた後蒸らしが10分でお米は完成です。はい。」

「そ、そうなのだな。米を炊くのは、そこそこ掛かるのか。」

「え、ええ。なので、その、少しそちらの椅子でお茶でも!」


何だか少し気まずい雰囲気のままお茶に入る。

今は何となく、お姉さまとの距離が気恥ずかしい。


「…しかし、毎日これをやっているのか?」

「え?ああ、いやお弁当の時はもう少し手を抜いてますよー?今回はしっかり1からやってますけど。昨晩の料理の余りとかも料理人にちょっと分けてもらってたりしますし。」

「それにしてもだな。毎日ここまでしてもらって申し訳ない気がしてな…」

「私もお姉さまと二人のお弁当楽しみにしてるから良いんですよ別に。まぁもう少し献立考えるの手伝ってくれると嬉しいですけどぉ?」

「うむ、そうだな。何とか善処しよう。」


お茶をしながら、少しずつ気も紛れていく。


「さて!しっかりお米の水分も飛んでるみたいなので、ここからは蒸らしです!その間にほかの食材を用意していきましょう!」

「後は何を使うんだ?」

「まずはこの玉ねぎをこうやってみじん切りにするんですが…ぐすん」

「ど、どうした、リシア?」


玉ねぎを刻んで出てきた涙をお姉さまが指で拭ってくれる。


「お姉さま、刃物は扱いがあると思うのでやってみてください。やればわかります。」

「そういうものか?」


さすが剣術を嗜むだけあって、観察眼や取り扱い方はしっかりしている。包丁の持ち方も悪くないし、手も丸めて危なげなく刻み始める。


「こ、これは…ぐすっ」

「ね、わかるでしょう?」


お姉さまの涙を拭おうと一生懸命手を伸ばす。届かないんだこれが。

苦戦していたらやりたいことが解ったのか、少し体をこちらに傾けてくれたので、涙を拭っていく。

こうして交代しながら涙もお互い拭い合いながら玉ねぎを刻んだ。


「そして後は鶏肉を切ったら玉ねぎと一緒に炒めていきます。その間にお姉さまは卵を割って溶いてもらおうかな。」

「卵はどうやって割れば…」

「ああそうですね。とりあえずそこの角で卵を軽くぶつけてヒビを入れてください。」

「こ、こうか?」


そう言って卵を調理台の角にぶつけた瞬間、ヒビどころか跡形もなく破裂する。

忘れてた、この人ゴリラだった。

笑ってはいけないとこらえながら、慌てて破裂した卵の残骸を片付けていく。


「すまない…」

「初めてですから気にすることないですよ。そうですね…ドアをノックするくらいの力で叩いてみてください。いいですね、もう少しだけ強く…よしヒビが入りましたね。では、両手で持ってそのヒビに両親指を立てるようにして…少しお手をお借りしても?」

「ああ、構わない。」


卵を持つお姉さまの両手に重ねるように手を添える。


「はい、行きますよー。そっと両側から引っ張るようにー、ぱかーっ。」

「お、おお!上手く割れたぞ!」

「ええ、上手ですね!では後三つお願い出来ますか?」

「任せておけ!」


楽しそうに卵をせっせせっせと割っている姿は非常に無邪気で可愛らしい。

このワンシーンだけでも料理教室をやって良かったように思える。


「ではそれに牛乳を加えて溶いてもらいましょう。箸の先で卵黄を二つに割るように混ぜると良いですよ。はい、そうですね。」

「これも中々楽しいな?」

「それは何よりです。ではしっかり滑らかになるまで頑張ってもらいましょう。」


お姉さまが卵と遊んでいる間にしっかりと炒め物を済ませていく。

玉ねぎもいい感じの飴色に仕上がった。渾身の出来だ。


「お姉さま、お米を取っていただけますか?」

「ああ。おお、何だか美味しそうだ。」


お米も大変よく炊けている。土鍋で炊くというのはほとんど経験がないので不安だったが、問題がなくて良かった。


「ではこのお米を炒め物に加えて、ケチャップをどーんと。私は多めに入れて多少べちゃっとした方が好きなのでこれくらいですかね。」

「うむ、リシアの好みに合わせてくれ。」

「炒め終わったら、二つに分けて丸い器に詰めておきましょう。」

「このままでも食べれそうだが…」

「もう、後少しですから待っててくださいな。でも折角ですから、ちょっとお味見お願いします。はい、あーん。」

「んん、すごく美味しい!米と鶏肉の食感が良いし、ケチャップが甘くて美味しいな!」

「ふふ、良かったです。では次は一番大事な外の卵です。気合い入れますよー!」

「おー!」


「まずはフライパンをしっかり熱します。そこからバターを落として…弱火にしたら、卵を入れる!ムラなく焼けるように端を中心に寄せるように混ぜる!混ぜる!混ぜる!」

「手の動きが速い…」

「焼き始め10秒が勝負ですからね!よし、一枚目焼けました。そこに丸い器に入れたお米をひっくり返して、卵を被せるように折りたたみます。」

「私の知っているオムライスになってきた…!」

「ここで綺麗に包むコツがあります。」

「きっとすごい華麗な箸捌きなのだろうな…」

「厚手のキッチンペーパーで掴んで手で整形して包めば綺麗に。」

「ただの力業だった…」

「ではお姉さまは私の分の卵を焼いてもらいましょうか。」

「なんと、私もやるのか?」

「もちろんです。」


「びりびりになってしまった…」

「初心者ならこんなもんでしょう。ちょっと形を整えて…よし、では最後にケチャップで文字を書けばお終いです!」

「文字?」

「絵でも良いですが、相手に伝えたいことを端的に書いて出すのがオムライスの作法ってやつです。」

「知らなかった…」

「私もお姉さまに向けて書きますからね。」

「ああ。」


さて、何が書かれて出てくるのか。楽しみだ。

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