二人の形 その3
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メダルゲームという物はいいな。
ちゃりん。ちゃりん。
メダルを入れて埋まったスペース分、前のメダルが押し出され落ちてくる。
色々なメダル増加方法が有り、ジャックポットは遠いが毎回手が届きそうな雰囲気にわくわくさせられる。
そして何よりそうしてメダルの動きを眺める間、他のことを考えずに済む--のだが。
「…麗香さん、楽しいですか?」
「楽しいですよ?」
「麗香さんもされないんですか?」
「うーん、私は見てる方が楽しいので。」
見るとはいうが、見ているのはゲームではない。
その視線は大体私に注がれている気がする。
「そういうならせめてゲームを見てくださいよ…。」
「さっき私がダンスゲームしていたときは私をじっと見ていたじゃないですか。」
「あれはそういうものでしょ!!」
メダルゲームをしている最中じっと横に座って私の顔を見つめるのとはモノが違うのだ。
「ダメか?」
「ダメではないですけど…後こういう時だけそういう話し方するのズルいです…。」
麗香さんが素の話し方をすると、一気に雰囲気がレベッカ様ぽくなるのだ。
レベッカ様に言われると、断れるはずがない。
「ふふ、別に無理して話し方を変えてる訳ではないんですけどね。どちらも素といえば素です。」
「じゃあやっぱり元の話し方で…。」
「嫌だ。こうやって話すと□□が可愛いからな。」
どうやら私は麗香さんにおもちゃをあげてしまったらしい。
「はー…麗香さんって、実は性格悪いですよね。」
「性格が悪いのは□□にだけじゃないか?」
「おい認めるな認めるな。」
ツッコミを入れると麗香さんは愉快そうに笑う。
こういうのも、ちょっと楽しい。
「さて、鬱陶しいのが横で見つめてくるので他のところに行きましょうか。」
「この増やしたメダルはどうするんだ?」
「どうやら貯めておけるそうなのでそうしようかと。なのでまた連れてきて下さい。」
「ああ、もちろん!」
私たちはメダルをフロントに預けると、またうろうろと歩き始める。
遠くの方にビリヤード台が見える。
「ビリヤードもあるんですね。」
「ダーツもあるらしい。ちなみに私はどちらも得意だぞ?」
「ボウリングは得意なんですか?」
「カラオケもあるそうだ。色々あるな。」
「ねぇ麗香さん。ボウリングは?」
「そうだ、喉は渇いてないか?あちらに飲食店が…」
「ボ ウ リ ン グ は ?」
「…考えても見てくれ、転がすより投げつけた方が早いと思わないか?」
「普通の人はそもそもあの球をあの距離投げるだけの力がないんですよ。前々から思ってたんですが、どれだけ怪力なんです?」
「□□なら二人くらい持てる気がする。」
「化け物ですか…。」
成人男性でもなかなか難しい重さだ。
「生来力が強い方なのだが、今も暇を見て弛むことなく鍛えるようにしている。」
「それでそのプロポーションを。体も柔らかいですよね?」
「バランス感覚が人より優れているのは確かだな。ほら。」
「うわ、こんな所でI字バランスしないでくださいって。」
足を上げてI字バランスを始めた麗香さんを冷静にひっぱたく。
この人は目立ちたがり屋か何かか。
「せっかくならビリヤードかダーツ、教えて下さいよ。」
「どっちが良いかな?」
「麗香さんの得意な方で。」
「んん…悩ましい…。」
この後、両方を少しずつ教わるのだが、どちらも真剣な顔で実演してみせる麗香さんが絵になりすぎて困ったのは言うまでもない。