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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部二章 友達
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二人の形 その2

平均相場だという額を入れた頃、景品をしっかり掴んだクレーンはそのまま離すことなく獲得口に景品を落とす。

別にそこまで粘らなくても大丈夫、とやんわり私は麗香さんを止めたが、結局最後まで粘ってしまった。

取ったぬいぐるみを麗香さんは私に差し出す。


「これ、どうぞ。」 


その表情はとても気まずそうだ。


「ありがとうございます。」


私としてもどう反応していいかわからなくなる。

難しい。

微妙な沈黙が二人に訪れるが、私は意を決して口を開く。


「あの、麗香さんも実はゲームセンター初めてだったりします?」

「いやぁ…あの…実はそうなんです…。」


麗香さんは消え入りそうな声でそう答える。

全く、この人は。


「もう、それならどうして手慣れたような雰囲気を出して見栄を張るんですか。」

「私がしっかりエスコートしないとと…イメトレはたくさんしたんですけど…。」


まぁ、これは私の責任もある。

麗香さんは大体いつだって答えをくれる。

だから今回も私を導いてくれる、と勝手に思いこんでいたのだ。


「ちょっとそこに座りましょうか。」

 

私は端に置かれた四角い椅子に手をやると、麗香さんは素直に従い座る。

私は横に座ると、深呼吸をする。

何度か深呼吸をしたあと、覚悟を決める。


「あの、麗香さん、私たちって、その…友達…ですよね?」

「はい。」

「私、まだ友達付き合いとか全然わからないんですけど…無理するものじゃないと思うんですよ。」

「ごめんなさい…。」


さらに消え入りそうな声で麗香さんは謝罪する。

違う、そういうことを私はさせたいわけじゃない。


「責めたいわけじゃないんです、ごめんなさい。その、友達なら一緒に初めてを楽しむで良いじゃないですか。別にわからないことを無理してわかったような感じで私を引っ張ってくれなくていいんです。」

「その、私、空間把握が得意なので何とかなるかなって思って。無理してました。ごめんなさい。」

「自信満々に始めて落としまくってるのはちょっと面白かったですけどね?」


麗香さんの顔をのぞき込んで意地悪そうに笑ってやると、麗香さんはちょっと笑って鼻先をツンと指で押してやり返してくる。

そういうので良いのだ。私はそう思う。


「麗香さん、他にも色々取り繕ってますよね?話し方とか、私の名前とか。」

「気づいてたんですか?」


麗香さんはびっくりした顔でこちらを見る。


「バレバレですよ。話し方はたまーに素が出ますし、私の名前はちょっと発音おかしいんですよ。呼びにくいんですかね、□□って。」

「あの、ごめんなさい。私…。」

「良いんですって。名前、言いにくいですか?」

「ええ、ちょっと言いにくいみたいです。」

「でしたら呼びやすいあだ名、何か考えておいてください。話し方も少しずつ素を出してもらって。」

「わかりま…わかった。」

「よし、じゃあ麗香さんがゲームセンターに騙された分、私も騙されてやるとしますか!麗香さん、何か欲しい景品、あります?」


私は麗香さんの手を引いて立ち上がった。


◆ ◇ ◆ ◇


そして今、私は入り口にあった大きな液晶のダンスゲームの後ろで麗香さんを観戦している。

どうやら入った時から興味があったらしく、やってみたいと言い出したのだ。

私は絶対目立つ…と思ったのだが、まぁやりたければやりたいで良いかと思い後ろで見ている。

一緒にやるかと聞かれたがそれは断固拒否した。


麗香さんは流行の曲に合わせて良く踊る。

体が柔らかいのだろう、バランスを崩すことなく難しい振り付けもこなしてみせる。

その様はえもいわれぬ美しさがあり、つい見とれてしまう。


そうして一頻り踊って見せた後、汗を浮かべながらこちらに向かって微笑む。


「どうだろう?上手く踊れていたか?」

「ええ。ではさっさと場所を変えましょうか。」

「何故ですか?」

「やっぱり麗香さん目立つんですよ。」


私は麗香さんの手をひっつかむと、注視していたいくつかのグループから離れるように引きずっていった。



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