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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部二章 友達
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二人の形 その1

「では、また。」

「あの、私、この後暇なんですけど…良ければどこか連れて行ってください。」


バイクに跨がり、ヘルメットをかぶろうとした麗香さんの目が見開かれる。

自分で言い出したことにびっくりする。らしくない。

ただ、なんとなくこのまま帰してしまうのももったいない気がしたのだ。


「もちろん!どこに行きたいですか?」


麗香さんは慌ててバイクから降り、こちらに駆け寄る。


「いや、言い出して何ですけど…麗香さん撮影とかでお忙しいんじゃ…。」

「そんなもの、何とでもなりますよ!私も一緒にどこか行きたいです!」


麗香さんがグイグイくる。失敗だったかな。


「私、あんまりそういったことに詳しくなくて。麗香さんのチョイスで連れて行って貰えればと思うんですが。」

「なるほど。そういうことでしたら私、全力でエスコートさせていただきます!」

「ほどほどにお願いします。」


麗香さんはイキイキとトランクを開けて、中から予備のヘルメットを取り出し手渡す。

これをつけるのは二回目になるが、まだ慣れず手間取っていると、バイクに跨がり背を向け待っていた麗香さんが口を開く。


「もしかして、もう乗られました?□□さんは軽いのでわからないですね。」


一見、褒めているように見えるが煽っている。

だって後ろを見たらわかるのに見ずに聞いているくらいだ。


「ヘルメット投げつけて帰ってやろうかな…。」

「ふふ、ごめんなさい。ちょっと手間取っている□□さんがかわいくて。」


案外、麗香さんは礼儀正しいように見えて意地悪だと最近わかり始めた。

やり返してやるくらいでいいのかもしれない。

私はヘルメットをつけ、後ろに跨がると、麗香さんのヘルメットをぺしりと叩いてみる。

麗香さんはクスりと笑うとバイクを出発させたのだった。


◆ ◇ ◆ ◇


麗香さんのバイクに乗ってたどり着いた先は、大きなボウリングのピンが屋根にそびえ立つ施設だ。


「ボウリング場?」

「いまどきのボウリング場はボウリングだけではないんですよ。」


私たちは入り口に歩を進める。

入り口のガラス戸の向こうからすでにたくさんのゲームの明かりが私たちを迎える。


「なるほど、ゲームセンターですか?」

「ええ、色々ありますがまずゲームセンターが併設されてます。□□さん、《剣戟の先に》をプレイされていたのでゲームお好きかなあと思いまして。」

「確かに、ゲームは好きかもしれません。」


入ってまず目立つところにドンとおかれている大きな液晶。どうやら画面の振り付けにあわせて踊るゲームのようだ。

ここで踊るのは勇気が要るのではないか。

それからズラッと立ち並ぶクレーンゲーム。


「これって、バランスよく掴むだけじゃないんですか?」

「そうでもないんですよね。横にズラして取るとか、取った後ボールにバウンドさせるて落とすとか。」


確かに掴んで運んで落とすだけではなさそうな様相のものがたくさんある。


「あ、この作品知ってる…。」


クレーンゲームの中には見慣れたアニメのぬいぐるみが何種類か入っている。

思っていたより出来がよく、欲しくなる。


「こう言うのって初めてだとやっぱり難しいんですかね?」

「そんなに難しくないですよ?私が見本を見せましょうか?」


麗香さんは自信あり気にクレーンゲームに進み出ると、手慣れた雰囲気でお金を入れ、三本爪のクレーンを操る。

クレーンは狙った景品のちょうど上といったところに止まり、三本の爪でしっかりと景品を掴んでみせる。


「こんな感じです!」


そういって麗香さんはこちらに振り向くが、その瞬間後ろで景品が爪からぽとりと滑り落ちる。


「あ、あれ、つかみ所が悪かったかな…?もう一度…。」


今度も爪はしっかりと景品を掴んでみせるが、先ほどと同様にスルリと爪から滑り落ちる。


「あはははは…ちょっと調子が悪いみたいで…」


麗香さんは苦笑いをしながらお金を入れて粘る。

一向に取れる気配が無く、また見ていて落ち方に違和感のあった私はスマホを取り出し機械の名前で検索をかける。


「麗香さん。」

「はい、なんでしょう?」


クレーンゲームに躍起になっていた麗香さんだが、声をかけると素直にこちらに顔を向ける。


「これ、決まった金額が入るまで取れないらしいですよ。」

「え、そうなんですか?」


私は後にも先にもあれほど間の抜けた麗香さんの顔を見たことがなかった。









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