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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部二章 友達
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何でもない一日 その1

あれから二週間。抜糸も済んでようやくいつもの生活といったところだ。

麗香さんには良く気にかけてくれていて、撮影が立て込んでいて忙しいはずなのに調子をしきりに聞いてくる。

そろそろ気にかけてもらわなくとも大丈夫と言えそうだな。

そんなことを思っていたさなか、ちょうど麗香さんからメッセージが来たようだ。


『こんにちは。今どうされていますか?』

『今ですか?大学にいますよ。』

『ちょうど良かった!五分後に正門前にお伺いするのでランチでもどうですか?』


五分後、うちの大学に?

急な話だな。

しかし今日は午前のコマで終わりで帰ろうと思っていたところだ。

了承して正門前まで歩いていく。

ちょうど五分後にはつくだろう。


◆ ◇ ◆ ◇  


そうして正門前にたどり着くと、遠目でもわかるド派手なバイクにスタイルの良い美人が立っている。

…あれだなぁ。

ただでさえ人の多いところだ、アレに会いに行くには勇気がいるな。

どうしたものかと眺めていると、こちらに気がついたようで麗香さんは大きくこちらに向かって手を振る。

私は諦めて向かう。


「突然押し掛けてごめんなさい!」 

「いえ、暇でしたから。しかしバイクで来られたんですね?」

「そうなんですよ。□□さん、バイク止められるところ知りませんか?」

「ああそれでしたらあちらにありますね。ご案内しますよ。」


私が駐輪場に向けて歩き出すと麗香さんも横に並ぶ。


「足はもう良いのですか?」

「ええ、おかげさまでもう大丈夫ですよ。」

「良かった。でももしまだ痛む様でしたら手をお貸ししますし、遠慮なく言ってくださいね。」

「人前で麗香さんの腕をお借りするのは勇気が要りますねえ。」

「そうですか?」 

 

麗香さんはこてん、と首を傾げる。

そうです。

ただでさえ美人で目立つのに手を貸してもらいながら歩いたらどうなることやら。

そんなことを思いながら駐輪場へと案内し、止めてもらう。

バイクの中に並べてみてもやはり目立つバイクだな。


「何か目当てのお店はありますか?」

「以前にここの学食におっきいピザがあるって聞いたことがありまして。それを食べてみたいなあと。」

「あー、なんかあるらしいですね…。」


たまにサークルなどで集まってワイワイ食べているところを見る。

なので存在は知っているが、頼んだことはない。

そもそも一人で食べるものでもない。


「そのおっきいピザを一緒に食べましょう。ね?」

「そうしましょうか。」


そういうと麗香さんはうれしそうにニコニコと笑う。

この笑顔にやられる男の人はたくさんいるだろうな。


◆ ◇ ◆ ◇


「先日ご迷惑をおかけしましたし、私が出しますよ。この程度では足りないですけど。」

「そんな、そういうつもりではなかったので…。」

「いいんですいいんです。」


私は麗香さんを押しとどめて学食用の電子マネーをかざして手早く支払いを済ます。

ピザは大きさだけあって結構なお値段だが、お礼の気持ちは収まらないくらいだ。


「ありがとうございます。何だかねだってしまったみたいで…。」

「いえいえ。お礼ですから。それよりどうして急にこちらへ?」

「撮影スタジオがここの近くで。ちょうどお昼前に撮影が終わったところに、□□さんがこちらの大学だと思い出しまして。ご迷惑ではありませんでしたか?」

「そういうことでしたか。私も暇でしたのでちょうど良かったです。」


そうこう話しているとピザが焼き上がり運ばれてくる。

時間がかかると聞いていたが早いものだ。


「すごい…おっきいですね!」

「50cm越えらしいですよ。私一枚でお腹いっぱいになりそう…。」

「ちょっと写真を撮っても良いですか?」

「ええどうぞ。」


私は写真に入り込まないように手をしまう。

麗香さんは写真を数枚撮ると、ピザの上にピースサインを差し出す。


「□□さんも、ピースピース!」

「え、ええ…。」


麗香さんに急かされピースサインをしてピザの上に差し出すと、麗香さんは互いの指をくっつくようにピースを突き合わせ、写真を撮る。


「ご協力ありがとうございます。食べ終わったらSNSにあげようかな。」


大丈夫だろうか。ピースの写真など上げられたら匂わせとやらにならないだろうか。


「ではいただきましょうか!」

「いただきます。」


問題は解決しないまま、麗香さんの勢いままにピザに手を着ける。

しかし、本当に大きいな。二人で食べきれるかな。

私は時間をかけてようやっと一枚を食べきる。もう一枚位ならいけそうだが。

麗香さんはどうだろう。そう思って彼女の方に目をやるとばっちりと目が合う。


「美味しいですね?」

「麗香さん、口元にチーズが張り付いてます。」

「えっ?恥ずかしい…どこだろう…。」 

「もっと右です右。」  


上手く位置が伝わらずまどろっこしい。


「取ってもらえますか…?」

「私がですか…?」


私に向かって口許を寄せる。

顔が近い、何だかドキドキする。 

私はなるべく気にしないようにしながら、チーズを剥がす。


「ありがとうございます!」

「はい…。」


なんだかお腹いっぱいになってしまった。

もう一枚も怪しい気がして来たぞ…。

そう思いながらも私はピザを一枚取った。





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