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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部一章 運命
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コスプレ撮影会

「コスプレ撮影のお仕事を依頼したいのですが。」


我ながら怪しさが半端ない。

場所や時刻、レベッカ・ローエンリンデというキャラのコスプレをしてほしいこと、相場が解らないことなどを記載はしたものの、コスプレ撮影というのがもう怪しい。

ましてや相手はしっかりしたモデルさんだ。スルーされてもおかしくなかった。

でも、麗香さんは丁寧に返事を返してくれる。


「お仕事の依頼ありがとうございます。スケジュールを確認したところ問題なさそうです。依頼料ですが、この金額でいかがでしょうか。」


そうして書かれていたのはおそらくモデルさんを呼ぶにしてはかなり安いのでは?と思える額だった。安い仕事の日当が良いところだ。

提示された額に驚きながらも、それなら是非と私は話を進めていく。 

衣装サイズについてなど、細かなことにもしっかりと相談に乗っていただき、撮影スタジオはこちらの方が良いのではなどといった提案までしてくれる。

私はその人となりに好感を覚え、単純に麗香さんに会えることを楽しみに思うようになった。


◆ ◇ ◆ ◇


「はじめまして、麗香です。本日はよろしくお願いします。」

「あっ、はじめまして。□□です。こちらこそよろしくお願いします。」

「□□、さん?」


少しぽかんとした顔で私の名前を呼ぶ。

そう言えば、メールに私の名前は一切記載していなかった。


「ええ、□□です。そういえばメールで名乗っていませんでしたね。」

「あ、ああ、そうですね。よろしくお願いします。」


何か引っかかることがあっただろうか。気になるものの、とりあえずおいておく。


「今日、着て貰いたい衣装がこちらでして…」

「わっ、スゴいですね?これ、手作りですか?」


麗香さんは目を輝かせて衣装をひとしきり見た後、こちらに笑顔を向ける。

やめて、推しの顔で笑顔を向けられると私が消滅してしまう。顔が良い。

原作に笑顔の差分やスチルがないのがここで補完される。


「はい、拙いかと思いますが…。」

「いやいや、これを手作りってスゴいですよ!」

「あ、ありがとうございます…。」

「では着てきますね。」


そういうと麗香さんは私に手を振った後、衣装を持って更衣室へ向かう。

本当に素敵な人だなと思う。


しばらくすると、彼女が衣装を着てこちらにやってくる。


「お待たせしました!こちらでよろしいですか?」

「あっ…あぁ…」


目の前にレベッカ様がいる。そのことに膝から崩れ落ちそうになる。

色んな言葉が浮かび、消えていく。


「大丈夫ですか!?」


レベッカ様は崩れ落ちそうな私に駆け寄り、心配そうに私の顔をのぞき込む。


「あ、あの…」

「はい。」

「大丈夫か、君?って言って貰っても良いですか…?」

「大丈夫か、君?」

「あぁ…」


私は幸福でいっぱいいっぱいになって、崩れ落ちた。



◆ ◇ ◆ ◇


「ご迷惑をおかけしました…。」

「もう大丈夫なんですか?」

「ええ、撮影をお願いしてもいいですか?」


平静を取り戻した私は、撮影の準備を始める。

原作で出てきた、様々なシーンを想定し、ポーズを撮ってもらう。


「コレって、あのイベントのシーンですか?」

「解るんですか?」


撮った写真をのぞき込みながら、麗香さんはまさしくそのイベントについて話をだす。


「実は、依頼をいただいた後、私もプレイしてみたんですよ。」

「そこまでしていただけたんですか…?」

「私も気になって。主人公のリシアさんが素敵ですね。」


麗香さんは楽しそうにそう語る。その姿はまるで愛おしい物を語るようだ。

しかし、撮影の為に作品までプレイしてくれるとは。


「麗香さんにもハマっていただけたようで良かったです。」

「レベッカがお好きなんですか?」

「そうなんです!キャラのぶれが賛否ありますけど、私はあの凛々しさがとても好きで…。」

「ふふ、ありがとう。」

「えっ?」


礼を言う麗香さんに一瞬ぽかんとなる。

脈絡がわからないのもあるが、その礼を言う姿は、私の思うレベッカ様そのものでなんだか驚いてしまう。


「あー…その、確かに私と見た目が似ているので、なんだか私まで褒められてるようで。」

「なるほど。麗香さんも素敵ですよね。」

「本当ですか?ありがとうございます。□□さんも素敵ですよ。」

「そんな、私なんて全然…。」

「いえ、こんなに素敵じゃないですか。」


麗香さんは私の顔に手を当てると、じっと目を見つめてくる。

いけない、クラッと来そうだ。


「つ、次を撮りましょうか。」

「そうですね。」


そうして私たちは撮影会を続けていった。








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