とある元日 その4
ひさびさの更新のせいか更新予約したつもりが投稿すら出来てませんでした。
長い順番待ちの列も徐々に進んでゆき、何とか境内の石畳の上までたどり着く。
まだ前に充分人が居るが、ゴールが見えているし列も広がりそこまでかからなさそうだ。
「お姉さま、そろそろ離していただいても…?」
敷地内なので、列が前後だけでなく左右にも広がり始めて人混みの様相を醸し出してきた今、さすがにコートに吸い込まれたままは恥ずかしさが勝る。
「えー、でもリシアがくっついてないと寒いのだが?」
「後もう少しですから。」
「リシアは私が凍えてもいいのか?寂しいな…。」
「そんな風に言われると私も嫌だって言えなくなっちゃうじゃないですか…。」
お姉さまにも困ったものだ。
何とか離してもらいたいのだけど…。
「お姉さんたち、姉妹?」
突如隣の男性らしき人がそう話しかけてくる。
ナンパだろうか。お姉さまは美人だからな。
私は警戒心を総動員する。
「ふふ、実は恋人なんだ。」
お姉さまは警戒心の欠片もなく、にこやかに答えると私をギュッと抱き締める。
男の人?は少し驚いた顔をする。
「恋人か!スゴいね!」
何がスゴいのだろうか。女性同士と言うことがか。
少し腹の立つ自分がいる。
「そうだろう?リシアは可愛いからな。」
「リシアさんは本名?」
「いや、変かもしれないが私の好きなキャラに似てたからそうあだ名をな。」
「あだ名か。素敵だね?お姉さんはお名前は?」
「麗香だ。」
「麗香さんか。麗香さんはリシアさんのどこが好きなの?」
「うーん、そうだな。色々あるが、一番は目だろうか。リシアはどちらも目つきがよく似ている。普段は愛情たっぷりの目で見てくれて落ち着くし、情熱的な目で見られるときは体の底まで掴まれて離してもらえなさそうで。リシアのそういう目がとても好きだ。」
「へぇー、そうなんだ。いいねえ。リシアさんは麗香さんのどんなとこが好き?」
お姉さまと談笑する男の人?に苛立ちを覚えていると、唐突に私に話が振られる。
「えっ、わ、私ですか…?」
「そうそう。どんなところが好き?」
「えっと、その。」
返答に困る。どうしたものか。
「すまない、リシアはちょっとシャイなんだ。そんなところもかわいいのだが。」
「そうなんだ。ごめんね?」
お姉さまが守ってくれてほっとする。が、それも束の間。
「リシアは私の腹筋が大好きだな?」
「えっ!?」
「そうなの?」
「隠してはいるが腹筋への執着はすごいぞ?」
「なっ、お、お姉さま!?ちがいますっ!」
「違うのか?リシアが好きだから私も鍛え甲斐があると思っていたのだが。もう鍛えるのやめようかな…。」
「お姉さま私をいじめて楽しんでますね!?」
「気のせいじゃないか?げふっ!」
後ろに向かって肘をたたき込む。
見事にお姉さまの脇腹に入ったようだ。
その瞬間男の人?が腹を抱えて笑い始める。
「あっはっは。何より何より。君たちが幸せで良かったよ。」
「ああ、心配はいらないさ。」
「うんうん。手を回しただけあったよ。」
「感謝している。」
「じゃあまぁ、自分は帰るとするかな。頑張ってね、レベッカ。そして□□。」
そういうと男の人?は立ち去ってゆく。
「えっ、今の人なんで私の本名を…?そしてレベッカって…?」
「ふふ、実は知り合いのいたずらだったんだ。驚かせてすまないな。」
お姉さまはそういってにこりとほほえむ。
私はどこか腑に落ちないまま順番を待ち続けた。
と




