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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
とある年末年始編
150/321

とある元日 その3

日本の有名神社の一覧があるとすれば、その末席には加えられるであろう地元で名の売れた神社。

その境内からはすでに人が溢れ出しており、鳥居を越えた先にも行列が出来ている。

どうやら、入場制限まで行われているようだ。


「これはちょっと舐めてましたね…。」

「多少人手はあるだろうとは思っていたが、これほどとは思わなかったな。」


想像以上の人の数に私たちは面食らいながらも列の最後尾であろうところにたどり着く。


「アトラクションの待ち列みたいですね。」

「霊的なものが集まる場所だ。さしずめゴーストハウスといったところか?」

「それはさすがに神社に失礼では?」


そんな話をしていると、ふと都市伝説を一つ思い出す。


「遊園地に行ったカップルは近いうちに別れる率が高いらしいですよ?」

「以前遊園地に行った私たちは別れていないが?どうしてなんだ?」

「こういった待ち時間に二人きりだとだんだん飽いて来て険悪になるからだそうです。」

「たとえ話すことがなくなっても、リシアを見ているだけで楽しいと思うが。」

「お姉さまは何というか…やばい方に特別なので…」

「そんなものか?」

「そんなものです。」


お姉さまは楽しそうに私の顔をのぞき込み、にっこり笑う。

つんつんと頬をつついてきたので、突き指させるように指先をひっぱたいてやるとお返しとばかりにつんつんの雨が降ってくる。


そうしてそれなりの時間を話したり遊んで待って居た私たちだが、それでもまだ先は長い。

待つのは全然苦痛ではないが、あまり動くわけにも行かずただただ寒い。

なんなら雪もちらつき始める。

お姉さまも平気なフリをしているが、私ですら寒いのだ。内心は凍えているのではないか。


「あっそうだ!」

「どうした?」


私はハンドバッグを漁ると一本の筒を取り出す。

魔法瓶の水筒だ。


「実は白湯を持ってきたんです。一杯どうぞ。」

「これは温まるな…。」

「まだまだありますから、いくらでも言ってください。もし、どうしても寒いならまだ私は余裕があるので私の上着でも…。」

「いや、リシア。さすがにそれはやせ我慢だと私も解るぞ。気持ちだけでも嬉しいがな。…ふふ、しかし思い出すな。」


お姉さまはとても懐かしいものを思い出すように目を細める。

それはとても幸せな思い出のようで。


「…どんな思い出ですか?」

「そのうちな。」


お姉さまは誤魔化すようにそう答える。

何か引っかかるようで気になるが、ぐっと聞くのをこらえる。

変に詮索して嫉妬深いと思われるのも嫌だ。


「しかし、本当に寒いな!こうなったら…こうだ!」

「きゃっ!お姉さま!?」


お姉さまは私を捕まえるように抱き締める。

思わず驚いて声がでる。

その間にもお姉さまは手際よく己のコートの前を開けると、私をコートの中に招き入れ密着するように抱き締める。


「リシアは暖かいな…」

「もう、お姉さま恥ずかしいです!」

「今のリシアは恥ずかしがり屋さんだな?だからといって離してはやらんが。」

「もう…。」


結局私はお姉さまのコートに取り込まれて順番を待つことになったのだった。


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