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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第二章 知る
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衣替え

大変です。

もうすぐ衣替えの時期がやってくる。

学園には制服がないから、みな思い思いの服装でやってくる。

当然お姉さまも夏の装いで学園にやってくるのだが--

その夏服が原作ではすごく似合わない。

冷たいながらも整った顔立ちは寒色系、特に青なんかは間違いなく似合うし、高い身長を生かして目の覚めるような赤は美しさや格好良さを引き立ててくれるはずだ。

パープルは艶やかな黒髪とマッチして大人な雰囲気を演出してくれるはずだし、深いグリーンのタイトなドレスなんかはスリムで美しいお姉さまのスタイルを際立たせてくれるに違いない。

とにかく、お姉さまは可能性の塊だ。

--なのにゲームでは、ふりふりの真っピンクなのだ。


◆ ◇ ◆ ◇


「もうすぐ衣替えの季節ですね?」

「そうか。もうそんな季節か…」

「まだ夏服を選ばれていないなら一緒に選びたいなと思っているのですが、如何ですか?」

「それはいいな。リシアなら何でも似合いそうで楽しみだ。」 

「お姉さまこそ、たくさん似合うものがありそうですね!」


とりあえず第一段階はクリア。

後はふりふりのピンクのドレスだけは選ばないように…


◆ ◇ ◆ ◇


「このピンクの可愛らしいドレスは…」

「お待ちください。お姉さま。」

「リシアに似合うのではないか?」 

「えっ、あっ、なるほどー?」

「うん、やはり似合いそうだ。良ければ着てみてくれないか?」

「もちろんです!」


ヤバい。楽しい。

現実でも仕事が忙しくてなかなかこういう機会はなかったからなあ…


「ど、どうでしょうか…?」

「良い、良いな。リシアの可愛さが全面に引き立てられている。」

「えへへ…」


推しに服を選んで貰った上に褒めて貰えるとか前世で私はどんな徳を…あれ前世って現実の私になるのか?


「うーむ、この黄色のドレスも着てみないか?これも似合いそうだ。」

「はい!少しお待ちくださいね!」


「これも素晴らしいな…。明るい雰囲気に黄色がよく合っている。」

「そうですね、これも良いなあ。」

「この淡い青のボールガウンはどうだろう。優しい雰囲気にマッチすると思うんだ。」

「あっ、はい!」


「ちょっと派手だがこのオレンジのティーレングスはどうだ?元気で良いかもしれない。」

「は、はい…!」


「やはり素朴に緑と白のAラインか?元が良いからな。」

「えっと、その…」


「次は…」

「お待ちください!もう、私ばかりではありませんか。」

「いや、すまない。何でも似合うものだから楽しくてな。中々こういう機会もないし。」

「わかりますけど…私だってお姉さまの服を選びたいんですからね!」

「そうだな、次はおとなしく選ばれるとしよう。その前に。ここからここまで、全部貰えるか?支払いはローエンリンデ公爵家で送り先はエヴァンス子爵家に。」

「そんな、こんなにたくさんは申し訳ないです。」

「良いんだ。可愛い妹にこれくらいはさせてくれ。あんまり買うとエヴァンス子爵夫人に私の選ぶ服がなくなる、と怒られないかだけが不安だがな?」

「お母さまも私の服を選ぶの好きですからね。…では、私のお小遣いで全部は難しいですけど、私にもお姉さまの服を買わせてください!」

「良いのか?私は幸せ者だな。」


推しが、お姉さまが、私が選んで買った服を着てくれる。これはもう全力で臨むしかないですね!


◆ ◇ ◆ ◇


「とは言ったものの、中々試着出来るものがありませんね。」

「一般的な背の高さではないからな。どうしてもオーダーメイドになってしまう。男性用ならあるだろうが…」


男装。そういうのもあるのか。男装。

控えめに言って最高ではないだろうか。


「あの!この店に男性用の服はありますか!?」

「それでしたら向こうの方に少々…」

「ありがとうございます!!」

「お、おいリシア?」



「…どうだろうか?」 


白のシャツにシックな黒に白縁のジャケット、えんじ色のショートパンツに足下には黒のロングブーツ。ベルトは太めで十字のデザインのバックルがあしらわれている。活発ボーイッシュながら上品でスマートな仕上がり。

これは…


「さいっこうです!」

「ちょっと目が怖いんだが…」

「いやいやもう、最高ですよお姉さま!お姉さまがするためだけに生まれてきたような服装です!」

「男性用となると複雑な心境なのだが…」

「あ、ごめんなさい。つい気分が上がってしまって…」

「もし私が男なら、この格好をすればリシアを落とせたかな?」


そう言ったかと思うとお姉さまは私の顎に手をかけ持ち上げて…顔が近い近い近い!

最高の推しが最高のポーズで…


「おっおいリシア!?リシア!!」


そこからしばらくの記憶はない。


◆ ◇ ◆ ◇


「まさか倒れてしまうとは思わなかったぞ…」

「当然です!あんなもの心臓に悪すぎます!」

「まぁ機会があれば、また披露することもあるかもしれないな?」


私が気を失っている間にこっそり買っていたらしい。

次見るときが私の死期だと思う。


「しかし今日はいっぱい着ましたね…お姉さまに似合うドレスも探せて良かったです。」

「お互い良い買い物が出来て良かった。買ってくれた服、もったいなさすぎて着れる自信がないな…」

「服は着るものですから。着てくださいね?」

「善処しよう。」


お姉さまの着た上着を後生大事に保管してる奴が言うセリフではない?耳が痛い。


「あっ、最後に最初の店に戻って良いですか?買いたいものがあるんです。」


そう言って立ち寄った先で手に取ったものは、ピンクのふりふりドレス。


「すいません、このデザインでお姉さまの体型に合うように仕立ててもらいたいのですが。」

「それは可愛すぎて私には似合わないと思うぞ…」

「でも、好きなんですよね。着たいんですよね?」

「どうしてそれを…」

「可愛らしい服によく目がいってましたから。最初に取った服も実は自身が着たかったのではと。」


原作で着てたってのもあるけど。


「でも本当に似合わないんだ…背も高いし可愛いが合う顔じゃないのもわかっている。」

「関係ありませんよ。お姉さまが着たい服を着ているときが一番だって、わかりましたから。」

「そうだろうか…」

「よければ、次はその服に合うようなヘアスタイルや小物を探しましょう!今日買ったロングブーツも合うと思うんです。」

「…うん、そうだな。」

「そしてお姉さまがそのドレスで一番可愛い私になったら、それで町を歩きましょう!この可愛いのが私のお姉さまだーって、自慢しに。」

「ふふ、そのためにはリシアにもいっぱい服を試着してもらわないとな?一番可愛い私の妹になるために。」

「あんなに山ほど着させられたのにまだ着せられるんですか…」

「当然だ!リシアは可能性の塊だからな!」


結果的にピンクのふりふりドレスを買うことになったけど、それが一番良かったのかもしれない。

可愛いものが着たいお姉さま、最高に可愛いです!


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