二人の日常 その1
朝、目覚める。
目を開けると、そこにはお姉さまの綺麗な顔がある。
大抵私が少し早く目覚めて、お姉さまの顔を見ながら使用人さんが起こしに来るのを待つ。
睫毛、長いなあ。今度指でぴんと弾いてみようかしら。
寝ているお姉さまが私を抱きしめる力の強さに、身じろぎ一つ出来ない私はそんなことを思う。
◆ ◇ ◆ ◇
「それじゃあ、座ってくださいお姉さま。」
「ん。」
使用人さんに朝を告げられた私たちは身支度を始める。
だいたいの身支度は使用人さんに任せるが、お姉さまの髪を整えるのだけは私がやると決めている。
起きたまま無造作にベッドの上にあぐらをかいて座るお姉さまの後ろに座り、髪を梳き始める。
「今日はどんな髪型にしましょうかねえ。」
「んー。」
まだ半分寝ているお姉さまに半ば独り言の様に話しかけながら髪を整えてゆく。
長く綺麗な黒髪なので、いじり甲斐があって楽しい。
しかも前髪でちょんまげを作ったりしてもされるがままなので可愛らしい。
たぶん、今日は動くだろうからシニヨンにしておこうかな。
「お姉さま、もう良いですよ。」
「うん。」
髪いじりから解放されたお姉さまは私に抱きついたかと思うと、そのまま再び眠りの世界に落ちようとしていく。
「はい、起きてくださいね?」
「んー。」
私はお姉さまを無理やり起こしながら朝の支度を始めた。
◆ ◇ ◆ ◇
朝食。
大抵は爽やかにトーストをいただく。
今日の朝食もトーストだ。
貴族の広い食卓テーブルの端に二組、もうすでに用意されている。
「「いただきます。」」
急ぎの用事がないときは、こうして二人並んで食事をとるという風に決めている。
もっとも、急いでいてもお姉さまは私と食事を取りたがるのだが。
「今日は午前中には公務が終わると思う。」
「だと思いました。午後から空けておけばよろしいですか?」
「ああ。また鍛錬に付き合ってくれるか?」
「はい。それでは午後からは空けておきますね。」
「お昼はオムライスが食べたいなあ。」
「はいはい、わかりました。」
二人の一日のスケジュールのすり合わせをここで行う。
最近は何となくお姉さまのスケジュールも想像がつくようになったのだが。
「じゃあ、公務頑張ってくる。リシアも頑張ってな。」
「ええ。頑張ってきてください。」
朝食を終えた私たちはお互いを労い、それぞれの仕事のため別れる。
これも定番となった離れる前の長い口づけは、今日はイチゴジャムの味だった。




