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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第一章 そして姉妹になる
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そして姉妹になる

「お姉さまが、学園一年目…?」

「ああそうだ。去年は色々あって通えてなくてな…」


ゲームではリシアが入学する年から始まるから、その前の年のことなんて全く知らなかったし、語られることもなかった。

しかし、言われてみると思い当たる節はたくさんある。

まず、エドワードが学園の生徒に皇子殿下と呼ばせていないことを知らなかったこと。それからお花見も寒いかもしれない、とは言っていたが補足したのはエドワードだった。初めて会ったときも、確かエドワードはお姉さまに戻ってきたんだね。と声をかけていたはずだ。

待てよ。皇子殿下と呼ばせていないことを知らなかったと言うことは。

偶然私はお姉さまと入学段階で出会い会話しているが、原作ではリシアに呼び方を指摘した段階では、お姉さまはリシアともエドワードともまだ一度も会話していない。

つまり、初めて学園に顔を出したら、皇子殿下にすごく失礼な話し方をする元平民がいるって解釈になるんだよね。

そりゃ悪印象だし、指摘したくなるのも仕方ない。


「だからお姉さまも同じ課題を?」

「そういうことだな。出来ればリシアと一緒にと思っていたんだが…まぁ自分でやりたいという意志も大事だからな。」

「言ってくだされば良かったのに…」

「まぁそういうことでな。明日の課題提出にはこれを代わりに出せばいい。何、補習的な側面が大きいから教師もしっかり見ないし字が違ってもバレないだろう。」

「そうしたらお姉さまはどうするんですか?」

「…なんとかなるんじゃないか?今回の事件は私の責任もかなりある。リシアが優先されるべきだ。」


と、言われても。その結果お姉さまが罰を受けたり、一つ下の学年に落とされるようなことがあらば私が嫌だ。

何とかする方法は…


「ねえ、お姉さま。先ほど教師もしっかり見ないから字が違ってもバレないとおっしゃりましたよね?」

「ああ。あまり良くないかもしれないが…。」

「それならいっそ、写してしまえばいいんですよ!今から全部解くのは無理でも、二人で全部写すなら明日までには何とか!」

「なるほど、褒められた手段ではないが…」

「提出しないよりずっとマシです!一度は自分で解いたんですし大丈夫ですよ!」

「そう…だな。そうするとしようか。写すのを手伝わせるのは申し訳ないが…」

「これも一緒に課題をした内に入ると思うんです。ね、お姉さま?」

「リシア、君は…。うん、そうするとしようか。一緒に課題をやってくれるかい?」

「もちろんです!頑張りましょう!」



「…………。チッ」



◆ ◇ ◆ ◇


「ああ、すっかり遅くなってしまったな。だが…」

「ここまでくれば明日の提出までには終わりそうですね!」

「その通りだな。何とか目処がついた…。」

「もうお外も暗いですね。ニドお父様心配してるだろうな…。」

「良ければ今日は我が家の馬車で送らせて貰えないだろうか。私から直々にご両親に説明させてもらおうと思ってな。」

「良いですね!一緒に帰りましょう!」


お姉さまと二人きりの馬車…何も起こらないはずがなく…

起こるのは私の死でしょうけどね。

自然と向かい合わせでなく私の横にかけるお姉さま。私今心臓五つくらい飛びましたよ。


「…今日は本当に申し訳なかった。私の責任だ…。」

「顔をあげてくださいお姉さま!お姉さまの責任なんかじゃ…」

「…順を追って話そうか。私は、去年一年間学園に通っていなかったんだ。」

「どうしてかお聞きしても?」

「…………」

「も、もちろんお嫌であればお話しいただかなくとも構いません!」

「いや、話す。話すが……もう少しだけ待って欲しい。リシアを私の妹と言ったからには、話す義務があるんだ。それでも今は、知られたく…なくて…」

「落ち着いてくださいお姉さま。私ならいつまでもお待ちしますから。…いつでも、あなたのタイミングで。」


珍しく冷静さを失っているように見えるお姉さまの背中を優しくさする。


「すまない…いつか必ず話すから…」

「ええ。お待ちしていますよ。」

「…ありがとう。それでだな、一年間学園に来なかった結果、私は皇子の婚約者として相応しくない、という話が出始めた。」

「でも王家がお決めになられた結婚でしょう?そう簡単には破談には出来ないのでは?」


原作でもエドワードルートではそこがずっとネックになってくるのだ。断罪イベントが起こって初めて婚約解消となる。


「エドワードと私は不仲だと巷では噂されているからな。不仲の二人を結婚させても上手くいかないのでは、と言われている。」

「そうなんですか?でもそこまで仲が悪そうには…確かに今日は少々疑っていらっしゃいましたが…」

「元々私とエドワードは対照的だからな。仲が良いように見られにくい。そこにリシア、君への対応というのもある。」

「私ですか?」

「ああ、お花見があっただろう。あそこで私はリシアの手料理をその場で手を付けれなかったが…エドワードは食べていた。その結果、私とエドワードでリシアへの対応の差が不仲を想像させているみたいだ。」

「ええ、でもお姉さまはあの後持ち帰って食べたのに…」

「そこは外から見たらわからない部分だからな…。そして不仲なくらいなら、それこそエドワードが親しくしている神託の聖女であるリシアと結婚させたらどうだ、という話がな、でているんだ。神託の聖女ならまだ言い訳も立つ。」

「私、エドワード様とは結婚したくないんですが…」

「はっはっは!はっきり言うな!まぁ、私もリシアはそう思うんじゃないかと考えていた。でも、貴族連中はそうは見てくれない。」

「そうでしょうね。」

「我がローエンリンデ公爵家も、私が婚約破棄されてしまうと立場としてはすごく難しいものとなる。だから、そう言うわけにはいかないのだ。当然、派閥の者も必死になるし、リシアを蹴落とそうとする。」

「それでハリス伯爵令嬢は…」

「親あたりからそう言う指示を受けたのだろうな。つまり、これは派閥の管理も出来ていないローエンリンデ公爵家、ひいては私の責任だ。本当にすまなかった。私に出来るお詫びなら何でもしよう。」

「もう課題も何とかなりそうですし、結果的に被害はなかったですから!それに、姉妹なら多少の迷惑は言いっこなしですよ。ね?」

「だが…」

「でしたら、今日のお店、また連れて行ってください!今度はお姉さまの予約で!あ、ハニートーストの追いハチミツ漬は食べませんよ??」

「…ふふ、そうだな。」


あ、お姉さまが笑った。相変わらず不器用で拙い、でも何度でも見たくなる笑顔。

それからも私たちはたくさんのことを話した。

二人とも、話さなかった数日間を埋め合わせるかのように。


「おっと、エヴァンス子爵家の屋敷についたようだ。リシアのお父様に遅くまでリシアをお借りしたことを謝らないとな。…いや、妹の父親と言うことは私の父でもあるのか…?」

「もう、お姉さまったら!」


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