50000pv記念・赤髪の快男児と銀髪の魔女 その4
シンシア視点です。
「リシア様、今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします!」
狩猟大会の当日朝早く、私たちはエヴァンス子爵邸の前にて集まった。
基本の用意をリシア様が請け負ってくれたが、色々な準備を一人でさせるわけにもいかず手伝いにきたのだ。
「手料理、喜んでいただけると良いですね!」
「そうですね。リシア様も。」
「お姉さまはもういつものことですから。喜んでくれるのは純粋に嬉しいですけどね。」
昨日、料理の用意でもお手伝いをした。
厨房の料理人にも負けないスピードで様々な品を仕上げていくリシア様はすごい。
私も横でポテトサラダの作り方を教えていただき、一生懸命作ったのだ。
切り方などが少し不格好で出すのも恥ずかしい出来になってしまったが。
「それでは愛する人たちの待つ会場に向かいましょうか!」
「まだ、そうとは…」
「まだ、ですね?」
リシア様が言葉尻をとらえて私の方をニヤニヤと見る。
相変わらずこの人は悪い人だ、そう思う。
◆ ◇ ◆ ◇
私たちは狩猟大会の会場に到着する。
今日も良い天気だ。
「おはようございます!」
「ああ、リシアおはよう。」
「今年はお姉さまも狩りに参加出来て良かったですね?」
「ああ、しかもリシアがこうして待っててくれる。どれほどこのときを夢見たことか…」
既にレベッカ様とリシア様はいちゃいちゃを始めている。
本当に仲のいいことだ。
「おはようございます。カイト様。」
「ああ、シンシア。今日はありがとうな。」
私は会場端で馬の世話をしているカイト様を見つけ、声を掛ける。
礼を言いながらニカっと笑う様子に思わずドキりとする。
「リシア様とレベッカ様はあちらでもう既に仲良くされてますが、ご挨拶にいかれますか?」 「あー…出来れば落ち着いた頃にしてえがな…」
「あの二人が落ち着く頃を待てば夜になりますよ。」
「そうなんだが…なぁ?」
カイト様が言いたいことはよくわかるのだ。
私も出来ればあの二人が糖分高めの空気を作っているときは近寄りたくない。
レベッカ様は周囲を気にせずリシア様に甘えるし、リシア様はたしなめるフリをしながらもその実じゃれついて二人の世界を作っている。
正直、ちょっと面倒くさい。
「なぁ、シンシア。」
「はい?」
「お前もやっぱり、ああいう感じがいいのか?」
脳内にレベッカ様とリシア様のようにいちゃつく私たちが浮かび、それを振り払う。
一瞬でもそんなことを考えた自分が恥ずかしい。
「何をおっしゃってるんですか、あなたは。」
「はは…だよな。」
カイト様が望むならたまには考えないこともないが、私自身はお断りだ。
自分にそう言い聞かせる。
「では、いきますよ。」
「やっぱり行かなきゃダメか?」
「私を一人で行かせるつもりですか?」
私たちは二人レベッカ様とリシア様の元へ向かったのだった。




