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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第七章 次は私が
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元日 その4

「こちらですね。」

「ありがとうございます。アランさん。」


エドワードの指定で向かったのは、領都から少し離れた旧競技場。

聞いたところによると、新競技場が出来てからは使われておらず、ずっと放置されているものらしい。

こんな寂しいところでお姉さまを死なせてはいけない。つくづくそう思う。


「では、中の部屋でお待ちしてましょうか。」

「ええ、お供します。」


まだエドワードたちは着いていないようだ。

待つように言われている部屋で支度をし、来るのを待つ。


「…アランさん。もし、私がお姉さまにも癒しの力を上手く発揮できなかった時、お姉さまは私に決闘を挑むかもしれません。ちゃんと説明できないんですけど…」

「なるほど?えっと…本日、エドワードによって断罪されて罪人と確定する前に、容疑者のままローエンリンデの為に死なれるということですか?」


ああ、そういうことだったのか。今更原作の断罪イベントのシーンの台詞が思い当たる。

あのシーンでは、自分がいつまでエドワードの婚約者であるか、ということについて確認していた。

あれは、自分の罪がいつまで確定しないのか?について聞いていたんだな。

そして、その期間がとても短かった為に、決闘という申し入れをした。

そういうことなのかもしれない。

原作のレベッカが、リシアを傷つけたり殺したりする気があったのかはわからないが、少なくとも自分の命をローエンリンデのために使うという選択をしたんだ。


「…おそらく、そうでしょう。そして、そうなったとき、私は…」

「ここずっと悩まれていたのはそういうことでしたか。」


アランさんが納得が行ったという風に首を縦に振る。


「以前にも申し上げた通り、まずお嬢様の命とリシア様の命、どちらかを取るとなれば、リシア様の命をお選びください。よろしいですか?」

「…はい。」


それは約束できないけれど、その言葉はありがたい。

そう思う。


「そして、今のお嬢様がその選択に至るということは、もうお嬢様にとって、それしか残っていないということです。もし、リシア様と共に生きる道が残っていると思われるなら、意地でも生き延びようとするはずです。」

「昔のお姉さまならローエンリンデの為になるならとすっと死を選ばれそうですけど。」

「お嬢様をそう変えられたのは、リシア様です。…ですから、お嬢様がそれを選ぶと言うことは、すごく悩まれて、追いつめられて出した結論かと思います。お嬢様をお責めにならないでくださいね。」

「もちろんです。」


それでも、それでも私はお姉さまに生きていてほしい。

そのために私は何が出来る?何をしたらいい?


「ここの中でリシアが待っている。準備は良いかい?」

「早くしろ。」


部屋の外から聞きたかったあの声が聞こえくる。

お姉さまだ。私は居てもたってもいられず、ドアが開くと共に飛び出し、お姉さまに抱きつく。


「ああお姉さま、こんなにおやつれになって!お体、悪いですか?ご飯は食べれましたか?睡眠は?」


ひさびさにみたお姉さまのお顔はとても青白く、痩せていた。

見ているだけで辛い思いをしたと解るそのお顔に、思わずたくさんの心配が口にでる。 

どうにかお姉さまを癒して差し上げたい、もう離したくない。その一心でお姉さまを抱きしめる。

どうか、どうか癒しの力よ、今この場で。

諦める必要はないんだとお姉さまに。


「お姉さま、私、癒しの力についていっぱい研究して。こうやって抱きしめればお姉さまを癒してくれるはずなんです!!どうですか!?体は楽になりましたか!?」


お姉さまの顔を見上げて、様子を伺う。

お願い。お願い。どうか、お姉さまを癒して。

お姉さまはただジッと私を見下ろす。


「えっと、その、まだ全然コントロールが出来なくて。どうですか?私、頑張りますから。その。」


どうして。どうして効いてくれないの。

癒しの力はなんだってすぐ治してくれるはずなのに。

何も変わらないということだけが伝わってくる。


「本当なんです。だから、だからどうか。」


ただ私を見下ろすそのお姉さまの表情を私はよく知っていて。

それは、何度も何度も見たあの表情で。

手を縛られて居たり、細部は違うけれど。

でも、次に出てくる台詞が何かが解ってしまう。


「リシア。いや、リシア・ローエンリンデ。あなたの元恋人、レベッカ・ローエンリンデが決闘を申し入れる。…己の命の為に元恋人にも剣を向ける愚かな女の申し入れ、受けてくれるか。」

「待ってください!私は、あなたを…!」

「エドワード。」

「ああ。」


お姉さまの合図で私はエドワードに引き離される。

崩れ落ちそうになる私を、それまで黙って見ていてくれたアランさんが抱き留めてくれる。

お姉さまはそんな私に目もくれず連れられてゆく。

それでも。今更どんなに冷たくされても。私はあなたを助けてみせる。






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