独り、痛みの中で。
レベッカ視点?というかレベッカの内心です。
どれくらいの時間が経っただろうか。
体に回った毒は、未だ衰えることなく暴れ続け、私の体力を消費させていく。
痛みで長時間眠ることさえ許されず、眠りに落ちては痛みで覚醒を繰り返す。
もう、何年もこれを繰り返している気がする。
数日の命と解っていても、なお。
何度死にたいと思っただろうか。
己の舌を噛みきってしまえば死ねるのではないだろうか。
目覚める度にそんなことを思わせるような痛みがやってくる。
痛みの度に声を抑えようと努める必要もなくなった。
いつしか、声を出すのすら辛くなってきたから。
リシアの顔を脳内に思い浮かべる。
彼女の存在だけが、私を生かしてくれる。
こんなところで耐えきれず、死を選ぶような私は、きっとリシアが尊敬してくれた私ではないから。
リシアは私が生きていると、今も戦っていると信じてくれているはずだ。
ならば、リシアが私を信じてくれるように、私もリシアを信じるから。
リシアはきっと、また私に会いに来てくれる。
私はまだリシアに何も返せていない。
だから、元婚約者から殺したいくらい恨まれていた愚かな私を貰いにやってくるのだ。シロツメクサの約束と共に。
そうだろ?リシア。
来年の花見は、リシアがくれた防寒着を着てリシアの作ったカツサンドをお弁当に二人で花を見るんだ。
狩猟大会に参加して、私は狩りをする。リシアは昼食の用意をして私を待ってくれているんだ。
夏になれば、休暇にまた領地に来たいと言ってくれていた。
一面の麦畑を見て、収穫を想像しながら手をつないで歩く。
川で魚釣りもしよう。次こそ釣りの上級者の腕を見せなければならない。
秋になれば、また一緒に月を見よう。二人、共にまた一年過ごしたことを確認して、後ろから抱きしめたい。団子をたくさん作って、いろんな味付けで食べたい。
運動会だってある。来年は剣術の競技に出て、リシアにいいところを見せたい。
冬は、また領都のクリスマスマーケットを一緒に歩くだろう。
リシアは領都でも聖女として顔が売れてしまったから、いっそ私と仲良く街を歩くのが当たり前くらいにすればいいのだ。
そうして、たくさんの時間を一緒に過ごす。私たちは結婚をして、もっともっとたくさんの幸せを得る。
それは、目に見えるような愛し愛されの派手な幸せだけじゃなくて、私が鍛錬をしているのを静かにリシアが見守ってくれているような、静かな幸せも。全部。
なぁ、リシア。考えて見ると、たくさんのことを約束したな。私たちは。
守れなかったら、すまないな。
許してくれるかな、リシアは怖いからな、どうだろう。
怒られないように、なぜ信じてくれなかったのかと言われないように、もう少し頑張ってみるよ。




