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焔の魔法  作者: 有賀智樹
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魔の手迫る

 今日の朝日は朝からミッションがある。それは昨日の一件があり東雲、黒原ともに会うのが気まずかったからである。そして今日は初の一人でのミッションだった。朝日の心の中では俺は一人でもやれるという自信が欲しかったのかもしれない、二人と離れてもやれるという自信が。


「猫探しもこれで2回目、まあ同じ所から周るか、一人でのミッションは気楽まさに俺にはうってつけだな」


 朝日は猫の多く集まる空き地に向かった。相変わらず猫は多いが探している猫はいない。


「そういえば、ここまで前は全力疾走できたんだったな」


朝日は黙って猫の広場を見つめた、少し前までは、仲の悪かった東雲が友達になるなんて考えてもなかったしみじみ思った。


 次に朝日は、本屋で足が止まった。ここはよく放課後に黒原と来た場所だ。黒原は天然だが思ったことをすぐ言ってしまう性格でもあった。今思うとあんなかわいい子と知り合えたってことは運が良すぎるな。それが今に帰って来てるのかもしれん。


「全く俺は女々しいやつだな」


朝日はまた先程のように黙って本屋をみつめた。だが入りはしなかった。


 目的の猫を探して山の中へ入った。そして滝の近くまできた。目的の猫は、やはり前と同じ場所にいた。


「やっぱりお前か」


「にゃぁぁーーー」


元気よく返事をする猫。東雲と探した猫と同じだったのだ、よく見れば依頼者の名前も一緒だった。何故こうも連続猫に出てかれるんだか。


「おい帰るぞ」


「にゃ、にゃ、にゃぁぁぁ」


猫は、しきりに下を覗き何かを取ろうとしていた。それを近くにいき取ってやる。そうすると猫は嬉しそうにして大人しく俺の腕の中に収まった。取れたのは指輪だった。小さな宝石が埋め込まれていてかなり年期が入っていた。何故猫が脱走を繰り返したのは、これが取りたかったのだろう多分依頼者の物なので、一緒に届けることにした。


 俺が玄関の近くまで来るとすぐおばさんが出迎えてくれた。かなり大きい家に住んでるがこの猫と二人で暮らしている。


「いつもいつも、ありがとうね」


「いえ、俺らは単位がもらえるんで助かりますよ、それとこの指輪は、吉岡さんのですかね、猫が一生懸命取ろうとしていたので」


「これってまさか」


その指輪を一瞬とても驚いたような顔で見た彼女は、目元に涙を浮かべ大事そうに指輪を握った。


「ありがとね、鈴ちゃん」


猫のことをその指輪と同じように抱きかかえたおばさんを見て指輪の大切さが目に見えて分かった。


 落ち着くまで少し時間がかかったが、おばさんはこの指輪のことについて話し始めた。


「これは死んだ夫がくれた結婚指輪なんだけどね、死んだ直後はね夫のことなんて死んでせいせいしたと思ってた」


「それで結婚指輪を邪魔だと思って外してて縁側の上に置いておいたのそしたらカラスがとってちゃって」


「その時は、どうでも良かったけど段々ね悲しくなってきちゃって、いつも夫のことはかり考えて」


「夫はプレゼントという物が好きじゃなかったからな贈り物なんて、指輪くらいだったの」


「なくしてから大切な物に気づくってことなのかしらね」


おばあさんは、ひとしきり話しをすると懐かしさを味わうかのように指輪を見続けた。


「ところで、あの女の子はいないのかしら」


「今日は一人なんですよ」


朝日は平然と悟られないように返事をした。だがおばさんは、朝日の仮面をすぐ見破った。


「喧嘩でもしたって感じだね」


「いえ、そんなことは、無いです。


「元から、そんな仲良く無いですしいいんですよ」


おばさんは、時計を見て言った。


「まだ昼中じゃないか、学校はまだやってるんだろ」


「いや、今日はミッションも有りましたしね」


おばさんは微笑みながら朝日の肩を叩き言った。


「本当に今行かなくて良いのかい」


「いえ、本当に別に大切な人って訳でも無いですから」


朝日は平然としっかりとした口調で話した。


「あんたの大切な人はまだ生きてるじゃないか、子供の喧嘩なんかでそれを失うのは良くない」


「だから俺は、俺は」


おばさんは俺が言いかけた言葉を止めた。


「泣くぐらいなら早くお行き」


朝日全く平然になど答えれていなかった。頬からはどんどん涙が伝って来ていた。それほど朝日にとって二人はかけがえの無い人になっていた。


 朝日はおばさんにお礼を言ってそこから立ち去った。帰り道では東雲と話した友達の定理を思い出した。本音を言い合えるのが友達だと。


「何だ、友達になりきれてねえのは俺だけじゃねえか」


 あいつらに本音を言おうそう思い、何気なくスマホを見た。そこには大きな見出しのニュースがあった。それは『対魔人養成高校襲撃、首謀者は1Aで立て篭り』


 それを見た朝日は、学校へ向け全力で走り出した。






 

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