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奴隷物語 ~奴隷グローの冒険物語~  作者: アラン
アシーナ帝国vs飛び地
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5章43話 優しさは目を付けられる

 ラーヴァナは一つの首を刎ねられ、しばらく痛みに悶えるが、次第にその痛みが怒りへと変わる。ラーヴァナは顔を真っ赤にして、


 「貴様ぁぁぁぁぁぁーー!!」

と大声を上げながら、グローに飛びかかってきた。やつは剣で攻撃を仕掛けるが、グローによって受け止められてしまう。


 「殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる……」


 ラーヴァナはブツブツと呟きながら、彼を睨みつけている。そして、再度「無限の牢獄」を繰り出そうとするが、グローはその気配を察知して、

 「妖精の飛行」

を瞬時に行い、ラーヴァナの二つ目の首を刎ねる。


 「ぐああああああああああああああ。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い……」


 余程ラーヴァナは苦しいのか、頭や首を爪で引っ掻き回し、髪の毛や皮膚が()がれ落ちる。

 だが、ラーヴァナはまるで執着するように、グローに「無限の牢獄」を繰り出そうとしている。いや、怒りと苦しみで、思考が鈍っているのかもしれない。戦術など関係なく、力技でグローを押し負かそうとしている。


 しかし、この攻撃は今のグローには有効だった。

 さすがのグローも体がボロボロな上、二度も「妖精の飛行」を行ったもんだから、体にガタが来ていた。「妖精の飛行」は瞬時に、体をすごい速さで動くため、体力と筋肉の疲労が半端じゃなかった。なので、ラーヴァナの次の「無限の牢獄」には対応できる気力が無かった。


 彼はもう攻撃を受けることを覚悟していると、次の瞬間、ラーヴァナの頭に錫杖が飛んでくる。

 ラーヴァナは、まともに飛んできた錫杖をくらい、攻撃が止められてしまう。


 「すまん、グロー。ようやく治癒して動けるようになった」


 ヴォルティモはそう言いながら、グローの許に駆けつけ、素早く錫杖を拾う。

 グローは彼が駆け付けたことにより、ホッと安心する。


 「まだ戦えるか?」


 ヴォルティモはグローにそう尋ねるが、

 「結構限界かもな」

と彼は苦笑いを浮かべる。


 だが、

 「まだそう答えられるだけ、大丈夫そうだな」

とヴォルティモはお構いなしに言ってくる。


 意外とヴォルティモは鬼畜なのかもしれない、とグローは思う。ヴォルティモの意外な一面性が見えたところで、ラーヴァナは再度闘志を剥き出しにする。やつは側面から彼らを攻撃しようとするが、ヴォルティモはやつの胸辺りを錫杖で突き、見事怯ませる。


 どうやら、首を失うごとに力が弱まっているようだ。首が全部揃っていたときより、弱体化している。

 グローたちはその勢いのまま、ラーヴァナに攻撃をさせないように、追撃していく。


 「もう止めてくれ……。俺からもう奪わないでくれ……」



 ―何が起きているんだろうか。どんどん俺の友達と兄弟が殺されていく。体は痛いし、頭や体から血が流れている。胸が苦しい。息が荒くなっていく。どうして、こうなったんだろうか。



 ラーヴァナは、いや彼らはここからずっと東方にある地で産まれた。悪魔の子どもとして。

 彼は普通の子どもと違って、兄弟が1つの体で繋がって産まれてきた。元々4つ子だったが、何かのはずみで、産まれるとき兄弟4人がくっついてしまった結果、彼らは1つの体に4つの頭と4組の両腕がくっついてしまったらしい。


 そんな彼らを不気味に思い、親からは捨てられ、周りからは気味悪がられ、彼らはいつも孤独だった。だから、彼らは4兄弟で必死に協力して生きてきた。ラーヴァナの世界には兄弟しかいなかった。


 ラーヴァナの弟である三男のクムバカルナが凹んでいる腹に手を当て、聞いてきた。


 「兄ちゃん、今日は何か食べられるのかな」


 三男に同調するように、カラの四男も便乗する。


 「僕もお腹減ったな」


 すると、次男のヴィビーシャナが三男の質問に答える。


 「うーん、そうだなー。罠に獲物がかかっていれば、食べられるかもな」


 彼らは罠を見ると、何もかかっていないことに、がっくしと分かりやすく落ち込む。腹は期待を裏切るような結果に文句を言うように、グーグー腹の音が鳴る。時には、ひもじすぎて、虫やネズミなども食べてきた。


 この国は肌の色などにより区別される身分制度によって成り立っており、司祭や戦士など階級によって、仕事や待遇などが決められている。俺らは肌の色だけじゃなく、恐ろしい見た目からその身分制度の中にも入れてもらえず、階級外の「不可触民」と蔑称されている。穢れが多いため、触ると穢れが移るのだとか。それもあって、誰も彼らに近づいて来ようとしない。一人を除いては。


 「やぁ、元気?ラーヴァナ君、ヴィビーシャナ君、クムバカルナ君、カラ君」


 一人の青年が彼らに近づき、挨拶をしてきた。ラーヴァナたちにも恐れず接してくれる。それがシッダースという少年だった。


 シッダースは庶民階級の人間で、肌の色も褐色だ。両親も庶民階級の出で、不可触民のラーヴァナからしたら、庶民階級でも関わりが遠い。だから、シッダースは度々親にラーヴァナたちと関わるなと強く言われているらしい。なので、本当は彼と関わるのは駄目だが、それでも接してきてくれていた。


 「まあまあかな」


 ラーヴァナは少し薄ら笑いを浮かべ、返事をする。


 「そっか。じゃ、カラ君、クムバカルナ君、お腹空いている?」


 シッダースの問いかけに、カラとクムバカルナが答える。


 「「すいた!」」


 ―こいつら…。


 ラーヴァナたちは一応兄弟の上下関係があるが、四つ子であるため、そんなに差はない。だが、しっかりしている順に、兄を決めていった。それでラーヴァナが長男となっていた。


 しっかり者のラーヴァナは遠慮して、お腹を空かしているのを言わないことを知っているため、シッダースはわざと弟のカラとクムバカルナに聞いてくる。


 カラとクムバカルナの答えに、シッダースはナンと一杯ぐらいのカレーをくれた。


 ラーヴァナはいいよと断ろうとすると、彼の意思に反するように腹の音が鳴る。彼は断るに断れず、赤面しながら食べ物を受け取る。


 シッダースは優しかった。こんなラーヴァナたちにも接してくれて、兄弟全員の名前も覚えてくれて、食べ物も分けてくれた。そんな優しさが上の階級のいじめっ子4人に目を付けられることになってしまった。いじめっ子は、シッダースが不可触民のラーヴァナと仲良くしているのが気に食わないのか、シッダースに嫌がらせをするようになった。



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