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奴隷物語 ~奴隷グローの冒険物語~  作者: アラン
アシーナ帝国vs飛び地
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5章36話 持久戦

 グローは眠れないため、野営地から出て、外の空気を浴びることにした。彼は野営地から出ると、冷えた夜風が彼の頬を撫でる。彼の体が少し冷え、彼は体を温めるように、腕組をして、二の腕をさする。


 彼はふと空を見上げると、満点の星々が輝いていた。こんな戦争の時でも、星はいつもと変わらず、綺麗に輝いていた。いや、平原で周りに高い建物が無い分、いつもより綺麗に輝いて見える。グローはそんな星空を見て、少しリラックスできたので、野営地の中に戻ることにした。


 彼はふと前方を見ると、星々の輝きが平原にもあった。だが、その輝きはリラックスできるものではなく、緊張感の高まるものだった。それは、少しの松明とその灯りに照らされた複数の人影だった。飛び地軍だ、グローはそう思った。


 交代で見張っていた兵士もそれに気づき、慌てて野営地の中にいる皆に知らせる。


 夜戦はあるにはあるが、そこまでメジャーではない。夜戦では、敵味方の区別がしづらいし、睡眠を削るため、体力も消耗しやすい。だが、実際には、飛び地軍は夜戦を仕掛けてきたのだ。


 休んでいた兵士たちは、眠い目を擦り、

 「夜くらい休ませろよ……」

とブツブツと文句を言う。


 その兵士のやる気の無さそうな態度を見て、アシーナ軍の指揮官は、

 「お前ら、気合を入れろ!見たところ、相手は4千人ぐらいだ。早く終わらせて、休むぞ!」

と一喝する。


 向かってきている人影はそこまで多くなく、指揮官の言うように4千ぐらいだ。つまり、全部隊で攻め落としに来ているのではなく、多分アシーナ軍の体力を消耗させるための、夜戦なのだろう。


 その指揮官の喝で、兵士は背がしゃんとして、各々の武器を構え始める。そして、陣形を整えると、指揮官の合図で突撃する。


 アシーナ兵は徐々に人影に近づくと、ある真相に気づく。その人影の見た目は、白目を剥いており、個体によっては、骨折したり、皮膚が剥がれているものもいる。その人影の正体は、飛び地軍ではなく、ゾンビだった。


 ゾンビは行動速度こそ遅いが、脳のリミッターが外れているからか、とても力が強い。その上、痛みや恐怖にも怯まず、怪我などものともしない。


 その人影の正体がゾンビであることに気づいた指揮官が、

 「こいつらはゾンビだ!皆気を付けてかかれ!」

と皆に聞こえるように、大声で注意勧告する。


 兵士はゾンビの攻撃に気を付けながら、討伐していく。グローたちも兵士同様、ゾンビを討伐していく。


 グローは一体のゾンビに近づき、剣で腹を斬りかかる。ゾンビはまともに攻撃を受け、腹から腸が出てくる。その腸から異臭が漂う。あまりの臭さに、彼は鼻をつまみたくなるほどだった。


 ゾンビは彼に攻撃を加えようと、持っている剣で斬りかかる。

 だが、遅い攻撃などグローにとって、躱すなど容易い。グローはゾンビの攻撃を避け、攻撃を加えようと、ゾンビの懐に入る。その時、彼はあることに気づいて、驚きから一瞬呆然としてしまう。そのゾンビの服や鎧、顔立ちが、ファルーシア人にとても似ていた。


 彼は一瞬立ち尽くしてしまうが、ゾンビが剣で斬りかかりにきていることに気づいて、後退して避けようとする。だが、一瞬の隙が良くなかった。ゾンビの剣先が、彼の頬に切り傷を作ってしまった。


 彼は追撃を許さないように、ゾンビの腹を蹴り飛ばす。ゾンビは吹っ飛ばされ、地面に倒れてしまう。彼はそのままゾンビに跨り、頭に剣をぶっ刺す。ゾンビの頭は潰れ、そこでさすがのゾンビも動かなくなった。ただ、ゾンビとはいえ、グローは相手の顔を見れなかった。


 彼は立ち上がり、辺りを見渡すと、他の兵士もゾンビを倒し終わったようだ。


 ―よし、これで少し休憩できるな。


 兵士も一安心し、野営地に戻ろうとするが、気づいたら東に太陽が昇りかけていた。どうやら、夜が明けてしまったようだ。


 アシーナ兵は舌打ちをしながら、仮眠を諦めた。そして、次の戦いに備えて、陣形を整える。

 陣形としては、騎兵、歩兵、騎兵の3列の順番や比率は変わっていないが、陣形の配置を少し変更した。歩兵部隊と奥の騎兵部隊を、階段状に遠ざける。さらに、奥側の騎兵部隊を前方と後方の二部隊に分ける。


 マリアはその奥側の騎兵の後方部隊に配属され、グローとヴォルティモはその奥側の騎兵部隊に近い歩兵部隊に配属されている。対して、あちらの飛び地軍は以前と同様に、騎兵、歩兵、騎兵の順に3列になっていて、海岸より遠くの方の騎兵の数が多くなっている。


 そして、開戦の合図がされると、お互いにその陣形で突撃を始める。それぞれの部隊が対面している敵の部隊にぶつかるが、先にぶつかったのは海岸側の騎兵部隊だった。アシーナ軍は階段状に遠くなっていく陣形であるため、海岸側の騎兵、歩兵、奥側の騎兵という順にぶつかっていく。


 だが、奥側の騎兵部隊の前に、少数のアシーナ弓兵部隊を集中配置したため、お互いの奥側の騎兵部隊がぶつかるにはまだまだ時間が大分かかる。


 海岸側の騎兵が激戦となっているとき、ここで奥側のマリアが率いる後方の騎兵部隊が動きを見せる。相手に気づかれないように、徐々に海岸側に近づく。そして、海岸側の騎兵部隊に合流すると、海岸側のファルーシア騎兵部隊を一気に叩きこもうとする。


 これがアシーナ軍の作戦だった。飛び地の奥側の騎兵部隊は、大人数のファルーシア騎兵にアンジェル帝国軍騎兵もいるため、ここを突破することは不可能に近かった。そこで、そこまで集まっていない海岸側の騎兵部隊から突破するため、相手に気づかれないように、マリア率いる後方部隊が海岸側に移動することが作戦だった。


 だが、それには欠点もあった。奥側がかなり手薄になることだ。だから、歩兵と奥側の騎兵を階段状に下がらせ、敵とぶつかる時間を遅らせるようにした。さらに、奥側の騎兵部隊の前に弓兵部隊を配置することで、さらにぶつかる時間を遅らせた。だが、これでも、アシーナ軍が敗れる可能性はあった。海岸側の騎兵部隊が早めに突破しなければ、奥側が早く突破されてしまえば、この計画は破綻してしまう。


 なので、マリアたちは早く突破することを、グローとヴォルティモたちは長く持ち堪えることが求められる。


 ―マリア、頼んだぞ。こっちは持ち堪えるように頑張るから。


 グローは心の中で、マリアにそう託す。


挿絵(By みてみん)

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