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奴隷物語 ~奴隷グローの冒険物語~  作者: アラン
神聖エストライヒ帝国編
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3章15話 そういうやつら

 グローたちはトロールを倒し、一息つきたいところだが、そうも言ってられなかった。まだ盗賊との戦いが残っていた。

 彼らは疲弊した体で、剣を盗賊に向けて構える。


 あちらも武器を構えるが、リーダー的な存在が攻撃するなと言わんばかりに、手を仲間に広げ、仲間も武器を下ろす。リーダーがこちらにどんどん近づいてくる。グローの目と鼻の先まで近づくと、

 「お前ら、やるな。ここは穏便にいこう。あんたらも疲弊している。こちらも疲弊している。ここは、お互いに争うのは止めよう」

と言ってきた。


 ―よく言うぜ。そっちから仕掛けた戦争だろ。

 そう言いたい気持ちをぐっと堪え、グローは「わかった」と一言言い、握手を交わした。実際、盗賊は統率が取れたかなりの凄腕なので、戦ったら終わっていただろう。いい選択だったはずだと、グローは自分自身を納得させる。


 そのリーダーは、頬をポリポリと搔き、提案してきた。


 「代わりと言っては何だが、ミラントまで案内するよ」


 攻撃を仕掛けた彼らなりのお詫びだろう。グローたちは頷き、その提案を受諾した。


 「了解。じゃあ、こっちだ」


 リーダーはグローたちにこっちに来いと手招くが、一つやらなきゃいけないことがある。


 「すみません、ちょっと待ってください」


 グローとヴォルティモはトロールを倒した後、いつも通り骨を埋葬しようと思ったが、土が硬くて厳しそうなので、骨に向けて合掌した。


 「なんですかね。あれ」


 「変な奴らだな」


 向こうから盗賊の揶揄が聞こえてくるが、グローたちは気にしないようにする。

 その弔いが終わった後、盗賊に案内されながら、ミラントへ向かった。一緒に戦ったからか、彼らはとても気さくに話しかけてくる。


 「お前らは、なんでミラントまで向かうんだ?」


 「ちょっと知人がウェネプティアに住んでいて、その人にお世話になったので、今はそこへ向かっているんです」


 グローがそう答えると、リーダーは二回ほど頷く。


 「なるほどな。だが、気を付けろよ。最近はなんかきな臭いから」


 グローたちは思わず、お前らが言うなとツッコミたくなった。だが、リーダーは、グローたちがそう思うのを予想していたのか、

 「俺らみたいなのとかな。」

と言いながら、盗賊の仲間同士で目を合わせ、ガハハと豪快に笑う。

 グローとヴォルティモは苦笑いを顔に浮かべる。


 そんな盗賊とのやり取りを繰り返す。

 グローは、随分信用されたもんだなと不思議に思う。

 だが、彼ら盗賊にとって、武力とは力そのものであり、正義であり、真実なのだろう。グローたちは彼らの中で大分打ち解けたと思ったとき、気になることを聞いてみた。


 「なんで盗賊をやっているんですか」


 そのことを聞き、彼らは返答に詰まるが、グローの真っ直ぐな瞳を見て、答えてくれた。


 「俺らの故郷は、皆基本傭兵になるんだ。このアルペン山脈付近にあるんだが、高山地帯が多く、チーズや乳などの酪農を生業として生活する。だが、それだけでは暮らしていけないから、多くが傭兵として他地域へ出稼ぎに行くんだ。でも、最近ではその戦もだいぶ減ってて、俺らみたいな下級傭兵は零れ出ちまう。だから、盗賊をやって、金を稼ぐしかないのさ」


 そのことを聞き、グローたちの中で先ほどの戦い方に納得がいった。盗賊なのに統率が取れたり、戦いの身のこなし方が凄かったのはそういうことだろう。


 「確かに、それは辛いな」


 グローはふと先ほどのトロールとの戦いを思い出した。


 「ふと思ったんだが、あれだけ魔物ともやり合えるほどの力を持っているんだったら、魔物を討伐するビジネスとかギルドを始めてみたらどうだ」


 彼らはキョトンとした顔でグローを見てくる。


 「なんだそりゃ?」


 グローは彼らに、想像上の話でしかないが、提案を持ちかけてみた。


 「魔物は至る所に出現し、討伐してほしいと思う人たちは多くいるはずだ。つまり、需要がある。でも、魔物討伐は、自分自身か国が派遣した公の兵士が行うのがほとんどだ。つまり、需要に対して、供給が足りてないんだ。そこを魔物を討伐するギルドを建てて、募集を募れば、組織や個人から依頼が多く来て、報酬も貰えると思うんだよね」


 盗賊は、グローの話をしっかりと聞き、なるほど、そんな手があったのかというような驚きを顔に出した。


 「そいつぁ、いいなぁ。やってみるか」


 彼らはその夢のような話で盛り上がる。

 ふと、リーダーが何かを思い出したかのように、手を打つ。


 「そういえば、俺らの自己紹介していなかったな。俺から順に、ダニエル、ペーター、ハンス、ノアだ」


 リーダー、ダニエルは、メンバーを指さしながら、名前を紹介してくれた。グローとヴォルティモは自分たちも紹介すべきだと思い、自己紹介をする。


 「俺はグローで、こっちはヴォルティモだ」


 彼らは改めてよろしくと握手を交わした。やはり盗賊と言っても、話が通じない連中ではなかったようだ。

 しばらく進み、山をほとんど下りきってきた頃、空が段々暗闇に染まる。


 「今日はここら辺で野宿をしよう。暗い山は危険だ。また、翌朝に進もう」


 リーダーはそう言い、手ごろな場所で火を起こし、寝泊まりの準備をしている。彼らは軽く毛布を被り、眠りについた。


 「…い。おい、起きろ」


 その声が頭に響き、ぼやけた視界が徐々に鮮明になってくる。目の前には、ダニエルがいて、グローを揺さぶっている。


 「どうした?」


 グローは眠い目を擦り、起こしてきた理由を尋ねた。


 「何かが近づいてきたようだ。多分足音と威嚇の唸り声からして、狼だろうな。もし、数が多かったら、厄介だしな」


 「わ、わかった」


 グローはそのダニエルの言葉を聞き、飛び上がる。ヴォルティモもどうやら起こされたようだ。彼らは武器を構えると、向こうから狼が三匹の群れで近づいてきた。


 「三匹だったら、この人数だといけそうだな。一気に片付けるぞ」


 ダニエルたちは、狼に走って近づき、斬りつける。グローたちもそれに続き、狼に近づき、斬りつける。狼は負けじと攻撃してきた者の腕や足に噛みついてくる。


 「いってぇ!」


 腕を噛みつかれたノアは持っている剣のポンメル(柄頭)で、狼の頭を思いっきり殴る。


 「キャン!」


 殴られた狼は、悲鳴を上げ、すっかり怯んでいる。他の二匹の狼はもう倒したようだ。最後の残り一匹の狼は怖いのか、尻尾を足に挟み込み、耳は垂れ、下から覗くようにこっちを見てくる。


 「さて、終わらすか」


 ダニエルが剣を振り上げ、狼を斬りつけようとする。


 「ちょっと待ってください」


 その瞬間、ヴォルティモが狼とダニエルの間に立ち塞がり、狼に攻撃させないようにしている。


 「さっきの狼二匹は最後まで闘争心があったが、この狼はもう戦意がない。ここは見逃してもらえないか」


 ヴォルティモは狼を庇うようにする。無駄な殺生をしたくないのだろう。

 ダニエルは「はぁ」とため息をつく。


 「甘いな。ここは殺るか、殺られるかだ。こんな厳しい世界だと、そんな甘い戯言じゃ生きていけないぜ」


 ダニエルはヴォルティモを横にずらし、改めて狼を殺そうとする。


 「それはどうかな」


 今度はグローが止めに入る。

 すると、ダニエルは彼の方に振り返り、

 「どういうことだ」

と強く聞き返す。


 「その狼を生かしておくことは、お前らにとってもメリットだと思うぜ。そいつを家畜化し、魔物狩りや酪農で手伝わせれば、お互いに良いと思うぜ」


 グローは言い訳を捲し立てるように、早口で伝えた。そのことを聞き、ノア、ハンス、ペーターは、「確かに」と納得をしていた。その仲間の納得した姿を見て、ダニエルは上唇を噛み、イラッとしている。


 「ふん、甘い奴らだな。俺はそんなのごめんだ」


 ダニエルが再度剣を振り下ろそうとすると、仲間が前に立ち塞がり、止めに入る。


 「まあまあ、兄貴。こいつらの言い分も分からなくないですぜ」


 ダニエルは仲間が止めに入り、余計に怒りが高まる。そして、その持っている剣を地面に叩きつけるように投げる。


 「もういい!俺は知らん。ノア、ハンス、ペーター、やるとしてもお前らがやれ!」


 ダニエルは不貞腐れるように、寝床に戻り、毛布を被って眠る。

 狼はもう彼らが攻撃する気が無いのを知り、尻尾を振りながら近づいてきた。ペーターたちがその狼をよしよしと手懐ける。


 グローとヴォルティモは、殺した狼の亡骸を地面に埋め、弔いを行った。

 その後、再び皆眠りについたが、ダニエルだけは皆に背中を向けていた。

 ヴォルティモの傍には、狼が丸まって寝ている。暖かそうだった。


 グローたちは翌朝起きて、再びミラントへ向かった。

 そして、ミラントの手前に着き、ここで盗賊の人たちと別れることにした。狼もこっちに来たそうだが、連れていけないため、お別れだ。ペーターは狼に干し肉の欠片を与え、手懐けている。


 グローたちは彼らに別れを告げ、感謝の会釈をする。ハンス、ノア、ペーターも会釈を返してくれた。だが、ダニエルは背中を見せ、別れの挨拶をしてくれない。グローたちがもうミラントの街に入るかと進もうとしたとき、ダニエルは後ろ姿のまま右手を上げ、「じゃあな」と言わんばかりにヒラヒラと手を振る。多分彼なりの照れ隠しなのだろう。グローたちはクスッと含み笑いをし、前を向き、ミラントの街に向かう。

 狼は「ワオーン」と長い遠吠えをする。まるで彼らとの別れを悲しむように、そして同時に旅を祝福しているかのようだった。


 グローとヴォルティモは、ミラントの城壁から街へと入った。


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