10章97話 今はまだ空欄
メーターがキーオンを十分に撫で終わった後、グローたちに視線を向ける。
「君たちは色んなところを旅をしているのだろう。君たちはどう思う?このレッサードラゴンのように動物を俺ら人の争いに利用することを。そして、彼らとどう共存していくべきなのかも。」
メーターがグローたちにそう尋ねると、グローたちは返答に困り、下を向いてしまう。あまりに難しく、彼らではまだ答えることはできない。
その返答に困っている様子を見て、メーターは、
「いや、難しいよな、こんな質問。そう言う俺だって、現に戦争で使われるレッサードラゴンを育てているんだから。偽善者もいいところだよな。」
と、場を濁すようにアハハと笑う。
グローたちはメーターの気遣いを察し、口角を無理に上げて苦笑いをする。
「まあ、今日はもう遅いし、寝ようか。」
そして、夜が更け、村が寝静まるころ、グローたちがメーターの家で寝泊まりをしていると、突然、
「盗賊だー!!」
という声が聞こえ、彼らは飛び起きる。
メーターの家を出ると、外では村人と盗賊の争いが起きていた。どうやら、先日、門前払いをした盗賊が村を襲いに侵入してきたようだ。
村の様子を見るや否や、メーターは家の中から弓矢を手にし、キーオンを飼育している小屋へと向かう。そして、小屋の柵を開け、キーオンを外に出す。
「キーオン行くぞ。」
メーターはそう言うと、キーオンの背中に跨り、手綱で合図をする。
キーオンは翼を羽ばたかせると、フワッと風が起こり、後ろにいたグローたちの髪が風で乱れる。そのままキーオンは何回か羽ばたかせると、地面からフワッと浮かび、徐々に空へと飛んでいく。
メーターたちが盗賊を討伐しに行ったのを見て、グローもすかさず
「俺たちもサポートするぞ。」
と意気込む。
「「「おう!」」」
皆も勢いよく返事をし、皆で盗賊を討伐していく。
メーターは空から村の状況を見てみる。盗賊はレッサードラゴンを盗むため、飼い主の村人を殺そうとしている。村人はというと、必死に抗戦している者もいれば、殺されてしまっている者もいる。
その殺されている村人の方を見ていると、
「おい、大人しくしやがれ!」
と、盗賊が村のレッサードラゴンを盗もうとレッサードラゴンに付いている手綱を無理やり引っ張っている。勿論、レッサードラゴンは抵抗するため、全身に体重を込め、動かないようにしている。
「キーオン、あそこだ。」
メーターがキーオンにそう語り掛けながら、キーオンの首の右部分をポンポンと優しく叩く。
キーオンは右側を叩かれたことにより、飛行しながら体を少し右に傾ける。すると、キーオンの飛ぶ方向は若干、右に曲がり、レッサードラゴンを盗もうとしている盗賊の許へ近づく。
そして、メーターはキーオンの上から狙いを定め、盗賊に向けて矢を放つ。矢は見事、盗賊の胸に当たり、盗賊は痛そうに悶えながら倒れる。
盗賊から解放されたレッサードラゴンは、飼い主の許に近づき、口の先端で飼い主の体をユサユサと揺らす。レッサードラゴンは飼い主が死んでいることに気づいていないのか、はたまた気づいているからなのか、何度も揺らしている。
その光景を見て、メーターは手で胸の辺りをギュッと掴む。心が締めつけられそうだった。
「許せない。動物を利用するために村を襲うなんて。」
メーターはそう呟くと、自分の言葉にハッと気づかされる。彼自身もレッサードラゴンを他国との戦争に利用するために育てていることを。
「いや、違う。」
メーターは一瞬よぎった考えを捨てるよう、頭をブンブンと左右に振る。頭では分かっている、彼ら盗賊はただの自分勝手な略奪で、自身が行っている行為は全く違うものであることを。だが、ほんのわずかに、彼らとどう違うのかという考えが浮かんでは離れない。
メーターは一層、胸を掴む手の力を強めた。
メーターが空から攻撃する一方で、グローたちは地上から攻撃していく。グローが数人の盗賊に走って近づくと、一人の盗賊は「この!」と言いながら、グローを剣で斜め上から斬りかかろうとする。
グローはすかさず横にずれて避け、その盗賊を横なぎに斬りつける。
「ぐは!」
一人の盗賊が倒れると、他の盗賊がグローの頭を斧でかち割ろうとする。だが、マリアが槍で盗賊の脇を突き刺し、攻撃を阻害する。
二人の仲間がやられたのを見て、もう一人がグローに向けて矢を放とうと構える。そして、あと少しで放とうとしたところ、ストンと彼の胸に矢が突き刺さる。彼は一瞬何が起きたのか理解できず、きょとんとした表情になる。
「遅い。」
イトゲルが弓を構えた状態で、そう呟くと、矢を撃たれた盗賊はようやく自身の身に何が起きたのか理解できた。だが、理解したところでもう遅く、そのまま意識が無くなると同時に、地面にバタリと倒れた。
「よし、このまま他の盗賊も討伐していこう。」
グローがそう言うと、皆頷き、他の盗賊も討伐していった。
そうして、戦いが続き、夜が明けたころ、村に侵入してきた盗賊は全員討伐された。討伐後、村は亡くなった村人を埋葬して悼み、荒らされた家などを片づけたりしていた。グローたちも軽く手伝い、その数日後に村を出立することにした。
「またあなた方に助けていただいたおかげで、村の被害は最小で済んだ。村人は死傷者が出てしまいましたが、肝心のレッサードラゴンは無事でした。本当にありがとうございます。」
村長は改めてグローたちにお礼を言う。
村人の死傷者は痛いが、この村にとってレッサードラゴンに何事も無い方が重要だ。レッサードラゴンはこのマジャ帝国の大事な財産なので、これに何かあれば監督不行届として、この村に罰が下されていただろう。
そのため、村長は深々とお辞儀をしていた。
メーターはというと、グローたちの出立なのに、浮かない顔をしている。まあ、盗賊に襲われたばかりで元気を出すっていうのも無理かもしれない。
「お世話になりました。」
グローたちはお礼を言うと、村に背を向ける。だが、グローが何かを思い出したのか、「あ」と声を出し、村の方を振り返る。
「メーター!」
「ん、なんだ?」
「先日の質問だけど、俺ら人の争いに動物を巻き込んでいいのか、今はまだ答えが出せない。どうやって彼らと共存するのかも。だけど、いずれ動物と人が共存できるような答えを見つけてくる。だから、それまではこの答えは取っておいてくれ。あと、お前はそうやって考えている時点で偽善者じゃねえよ。」
グローがそう言うと、メーターは彼の言葉で少し救われたのか、ほんの少し口角が上がる。
「おう。楽しみに待っとくぜ。」
メーターはそう言い、彼らに向けて手を振る。まだ答えも見つからない中で、メーターはなぜだかグローたちにこの答えを託したくなった。
今回は区切りいいところで投稿したので、少し文字数が短いかもしれません。すみません。




