episode 06 古びた地図
蒼く澄みわたる空と心地よい海風が頬を撫でる。
あたし達は海賊船に乗り込むと甲板に出て海を眺めていた。
結局のところ、連絡が来たのが夕暮れ時であり出発は次の日の昼間ということになり、こうして海に出ている。
「船って初めて乗ったけど退屈なものね」
「そうですか?
私は楽しいですよ」
声の弾むミーニャは大海を眺めては笑顔を絶やすことがなかった。
「それはそうとアテナ。
カルディアに聞かなくていいのかい?」
「何を?」
「これから向かう所のことさ」
手摺に寄りかかり、腕組みをしたままのレディは表情も変えずに海賊達を眺めながら話をしている。
「そうねぇ……別に聞かなきゃ聞かないでもと思っていたけど、少しでも詳しいことが分かれば対処も楽かも知れないわね」
「彼女のことだ、あたいが行っても素直には話してくれないだろうから、そこはアテナにお願いしたいとこなんだが」
「良いわよ別に。
そもそも、あたしが知りたい情報と交換なんだから聞いてくるわ」
レディの返事を待たず甲板から一階層降りた船長室をノックすると返事があり、それに応える形で名乗りつつ扉を開けた。
「おや、アテナ。
どうしたんだい、一体」
「ちょっと聞きたいことがあってね。
ってのも、今向かってる場所のことが聞きたくて来たのよ」
「あぁ、そういうことか。
だったらこっちに」
扉から離れカルディアの机の前まで行くと、地図らしきものが広げられていた。
「こいつは海図っていってね、航海に使う地図なんだがさ。
ここが私の町で、今はこの辺りだろうね」
細かく線が引かれ、普段の見慣れた地図とは違い陸地が分かりづらくなっている。
「それで?
どこに向かってるの?」
「向かっているのはここさ」
「まさに離れ小島って感じのとこなのね」
「そう思うだろうが、私の見解はちょっと違うのさ」
地図で見る限り、陸地から離れた小さな島にしか見えず、あたしはカルディアを見上げた。
「ここを見てごらん」
「小さな島があるわね」
「そして、ここ」
「小さな島ね」
「更にこことここ。
バラバラに見える小島があるだろ?
これに私が手に入れた過去の地図の破片を重ねると……この小島は陸地より一段高い山だったことが分かる」
「確かにそうね。
けど、それが?」
破片は山になっている以外はおかしな点は見られなかった。
「こいつは海図じゃない、陸地を主に書いた地図さ。
山の周りには海が記されていない。
それを踏まえて見てみると……どうだい?」
「……これって……。
まさか陸続きだった!?」
「そういうことさ。
元々は陸地だったのが、なんらかで海に沈んでしまったってこと。
そうなると予め隠していたのではなく、有ったものの誰の目にも触れることがなくなった宝ということになる」
「んー、ってことは何か仕掛けがあったり魔者がいてもおかしくはないっと。
だから、仲間でもなくなんらかの経験があるあたし達に手伝って欲しい」
「そういうこった。
私らは絆ってものだけで生きてるんでね、これでも仲間一人欠けて欲しくないのさ。
それに、陸地に上がるってのは船上とは違うから陸地での経験が必要になるってことなのさ」
カルディアの話には納得がいった。
仕掛けや魔者の類いは船の上では経験出来ないだろう。
更に元々は人がいたであろう地では何があるかは分からない。
「分かったわ。
それだけ分かればあたし達も考えておけるわ」
『頼んだよ』との言葉を受け部屋を出てると、レディとミーニャのもとで今の話をして聞かせた。