episode 05 深まる謎
各々が飲み物を口にしながらカルディアからの取引内容を耳にしている。
あたしは短い話なので纏めることもせずそのままを聞かせていた。
「って感じだったのよね」
「するってぇと、あいつはあたいの力が必要ってことなんだね」
「あたしよりもレディが必要ってことは、経験か剣技が欲しいってことだと思ったわ」
「そいつは多分両方だろうさ。
宝は欲しいが厄介ってことはそういうことだろうね」
いまいちピンとこないあたしにレディは続けて話した。
「もしかすると魔者か罠、その両方があるかも知れないってことさ。
宝を護る何かがあるんだろ」
「そういうことね。
だったらどうする?」
「あたいには断る権利は無さそうだよ。
返しきれない借りを作っちまったんだからね。
それに、アテナの力にもなるなら断る理由はないさ」
「まさか、そこまで分かった上で取引ってワケじゃないでしょ?」
「どうだかね。
彼女は頭も切れる傭兵だったんだ。
断れないと踏んでいても不思議じゃないさ」
「そう。
なら、いいのね?」
「あぁ、構わないさ」
これで決まりだ。
あたしは酒場のマスターに取引は行う旨をカルディアへ伝えてくれと頼み、ついでに料理も注文しておいた。
「さてと、これからすべきことも決まったし腹ごしらえでもしようかしらね」
「そうですね、お嬢様」
「アテナ、あたいとカルディアの話はしなくてもいいのかい?」
「へ?
別にしたければ聞くし、したくなければ気にしないわよ。
過去に何かあるのは誰だってそうでしょうに。
それを聞いたところでってことよ。
それよりも今と明日が大切なんだもの」
「はっはっはっはっ!
アテナらしいね。
そういうとこが気に入ってんだよ、あたいは」
「あら、ありがと。
話さなきゃならないときに話してくれたらそれで充分。
今は過去の話は大事じゃないからね。
さてさて、料理も来たし食べるわよっ!」
運ばれて来た料理を頬張りミーニャとレディに目を向ける。
ミーニャはいたって普通に食事に手を伸ばしていたが、レディはどこかいつもと様子が変だった。
「どうかしたの?
冷めちゃうわよ?」
「いや、ちょっと気にかかってね。
……ほら、アテナの力も必要だって言ってってたんだろ?」
「ほーよ、ほえらなにかした?」
「剣技や知識が必要だってなるなら、初めて会った相手にそれを求められないんじゃないかってね」
「どうして?」
「そりゃあさ、どれだけの技量や知識があるかなんて分からないだろう。
それなのにってことさ」
「あたしが強そうに見えたとか?」
「いくら強そうに見えたって女子だろ?
ここには屈強な男達が沢山いるんだ。
その中に小さな女の子が一人増えたところで大したことはないだろ」
「ま、確かに。
だったらお世辞なんじゃないかしら?
レディに頼みたいけど、あの場にいたあたし達を無下には出来ないって。
あたしの存在を無視出来ないのは分かってたはずよ」
「あっはっはっ!
確かにそんなことしたら喰ってかかられるのは分かってたとは思うがね。
だとしても、彼女がそれだけの理由でってことの方が考えにくいな」
「だったら簡単なことよ。
あたし達は万全の準備をして望む。
何も分からない以上はそうしてその時に対処するしかないわ。
……ってことで、さっさと食べて準備だけはしておきましょ」
それから食事を済ませると宿へと向かい、お呼びがかかるまで入念に準備を済ませることになった。