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自称!!美少女剣士の異世界探求 2  作者: 七海玲也
第一章 港町グラード
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episode 02 海賊の長

「何だい!?

 この騒ぎは!」


 女性の怒鳴り声が響き渡ると海賊達は一斉に声のする方に顔を向けた。


「なっ!!

 か、(かしら)!」


「こいつは一体どういうことだい!!

 誰か説明をし!」


 男達の輪から姿を現したのは一際派手な装飾を身に付けた長髪の女性。

 それに対して、(わめ)いていた男は一瞬にして顔を青ざめ手を擦り合わせながら女性の前に進み出た。


「頭、これには訳がありまして……」


「ワケ?

 ワケもへったくれもあるかい!

 大の男達が女子供を囲んで、その手の物で何をしようってんだい!?」


「先に吹っ掛けてきたのはアイツらなんですって!」


 男の一言にあたしは頭に血が昇った。


「ちょっと!

 聞き捨てならないわね。

 先にこそこそ隠れながらあたし達を取り囲む失礼なことをしたのは誰さ!!

 それにアイツとかも失礼よ。

 あたしはアテナ、何度も言わせない!」


 割って入ったあたしを女性は驚いた顔で見つめると、急に笑い出した。


「はっはっはっ!

 イイね、アテナとやら。

 あんた面白いよ。

 この数相手に怯むどころか喰ってかかるとわね。

 ……勝ち目があるってのかい?」


 高笑いから一変、低い声と鋭い目付きに変わると腰にぶら下げている鞘を鳴らし始めた。


「カルディア……?

 もしかして、カルディアなのかい!?」


「これはこれは、気高い女性(ノブル・レディ)

 いや、今となっては裏切りの女性(フェアラート・レディ)だったね。

 まさかこんなところでお目にかかるとは、運命も棄てたもんじゃないねぇ」


「知り合い?

 それに裏切りって……」


 二人の視線は交差し、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。

 レディの過去を知らないあたしは妙な緊張感を払拭したく間に入った。


「二人に何があったかなんて知らないし、レディの過去のことも知らないけどさ、今はあたしの大切な仲間で友達なのよね。

 だから今ここで過去のことをあれこれ言わないでくれる?

 あたしは今と未来にしか興味がないの」


「威勢がいいのは勝手だがね、お嬢ちゃん。

 状況ってもんは見定めた方がいいね。

 ……だが、言ってることは最もだよ」


 一瞬、張り詰めた冷たい空気に包まれたが、口許を緩ませたカルディアは腰に手を当てあたしの目線に顔を合わせた。


「そうでしょ?

 大事なのは今と未来。

 過去に縛られて生きて行くなんて勿体無いじゃない。

 だからこそ、貴女達だって海賊でいるんでしょ?」


「ふふ、ふははははは。

 そうだよ、お嬢ちゃん!

 ここにいる連中は皆そうさ。

 色んなことを払拭したくて海賊をやってる。

 レディとのことは水に流す訳じゃないが、お嬢ちゃん――いや、アテナ。

 あんたが気に入ったよ」


 あたしに向けた言葉を宣言するかのように背を向け、取り囲む男達に言い放つと剣を抜き横に一閃する。


「お前ら、良く聞き!

 ここにいる連中は今から私の客人だ。

 失礼のないようにするんだぞ!」


「へいっ、頭!!」


 街中に響き渡るかのような大声で命令すると低い声が一斉に返ってくる。

 そして次の瞬間には、あたし達を取り囲む者は誰も居なくなった。


「さて……と?

 あいつらも居なくなったとこで、どうだい?

 私の部屋で酒でも飲んで話でもしようか」


「いいわね。

 あたしも聞きたいことがあるからこの街に来たんだし。

 レディもいいわよね?」


 願ってもないことにあたしは頷くとレディに振り返ったのだが、当の本人は浮かない顔をしていた。


「そう、さね。

 あたいは遠慮しておくよ。

 ちょいとそんな気分にはなれないからね」


「そ、そっか。

 そしたらさ、あたしが色々聞いておくからレディはどっかの宿で休んでおいて、ね」


 話したくないのだろうと片目を瞑り気配りすると、頼んだよと一言残しあたし達の傍を離れていった。


「ねぇ、カルディア――だっけ?

 宿ってここにはいくつもある?」


「あぁん?

 二つ程だね。

 そんなに大きな街じゃないしな。

 あいつの行ったとこならすぐに分かるさ。

 この街は店も手下がやっているからな、余所者(よそもの)の居場所ならすぐに耳に入れられる」


「それなら探さなくて済みそうね。

 だったら行きましょ。

 頭の屋敷ってとこにね」


 カルディアは鼻で返事をすると背中を向け、肩越しについてくるよう手招きをしている。

 赤髪の騎士アリシアお姉様の行方のみならず、親友レディの過去にも触れなければならなくなったかと思うと話がややこしくなりそうで、屋敷までに頭の整理が必要だった。



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