プロローグ 5 意識外
そこまで話すとわざと黙って目を閉じて見せた。
「お、おい!
まさかそこで死んで今に至るじゃないよな!?」
「ちょっと!
それじゃ今まで聞いてたのムダじゃないのよ!」
ルキとアスナが揃ってあたしに抗議の口を出したのを心の中で笑う。
「あたしは何も言ってないわよ、そんなこと。
ただ目を閉じただけじゃない」
「なっ!
そんなことするわけ!?
騙したっての!?」
「騙してないじゃない、死んだなんて言ってないんだもの。
でも、もしかしたら……ううん、確実に死んだわね。
一瞬だと思うけど死んだと思うわ」
「どういうことだ?」
「こうして死んだ後だから分かるけど、死んだ瞬間は理解出来ないものなのよ。
さっきまで見ていた光景が一瞬で途切れ、眠って起きたような感覚で目を開けると言葉では表現出来ない煌びやかな場所に居るのよ。
そして死を受け入れると元の光景に変わっていくの。
あとは聞いた話だけど、暖かい導く光が現れると冥界に囚われることはないらしいわ。
多分だけど、そこで受け入れられないと暗闇の光景が広がって、さ迷うことなって冥界への道しかなくなるんでしょうね。
だからその時も光景が一瞬で途切れ目を開けようとしたのは覚えてるのよ」
「すると、その前に助かることが出来たってことか。
察するにライズの神秘術のおかげか」
あたしは片目を瞑り指を立てた。
「ご明察。
ま、あの状況で助かるにはそれしかなかったみたいだけど、助かったと言ってもその場しのぎでしかなかったらしいわ」
「ライズがどれ程の能力があるのかは分からないが、少女が泥人形にぶっ飛ばされたなら死んでもおかしくはないからな、それで生き長らえたなら奇跡に近いだろう」
「そうなのよね。
結局は助かったんだけど、数人がかりで神秘術をしてようやくって感じだったらしいわ」
「そうなると、泥人形はどうにかやり過ごして地上か塔に行けたわけだ」
「らしいわよ。
あたしは虫の息だったから泥人形もライズとレディに向かって行ったらしくてね、それで本体を見つけて文字を削れたらしいわ」
この辺りはあたしの意識がなく、後からレディに聞いたことを話した。
「泥人形なんて滅多なことじゃ会うことがないからな、その話は参考にさせてもらうよ。
それでやり過ごした後はどうしたんだ?」
「そうね。
あたしを担いで地下を抜けると地上に出たらしく、そこですぐに塔の住人らが駆け寄ってきて神秘術を施したのよ。
それからあたしは丸一日眠ったままだったんだけど、塔の住人ってのがどうやら家族だったみたいでね。
って言っても本当の家族じゃなく、親の顔も知らないいわゆる孤児だったのよ」
「孤児が皆、神秘術を使うのか?」
「そ、ここからが面白いところでね、全員が神秘術も魔術も使えるってことなのよ」
「ライズと一緒か。
となると、ライズは塔の孤児だったと?」
あたしは口元を緩ませ笑顔を作った。
「話が早いって助かるわね。
そうだったのよ、ライズの故郷、ライズの家がまさしく塔だったのよ」
「そうなると世界を見渡す者とはライズの親代わりの者とかになるのか?」
「親代わりといえばそうなんだけど、何て言ったら良いのかしらね。
それは話していく上で明らかにしていこうかしら、若干ややこしいからね」
「そうか。
ではその前に、絶海の孤塔の場所を詳しく教えてくれないか?」
その問いには眉間にしわを寄せ少し考えた。
「それは……難しいわね」
「場所を教えるくらい良いじゃないのよ!
なんでダメなのよっ!!」
ルキではなくアスナが反論してきたのには驚いたが、色々と知ってしまった今では簡単に教えることは出来ないと判断した。




