episode 10 魔の冠
四方を塞がれ輪になりながら喰妖魔を斬り倒すも、後から後から扉から入ってくる。
そんな状況でもミーニャはあたしの背中から離れずにいる為、体術ですら覚束ずにいた。
「きりがないわよ、レディ!」
「仕方ないだろ、こんなにいるんだから!」
そんなやり取りも余裕がないほど迫りくる中、突如としてミーニャは魔言語を呟いた。
「今それを言うの!?」
あたしの驚きと共に冠が光輝くと、腕を振り上げ爪を剥き出しの喰妖魔が次々と海賊達へと体を向け出した。
「あれ?
襲ってこない?」
あたしとミーニャの前にだけ穴が空いたように空間が広がる。
「アテナ!
突破出来るなら先に行きな!!
ミーニャもいるんだ、先に行け」
「カルディアを追うわね!
レディも気をつけて」
急ぎつつ気をつけながら喰妖魔の間をすり抜けて行く。
理屈は分からないが本当に襲っては来ず、難なく部屋から部屋へと移動し魔者の姿が無いところで一息吐いた。
「何だって襲ってこなくなったのかしらね」
「魔力が解放されたことと何か関係がありそうですけど、何でしょうね」
「でも助かった――って言っていいのかしらね、レディを置いて来たけどミーニャには助けられたわ」
「そんな、私はただ唱えた方がいいと感じたのでやって見ただけなんです」
「何はともあれってね。
さて、四つほど部屋を出て廊下を通ってこの部屋よね」
あたしは短刀を取り出し床に傷を付け簡単に地図を描いてみた。
「入口はここで……城の大きさから見るとレディの居るところとは反対の一番奥って感じかしら」
この部屋には入って来た扉以外出られるようなところはなかった。
「で、ここに隠し扉があってでしょ?
宝物庫があるとしたら、大体は地下よね。
――っと、本当に宝物庫に向かったのかしら」
「何故ですか?」
「宝を探しにとは言ってたけど、魔者が来ることを知っていたかのように見計らって、隠し扉まで知っていたのよ?
それでもって、一度はこの島を訪れている。
もしかしたら城の中まで探索済みで、あたし達に隠してる何かを取りに来た、って考えても不思議じゃないのよね」
「あぁぁ!
確かにそうですね」
「でもよ?
そうなると、どうしてあたし達の助けが必要なのに置き去りにしたかってことなのよ」
「あの魔者の囮ではないのでしょうか?」
「んー、それも考えたんだけど、それなら仲間を置いて行くかしらってね。
囮としつつ何か他の訳もあるのかもって考えるしか今はない、か。
って考えると、向かった先は宝物庫じゃなく……玉座、かしらね」
と、答えを出したあたしにミーニャは不思議そうに見返してくる。
「他に考えられるところがそれしかないのよ。
単なる宝探しならとっくに終わってる。
けど、それ以上の何かとなれば串刺し公の居た部屋としか思い当たらないのよね」
「なるほどですね。
では、試しにそちらへ向かうってことですね」
「そういうこと!!」
言葉と同時に描いていた城の中心部にある謁見の間に短刀を突き刺し、ミーニャへと頷いてみせた。




