四試合目(上)
「Ladies and gentlemen!!! Boys and girls !!! さぁて、VRMMORPG『ガトラトランド』最大級バトルイベント『コロシアム』第三回。トーナメント戦は四試合目に突入します!!!! ただし、ルールはこれまでの試合と一味違いますよー」
アナウンスは一旦、間を置き、そして続ける。
「今までの試合は先にHPが五割切った選手が負けでしたが、この第四試合は先にHPが七割を切った方が負けとなりますー!! さ・ら・に!! 持ち込み制限も緩和されるため、より高威力でトリッキーなアイテムの持ち込みが可能になり、勝負も見応えのある物になること間違いなしですー!! あ、ちなみに今日の天気は晴れですが、気温はGGLにしては低めの設定となっています。スタジアムには暖房設備がありませんので各自で羽織る物など防寒具を用意して観戦して下さーい」
と言ったところで、客席直上のモニターにバッと炎が燃え上がり、『READY』の文字が光る。
赤と青の転移門が互いに向かい合うようにリングに出現する。
「さーて、両選手の準備が整いましたー。では、第八会場の選手の紹介です。まずは青コーナー、ここまで【稲妻】一つで相手を屠ってきた電撃の魔女、《マージ》選手!!!」
わあぁ、と歓声を浴びて女性プレイヤーが一人、転移門をくぐり抜けてバトルリングに現れる。つばが無駄に大きい尖り帽とだぼだぼのローブという典型的な魔女の衣装を小柄な身に纏っている。
「これまでの三試合、彼女は雷撃、製水、空気の盾、この三つの魔法しか使っていません!! 彼女の二つ名《ウェザーマジック》が表す本領、『気象の暴力』は果たしてこの試合で発揮されるのでしょうかー!?」
所属するギルドの旗が揚がるのをつばの切れ目から見て、マージは背筋がゾクッとするような淡い笑みを浮かべた。この笑顔にたくさんのファンがついているのはまた別の話。彼女は手の代わりに右手に持った杖を振った。
「ではでは!! お次は赤コーナー、これまでの試合では相手の武器やスキルを破壊しまくってきた最上位鍛冶師、《ハバト》選手!!」
わあぁ。歓声や指笛を浴びて赤い転移門をくぐり抜けてきたハバトは真っ赤だった。額には赤いバンダナ。黒かった作務衣も真っ赤に染められ、炎の柄が入っている。もちろん靴も赤色だ。今回はナックルダスターはなく、手はポケットに突っ込まれている。
「おおおー!! 《ハバト》選手、今日は気合いの入り方が違いますね!! 相棒の金槌が腰に戻ってきているからでしょうか!? それとも腰の巾着に何かとっておきのアイテムが入ってるのでしょうかー!?」
観客席にババッと旗が掲げられる。ハバトが所属する鍛冶ギルド。懇意にしている服飾ギルド、商会。このゲームの供給を管理する『生産ギルド同盟』。ここまでは三試合目と同じだが、更にいくつかの生産職ギルドの旗が揚がっている。ちなみに今回の赤い衣装は例の被服ギルドに注文して作ってもらった物だ。素晴らしい出来である。
だがハバトは軽く会釈するだけだ。手は依然、ポケットに突っ込んだままだ。
「おいおいハバトさん。その態度はないんじゃなーい?」
不遜な振る舞いを見かねたマージが注意する。険悪なムードにならないように軽ーい調子で。
「お前が気にすることじゃねぇよ」
「ま、そう言われればそうだね。反論の余地がないよ」
とりつく島もないハバトにマージは肩をすくめた。
「さーて、お待たせしましたー。第四試合のカウントダウン開始ですッ!!!」
『3』
「アナウンスが変わったな」
ハバトは小さく呟き、アナウンス席に目をやる。
観客席のほどよい高さには個室席が並んでおり、そこに紛れているようにアナウンス席が用意されている。中でテレビ頭のアバターがマイクと一体化した手をテレビのスピーカーに当てている。
ハバトの呟きを捉えたマージは言う。
「へぇ、こういうのって台本通りに呼んでるわけじゃないのね」
「らしいな」
『2』
「何か気になることでもあったの?」
「ああ、これまでの三試合のアナウンスと話し方が違うし、それに・・・」
「それに?」
「・・・アナウンスは天気の話なんかしなかったんだ」
「なるほど。それは、」
『1』
「私、の試合だからじゃない?」
ドヤ顔を見せつけるマージに、今度はハバトが肩をすくめる。
「《ウェザーマジック》か・・・」
相変わらず両手はポケットに入れたまま、相手の二つ名を口の中で呟く。
そして、
『0』
になった瞬間、
「【稲妻】」
マージは素早く詠唱。高速の電撃がハバトに向かって一直線に飛ぶ。
その雷撃が届く前にハバトはポケットに突っ込んでいた右手を抜き、身体の前の空間を薙いだ。空から降り注ぐ日光に右手の指全てにつけられた指輪がきらりと光を反射する。
雷撃はハバトの前で急に下方へ進路を変え、彼の足下の地面に流れていった。
その光景にマージは左右対称な眉をひそめた。
(前の試合の剣士と同じ、「アース」を利用してるカンジかな? けど、なんで曲がった?)
「おおおお! なんでしょう、今の《ハバト》選手の技は!? 何かのスキルでしょうか!? てか指輪だらけだー!」
興奮するアナウンスを聞き流しながら、マージは冷静に、そして高速で思考する。
マジックスキル【稲妻】は多少グザグした軌道をとるも基本的には攻撃対象の胸辺りに向かって直線的に飛ぶ。先程のように軌道が曲がるようなことは「攻撃対象の位置が移動する」か「何らかのシステムが使われた」以外に起こり得ない。
今回、ハバトは腕を動かしただけなので前者には当てはまらない。
彼女はHPゲージに目をやった。ハバトのゲージは満タンのままだ。
この時点でハバトが使ったシステムはスキルではなくアビリティであると決まる。
(彼のアビリティはなんだったっけ?)
マージは試合前に見たネットの掲示板の内容を思い返す。
(【加熱】だったかな? それも生産系の【加熱】とかいうよく分からんヤツ。ネットの情報を信じ込むのはアレだけど、記録映像を見たカンジでは妥当なセンだと私は思うのよね、【加熱】。まぁ一応、某恋愛ゲームっぽく【加熱(仮)】としておいて。じゃあ、何を加熱したら雷撃の軌道が変わる?)
雷撃が下方へ進路を変えた辺りを見るが、そこには空気しかない。
(ということはアイツは空気を加熱したんだ。空気は元々、絶縁体と言えるぐらい大きな抵抗を持ってるし、それを加熱すれば無限に近い抵抗もさらに・・・?)
ふと、マージの脳裏に「自由電子」という単語がよぎった。
(金属を加熱すると電気抵抗が大きくなるのは、金属中のよー子さんやらが激しく運動してでん子さんの移動を妨げるから・・・これは自由電子のない空気にも適応できるのかな? 玉突きみたいな稲妻の原理からして、冷やした方が「空気の電気抵抗」は大きくのでは? ん? ん? ん?)
マージはこんがらがってきた考えをリセットする。
(そもそもアイツが空気を直接加熱しようが、周りの空気を加熱することで相対的に冷却した状態を作ろうが生産系の【加熱】は空気を「素材」として認識できない、はずだ。仮にそれが可能なのだとしたらハバトは熱風でも作って火傷ダメージだけで勝ち上がってきたはずだから。つまり、ハバトが【加熱】を使って空気に干渉するには熱を伝える「媒体」があるわけで・・・)
と。
ここまでを半秒もかからず思考し、マージは次の魔法を放つ。
「【雷電】」
今度は三本の雷撃がハバトに向かって飛んでゆく。
これに対してもハバトは右手を再びポケットに戻し・・・
反対の手で身体の前の空間を薙ぐだけ。
電撃たちは初手の【稲妻】と同じくハバトを体前で軌道を変え、三本とも地面に吸い込まれてゆく。
その三秒にも満たない一連の流れを、マージはじっくりと観察する。
(ああ、やっぱり)
マージは見逃さなかった。誤魔化されなかった。
赤橙黄の暖色で染められたハバトの衣装が背景にある所為で見難かったが、確かに、雷撃が通過した空間にオレンジ色の光点が無数に光っていたことを。
(空間を薙いだ、のではなくて空間に何かしらの『粉』をばら撒いたのね。おそらく米軍のプロジェクト・スカイファイアあたりをヒントにしたんだろう。帯電した金属片をばら撒いてそこに電流を流させた、というカンジか)
となればそれを除去すればいい。
マージは地面を蹴って、走り出す。三〇メートルの距離は一気に縮まる。
(私の魔法のレパートリー的に風で流すか水で流すか、なんだけど)
魔女は走りながら杖を前に突き出し、スキルを詠唱する。
「【鉄砲水】」
魔女は迷うことなく水を選択した。
三試合目の時も電撃の次は水での攻撃だった。
手札は順に切る。途中の手札で倒せそうならそれで倒す。極力、手の内を見せないのが彼女のスタンスだった。
鍛冶師の数メートル前に濃青色の長方形が現れる。魔法陣。
それを一目見たハバトは腰にぶら下げた巾着を庇うようにして まさに一目散に後方へ逃げ出す。もちろん雷撃を警戒して、片手はポケットの中に入れてある。
魔法陣を蛇口として大量の水が勢いよく溢れ出し、ハバトが立っていた空間を押し流した。
今回、ハバトが履いているブーツはちゃんと水対策として靴底が厚めになっており、さらにブーツの表面は水生モンスターの表皮が使われており、撥水性も万全である。
「なるほど、そっちの対策もちゃんとしてるのね」
「まあな」
「でも、さ。鍛冶師さん」
片手をポケットに突っ込んだままのハバトを見て、マージは嘲笑う。
「これで仕掛けはおじゃんじゃないの?」
ハバトはおそらくばら撒いた金属片がカーテン状に分布するように、御丁寧に空気抵抗などを計算して表面積が少しずつ違う金属片を握りこんでたんだろう。しかし二回目以降に金属片を撒く時は、ポケットから金属片を取り出す際に『配合』通りの金属片を握れるとは限らない。だから『分布の穴』ができる可能性がでてくる。
水浸しになるのをかろうじて避けたハバトは、足下に広がった水溜まりの水面を揺らして魔女に向き直る。
「さて、それはどうかな?」
ハバトは不敵な笑みを投げ返し、帯にぶら下げた黄色い巾着を指輪だらけの手に取った。大きさは握り拳より一回り大きい。
(そこに『配合』済みの金属片があるってわけね)
マージは少し目を細める。
(でも量が多い。何か仕掛けがありそうね・・・)
「【稲・・・」
マージの詠唱に応えるようにハバトは巾着の中身をばらまく。ぶわっと白い煙がハバトの前に広がる。
それを見たマージは、
「・・・【突風】ッ!」
システムが認識できるギリギリの速さの高速詠唱で魔法を変更した。
だが。
白煙は滞空することなく水溜まりに落ちてしまう。虚空を風が駆け抜けた。
ハバトは強風の直撃を受けて水溜まりの中に膝を突く。
「・・・は?」
予想外の結果にマージの口から間抜けな声が漏れた。
(金属片、じゃなかった? それとも水で濡れて上手く拡散しなかった?)
瞬時に幾つかの疑問が浮かぶ。それらを解消するより先に、
「【稲妻】」
マージの杖から電撃が飛ぶ。
それはしゃがむハバトに直撃し、アバター全身にスパークが弾ける。HPゲージの下に黄色い麻痺マーカーが点灯した。
バシャリ。
ハバトは水たまりの中に倒れ込む。
敵の動きを封じたマージは水溜まりの中で痺れるハバトを見下ろし、
「・・・・・『さて、それはどうかな?』とか意味深なこと言っといてなんで直撃食らってんの?」
「いやぁ、まぁ」
ずず、と麻痺状態で唯一動く頭を動かしてマージの方を向くハバト。
「猿も木から落ちるってことだ」
「生産職のくせに猿を気取らないで欲しいわね」
「そんなこと言ってていいのか? 驕れる者久しからずっていうぜ?」
「はっ」
ハバトの言葉をマージは鼻で笑う。
「それって驕らず徹底に完膚無きまでに潰せばいいって話でしょ?」
マージは杖を一回転させ、
「【突風】」
詠唱し、杖の先で地面をコンッと突く。
すると、杖の頭に据えられた水晶の上に二つの魔法陣が現れる。雪の結晶のような白い魔法陣と渦を巻いたような緑を魔法陣。それらは宙で重なり、寒々しい青色の魔法陣となる。複合魔法。
「【暴風雪】」
雪の混じった極寒の風がハバトを襲う。
水溜まりはその表面から徐々に白く氷を張り始める。
「おおおおお! 出ました!! 《マージ》選手が得意な天候を操る魔法です!!」
(それを言うなら「気象現象を操る」だろ。天候はある数日から数ヶ月にわたっての大気の状態のことだ)
とハバトは心の中で突っ込むが、水溜まりの縁から広がる氷は着実にハバトの元へ近づいており、状況は芳しくない。このままでは氷付けになってしまう。
(こともないんだなー、それが)
ハバトは笑う。
なぜなら。
水溜りは凍らないからだ。
氷はハバトを避けるようにして広がってゆく。
「なんで!?」
「・・・・・・凝固点降下」
衣装に水が染み込んでゆくのを感じながら、ハバトはぼそりと呟く。
「溶媒は溶質の質量モル濃度に比例して凝固点を下げる」
マージはハッと目を見開いた。
(聞いたことがある。雪が降った時、路面凍結を防いだりするのに使われる現象。ってことはさっき巾着から撒いたのは塩化カルシウムみたいな塩だったのか!)
塩を撒いたばかりの水面の質量モル濃度はかなり高くなっているはずだ。
(ん? でもいくら濃度が高いとは言え、凝固点降下だけ氷るのを防げるの? それに水は電解質を溶かせば溶かすほど電流が流れやすくなる。実際に、濡れた状態で【稲妻】を受けたハバトは通常の【稲妻】より大きなダメージを喰らっていた。電撃対策をした上に凝固点降下で凍結対策までしてきた彼がそんなリスクを見逃すかな?)
水の凝固点降下は1.85(K・kg/mol)だから・・・とマージは一瞬だけ計算に意識が奪われる。
その一瞬の隙を突いて、麻痺の解けたハバトは魔女に向かって駆け出す。
「花咲か爺さんの真似事は終わりだぜ」
氷の上を滑らないように注意して走りながら、指輪だらけの右手で腰のホルスターから金槌を抜く。
マージは対応に一歩遅れるも、頭に居座った疑問を振り払い、
「【稲妻】」
冷静に詠唱。
放たれた電撃がハバトに達する直前、
「【稲妻】【稲妻】ッ!!」
ハバトも詠唱する。
指にはめた指輪が二つ消滅し、同時に目映い雷光がハバトの手元から放たれた。
バチバチッ!!
無数のスパークが弾ける中、ハバトは走る勢いを落とさない。
「相殺した!? いや、等電位になって落雷を避けた!?」
「相殺した、であってるよ!」
指輪の形にしたスキルは概してオリジナルの劣化版であり、その威力出力はまばらである。だがそれは三試合目でも使った【鑑定】スキルを使えば知ることができ、上手く威力調節すればオリジナルと同じ威力の【稲妻】が作り出せる。ただし手元で使わなければ大きく威力が低下することが欠点。
「言いたかっただけ。私、伊奈帆くんリスペクトしてるから」
「それは趣味が合いそうだな。というか喋る暇あったら詠唱しろよ」
と距離を詰め切ったハバトは金槌を振り下ろす。
金槌のヘッドが尖り帽に当たる前に、
「【空気障壁】ッ」
マージは素早く詠唱した。そして氷の上を滑らないようにブーツを踏ん張る。
バンッ!!
ハバトは金槌を通してプラスチックを叩いたような手応えを感じた。
威力を受けきった盾はすぐに四散した。
「映像だけじゃ分かんなかったけど、けっこう硬いな!」
見えない盾。空気の盾。
素の打撃は防がれたが【鍛造】が通じれば破れそうな気もしないでもない。
間髪入れず、ハバトは次の打撃を打ち込む。
盾の弱さはマージも感じていたのか、
「【固定気盾】」
魔法を変えてきた。
金槌に伝わる振動から今度はしっかりと防がれたのが分かる。しかも【空気障壁】と違って一撃で盾が消し飛ばない。
ハバトは金槌を掌の上で回し、遠心力をつけた連打を繰り出す。
「【空気障壁】
「【固定気盾】」
「【エンハンス:Hard】【空気盾】」
打撃と打撃のわずかなインターバルの間にマージは十音節、十三音節と長い詠唱をこなし、ハバトの攻撃の尽くを防ぐ。しかも時折、電撃魔法も混ぜ込んでくる。
雷撃一発につき指輪を約二つ分消費する。両手の指には指輪が計十四。つまり七回しか雷撃を防げない。
それを理解しているマージは積極的に雷撃を放ち、ハバトの手札を削る。
だが、ハバトにとってそれは問題ではなかった。
この近接戦でのハバトの目的はダメージを与えることではない。
バンッ!と空気の盾を四散させたハバトは、そのまま散った空気の奧へ手を伸ばし、
「つーかまーえた」
マージの華奢な腕を掴む。これでマージは雷撃を撃てなくなった。
防御に気をとられていたマージにとって、それは不意を突かれた動きだった。慌てて雷撃の詠唱を止める。
その隙にハバトはマージを背負い上げ、水溜まりのど真ん中へ、
「おらよッ!」
投げ入れた。
しぶきを上げてマージは水溜まりに尻もちをつく。
そしてそこで感じた知覚にマージは眉をひそめる。
(暖かい? んでもって何故に水?)
そう、今マージが尻もちをついている場所は確かにマージが複合魔法【暴風雪】で氷らせたはずだったのだが・・・
水面を揺らしながら水溜まりの縁まで後退したハバトは言った。
「なかなか良い湯だろ?」
もわぁ・・・
水溜まりからは微かに白い煙が、湯気が立ち上っていた。
そこで、マージの脳裏に再び掲示板の記述がフラッシュバックする。
『【加熱】(生産系)
触れている素材の温度をムラなく瞬時に数百度まで上昇させる。ちょっと時間をかければ千度近くまで加熱することも出来る・・・』
何故ハバトは塩カルを撒いたのか。
何故ハバトは塩カルを撒いて【稲妻】の直撃を受けたのか。
何故水溜まりのド真ん中、ハバトが氷付けを避けた場所にマージを投げ込んだのか。
等々。
マージの中でこれまでの疑問が一気に氷解した。
「それが・・・」
マージはギリッと歯を食いしばる。
「それが狙いかぁ!!!!」
マージは水溜まりから脱出すべく全力で走り出す。
ハバトはどこからともなく取り出した大盾の裏に隠れ、小指だけをその盾の後ろから出すと、
「じゃあな」
指先を水溜まりに浸けた。水溜まりに触れた。
マージの顔が引きつる。
直後。
ッッドンンンッッッッッッッ!!!!!!
地形が変わった。